11話①
本日2話投稿です。続きますので宜しければお読み下さい
お互い無言の時間だけが過ぎていく……。こんな時自分のトークスキルの無さが嫌にも突き付けられてしまう。折角、橘の方から話を振ってくれても俺にはそこから話しを膨らませる力がなく会話が途切れてしまう
普段あまり親しくない異性、しかも学校のマドンナ(表現が古いか?)と喫茶店で二人きりという状況に未だ緊張しているというのも多分にあるのだが………
気付けば、出されていたお冷のグラスには水滴が付き氷が溶けている。こういう時は何故かどうでもいい事に目がいってしまうものだ
そんなこんなしていると、マスターがコチラにやってきて無言のまま橘が注文したであろうものをテーブルの上に置き、戻っていった
俺の目の前に出てきたものはチョコパフェだった。チョコレートがふんだんに使われバナナやイチゴが乗っている豪華なパフェ。特別甘いものを普段から食べる訳ではない俺にとって、こういう本格的なものは物珍しい
「これが私のお気に入り。いつも頼むの」
そう橘が言ってきた
「ヘェ〜、これは美味しそうっすね。こういう本格的なパフェ初めて食べますよ」
「そう…。さぁ、溶ける前に食べて頂戴。この間のお礼に私の奢りだから」
そう告げると橘が食べ始めたので、俺もお言葉に甘えてご相伴にあずかることにした
うん、美味い
俺は思いついた質問を投げかける事にした
「いつも頼むって結構橘さんて甘いもの好きなんですか?」
「…………」
? 何故か橘は何も答えず、ただジッと俺を見ている。あら、俺なんか変なこと聞いたかしら?
「ねぇ、貴方なんでいつも敬語なの?」
「え?そりゃ礼儀として…」
「私に気を遣っているならそんなの無用よ」
「え、でも流石に…」
「私がいいって言ってるの。だから普通に話して頂戴」
「あ、 はい…。じゃあ……、いきなりは難しいから徐々にって事で…」
「しょうがないわね……まぁ、いいわ」
そう言って橘は不承不承といった様に溜息をつく
今の一連の流れから俺は以前にも違う人物に敬語を止めるように言われた事を思い出し、内心苦笑いを浮かべた
その後はお互いパフェを食べるのに夢中になった。橘は見たことも無いような表情を浮かべ食べているのがとても印象的に映った
お互いパフェを食べ終えると、橘はコーヒーを飲むかと聞いてきた。折角なのでお願いするとこれまた飲んだことが無い程美味しいコーヒーが出てきた。甘いモノを食べた後にはこのぐらいの苦さの飲み物が丁度いい。俺が出てきたコーヒーを楽しんでいると、さっきの質問に対する答えなのだけれどと前置きをした上で橘は喋りはじめた
「私、甘いもの好きなのよ。目がないと言っても過言じゃなわね。このお店もパフェがどうしても食べたくて通いはじめたの」
「ヘェ〜、意外だなぁ。橘さn…橘って何に対しても興味ないと思ってたんで」
「貴方の私に対する認識を一度聞いたほうがいいみたいね?」
胡乱げな目線を俺に投げつつ橘は続けて言ってきた
「私にだって好きな事や興味のあるものは一つや二つはあるわよ」
当然でしょとでも言わんばかりの態度で彼女はコーヒーを飲む
しかし、ホントに意外だった。普段の彼女の姿からはおよそ想像がつかない
橘はコーヒーカップをお皿の上に置くとコチラを見据えてきた
「改めて、お礼を言わせてもらうわ。教科書とこの間ショッピングモールについて来てくれてありがとう、助かりました」
そう言うと橘は頭を軽く下げてきた