1話
朝、目覚まし時計の音で起床する
身支度を整え、ダイニングに向かうと母がキッチンで作業をしていた
テーブルには既に朝飯が用意されており、先に妹が食べていた
朝の挨拶をするのが我が家のルール。母に挨拶し、妹にも「おはよ」と挨拶をする
母からは「おはよう」と、妹からはテキトウに「はよ」と返ってくる
まぁ、仲が特別悪くもなく良いわけでもない間柄特有な感じだ
俺が食べ始めしばらくすると、妹がご馳走さまと皿を下げ、行ってきますと軽く告げ家から出て行った
俺がのそのそとご飯を食らっていると、「早くしないと遅刻するわよ」と母から言われ
俺も食べながら「ん」と一言返しつつも、点いているテレビをぼぉと眺める
テレビに映る時刻を見てギリギリの頃を見計らい食事を下げ学校を行く準備をして「きまーす」と力なく告げ家を出た
電車に揺られ、高校最寄りの駅まで向かい、そこから徒歩で高校を目指す
特に知り合いに出会う事もなく教室まで着いた。近くにいたクラスメイトに軽く挨拶を交わしつつ、自分の席に歩いて行く
俺の席は1番窓側で後ろの席だ。結構気に入っている
自分の席に着く手前、いわゆる俺の横の席には既に人が座っていた
橘 薫
長く艶やかな黒い髪、きめ細かいとはこの事を言うのだろうと思わせる白い肌。成績優秀、眉目秀麗、そして運動まで出来る漫画とかから飛び出してきた様な絵に描いた超人
この学校でコイツを知らない人間などいないはずだ
本を読んでいるそいつを横目に俺は静かに席に着き、鞄から教科書などを取り出す
俺がそんな事をしていると、橘に話しかけてきた人間がいた
和泉 慶太だ
学年の中でもモテるそいつは人あたりのいい笑顔で橘に話している。よくもまぁ橘相手にそんなペラペラ喋れるものだ
橘は決して人当たりが悪い訳ではない。程度はあるが話しかけられれば、受け答えは一応する。しかし、どこか壁を感じるのだ。人を寄せ付けない雰囲気を纏い人からの話しには応じるが、基本的には自分から話すことはない。そのため、皆近寄りがたくなっていた。なので、コイツの周りに誰かがいるのは滅多にない
和泉はそんな橘相手に他愛もない話しをしている。橘はええ、とかそうねと相槌を打ってはいるが目線は本から離れない。最初は頑張っていた和泉の笑顔は話す感触が悪かったのか、段々と苦笑いへと変わり、一通り話すとじゃあ、またと言って少ししょんぼりと自分の席に戻っていった。いつもこの繰り返しなのによく懲りずにやるなぁと思いながら俺も手持ち無沙汰なので読書をはじめる
そんなこんなで時間が過ぎると担任の教師が来て朝のホームルームがはじまった
ホームルームはいつも通りに進み、つつがなく終わる。今日も変わらず誰もかれもが平常運転。1日が何気なく進んでいき、そしていつも通り家に帰宅する。こんな日々が毎日続く、それも悪くない。ジェットコースターの様な人生より多少つまらなくても平坦な道が続く方が良い。だから波風立てずに過ごしていこう。事なかれ主義の俺にはもってこい
そうすれば自分にとって平和な日々が続く。そう、思っていた。
ありがとうございました。次回もお読み頂けると幸いです。