王都での暮らしも楽じゃない
ジンさんの屋敷に連れてこられてから1週間が経った
王都での暮らしは村育ちの俺にはとても輝いて見えた
家や店の数が村の何十倍もあって非日常を感じていた
しかもジンさんの屋敷にはメイドさんが何人もいて家事などもしなくていいのだ
毎朝起きてご飯を食べ、10分ぐらいジンさんと会話をするのが決まった日程になっている
なので俺は日中暇なわけで王都の探索をしたり情報収集などをしたのだが分かったことは少なかった
まず俺の村が壊滅してから少なくとも1年は経過していること
先日出来た大きいクレーターは王都から70kmの所にあること
俺の村のように壊滅する小さな村が後を絶たなかったことだ
壊滅した村の子供が召喚実験の被験体になっているのはジンさんにもう伝えてあったので
今は俺がいた地下施設の近くや他の施設がないか国中をしらみつぶしにしているところらしい
ただし俺の召喚が魔力暴走した事、俺の召喚の時だった事は伏せて
知らない間に気絶していた事にした
あの時起きた召喚陣の暴走のおかげで今は自由だがそれよりも本当に召喚は失敗したのか、そこが気がかりだ
事実あの時俺は気絶する前に『何か』が身体に入ってくるのを見た
この事が気になって魔法の本や人から情報収集しているが成果がない
ジンさんも二日前に出て行ったきり帰って来ていない
ジンさんがいないとなると本当に暇で何をしても良いのだが情報収集もほとんどし尽くしてしまった
今はジンさんの家の書庫に二日連続で入り浸って片っ端から本を読んでいる
「このペースならあと3日で終わりそうだな...」
ジンさんの書庫はそこらの店よりも多くて本が500を超える数は確実に埋まっている
今読んでいる本は簡単に言えば初級魔法の本で
中に書かれているのは[魔力の変換効率と最大値、その上げ方]という具合だ
1.体の中に流れる魔力を感じ取りその魔力を変換することを魔法と言う
2.体の中にある魔力量は個人差がある
3.魔法を使い続けることで魔力量は上がっていく
この3つは魔法の基本らしく今まで読んできた本の中のどれにも書いてあった
ゴーンゴーン
街の鐘の音が鳴り響いた
「もうこんな時間か、そろそろ行くか」
俺は急ぎ足で家の外に出た
12時の鐘が鳴ると城下町を歩くのが日程だ
今日はこの街の裏道を探索してみよう
出店や商店街の少しハズレになると少しづつ道が狭くなっていった
「おいおい坊やこんな所で1人は危ないぜ」
いかにもチンピラぽい1人が来た道を塞いできた
どうやら俺は面倒なことに巻き込まれたらしい
これは感覚的にだが来た道の反対側にも同じような奴が1人か2人はいる
つまり俺は今この王都に来て1番のピンチという事だ
さて、どうしよう痛いのは嫌だし面倒なことも嫌だ
正直怖い
村が襲われた時の思い出が蘇ってくる.....がここでビビったら舐められるだけだ
少し後退りしながら
「すみませんが急いでいるのでそこ通してくれませんか?」
答える義理もないようでこっちにゆっくり寄ってきた
まずいなこのままだと挟まれて終わる
一か八かの賭けに出ることにした
まず何人か隠れているであろう所に向かって全力ダッシュ
後ろから追ってきた
あと角まで1mの所で左右から1人づつ出てきたここまでは想定通り
自分の右手を前に出し、もう片方は腕を自分の目に覆いかぶさるようにして
「フラッシュ!!」
その瞬間俺の右手から閃光のような光が一瞬だけ出た
がそれでも上手くいった
俺の出した光を直接見たであろう前の2人は目を抑えて悶絶している
あとは後ろにいる奴だけだ!
後ろを振り返って右手を突き出すと目を庇うように隠している、フラッシュ対策のようだ
だけど次に使うのはフラッシュじゃない
「ファイアーショット!!」
思ったより大きな火の玉がチンピラの体に当たった
全員が動かなくなった所で横道にそれて大通に逃げ出した
そのまま人混みの中を隠れるようにして家に帰ることにした




