襲撃
エイプリルフールは終わってしまいましたが、更新は続きます。
引き続き作者の悪ふざけをお楽しみ下さい。
香澄先輩の言葉を聞いて、肩から力が抜けていくのを感じた。
「良かった~、急に変な事を言い出すから、それだけが心配で……」
「えっ、うん、そうだよね。私も初めてだったから気が動転しちゃって……変な事言ってごめんね?」
どうやら、香澄先輩は気が動転して取り乱していたようだ。
取り乱し方が酷かったような気はするが、そういった部分も、これから少しずつ理解し合っていけばいいと思う。
彼氏彼女の関係になる事ができたのだから。
「……あの香澄先輩、これから宜しくお願いします!」
「急にどうしたの?」
「その、香澄先輩に『好き』って言ってもらえたのが本当に嬉しくて、だから……」
不意に、手と手が重なる。
少し汗ばんでいる香澄先輩の手から伝わってくる温かい体温。
「…………うん、宜しくね」
少し目線を逸らしたまま、彼女はそう言った。
急に気恥ずかしくなって、俺も目を逸らす。
「…………」
無言の時間。
しかし、手から伝わってくる温もりが、相手の存在を確かめさせてくれる。
チラリと横目で隣の様子を窺ってみると、香澄先輩も横目で俺の事を窺っていた。
「「あっ……」」
二人の声が重なり、視線が交差する。
「……」
それから万有引力を証明するかのように、俺達は引かれ合っていった。
そして――
『男なんて、男なんてみんなホモになってしまえばいいのよ!!』
――急に頭の中に大音量が響き渡った。
「うっ、なんだ……コレは!!」
まるで頭の中にスピーカがあるみたいに、知らない声が反響するのである。
どうにかして音を消せないかともがくが、鳴り響く声は小さくなってくれず、俺は頭を抱えてうずくまった。
「まさか……これはBL波!?」
「……香澄先輩?」
どうやら声は香澄先輩にも聞こえているようだが、俺と違ってだいぶ余裕がありそうだ。
「しっかりして、気を確かに持つの!じゃないと、あなたはホモになってしまうわ!!」
香澄先輩……こんな時に、何を言っているんですか……冗談を言っている場合じゃ……
「私の事が好きなんでしょ!?私の彼氏なんだから、BL波なんかに負けないで!!」
そう言って香澄先輩は、俺の頭を強く抱きしめた。
鼻孔一杯に広がる、女性特有の甘い香り。
強烈な女性の匂いに頭が蕩け、本能が理性の支配から解き放たれてしまいそうだ。
身体中に血がめぐり、雄としての本能が鎌首をもたげる。
「……あれ?」
気が付けば、頭の中に響く声は聞こえなくなっていた。
「良かった、BL波に打ち勝ったのね!」
BL波?
何だか良く分からないが、香澄先輩はどうやらこの超常現象の正体を把握しているようである。
「あの、今のは一体……」
「ええ、あれが奴らの手口よ。今のはBL波と言って、アレに洗脳されるとBLに目覚めてしまうの」
…………すみません、もっと俺が分かるように言ってもらえますか?
「BLというのは、ボーイズ・ラブの事で、つまりホモの事よ」
…………ごめんなさい、余計に訳が分からなくなりました。
「並行世界で開発されたホモ洗脳装置。それを止めない限り、このままでは日本中にBLが広がってしまうわ」
えっ、並行世界って、さっきのあれ全部マジ話だったんですか!?
いや、一〇〇%嘘だとは思って無かったけれど、全部本当の事だとか普通思わねぇよ!!
「でも、安心して!魔法少女は私だけじゃないから、きっと大丈夫よ」
えっ!魔法少女って香澄先輩だけじゃないんですか?
……言われてみれば、確かにそれっぽい事は言っていたような気がするな。
「ほら見て、他の魔法少女が出動していくわ!」
窓の外を見ると、幾筋もの光が天を駆けていき、この部屋からそう遠くない場所へと降りていく。
そしてしばらくすると、発砲音のようなものが幾つも耳に届くようになった。
「始まったわね……」
「……」
やばい、これは本当の本当にマジの話のようだ。
時折、衝撃波のようなものがやってきって、部屋の窓がビリビリと震えている。
……ただ、そうなると気掛かりになってくるのは、やはり香澄先輩の身の安全だ。
未だに半信半疑の状態ではあるが、どうやら香澄先輩はあの発砲音と無関係ではないようである。
「あの、香澄先輩は行かなくていいんですか?」
「……うん、私はまだ契約者がいない半人前だから、出動しなくていいの」
良かった、どうやら香澄先輩が危険な目に合う心配はないようだ。
他の魔法少女には申し訳ないが、俺はホッと胸を撫で下ろした。
――とその時、一際大きな衝撃波が大きく部屋を揺らした。
【今日のQ&A】
Q ジャンルの変更をするなら今の内ですよ?
A 出来れば他の方の感想をお聞かせ下さい。それを聞いてから考えたいです……