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※ここからは、特定の差別用語や、それに類する表現が頻繁に出てまいります。

それらが苦手な方や不愉快な方には大変申し訳ございませんが、ご了承の上お読み頂きますようお願い申し上げます。

『――続いて、芸能ニュースです。不倫騒動で世間を騒がせたモデルの春野スミレさんですが、すでに和解金を受け取っており、示談が成立している事が判明しました。しかし、その事で酷く心を痛めたとの事で、しばらく活動を休止すると…………』


 テレビから垂れ流されるニュースの声が、俺達の間を通り抜けていく。


「……」


 あれから俺の隣に移動した香澄先輩は、少し俯きながら、しきりにお茶を口にしていた。

「責任を取ってよね!?」という言葉に「任せて下さい」と返してからは、ずっとこんな感じである。

 いい加減、ちゃんとした説明をしてもらいたいのだが、香澄先輩が口を開く気配は感じられない。


「それで香澄先輩、さっきの言葉ってどんな意味だったんですか?」


「……!?」


「魔法少女がどうとかって、何の比喩ですか?」


「…………」


「あの、説明してくれないと、本当に分からないんですけど……」


 なんとか言葉を引きだそうとするが、香澄先輩は気恥ずかしそうに目を伏せてしまう。

 正直、この気まずい空気をなんとかしてもらいたいのだが、涙で濡れた跡を見てしまうと、俺がなんとかしなければと思ってしまう。

 男は女の涙に弱い生き物なのである。


「……ねぇ、笑わずに聞いてくれる?」


 すると、ようやく香澄先輩が重い口を開いてくれた。


「いいよ、何?」


「実は私、魔法少女なの」


 ……うん、それはさっき聞いた。

 俺が聞きたいのは、もっとこう、理解の範疇に収まる話である。


「今、日本は並行世界パラレルワールドからの侵略を受けていて、私はそれに立ち向かう『力』を持った魔法少女の一人として、政府に登録されているわ」


 いや、理解の範疇には収まったけれども、そういう事ではない。

 告白して、キスまでしたのだから、男女の関係的な話が聞きたいのである。


並行世界パラレルワールドは、どういう歴史をたどってきたのか分からないけれど、同性愛者ばかりの世界になってしまったそうよ」


 ……いや、だからそうじゃない。

 男女の関係って言っても、そういう意味では断じてない。

 ってか、同性愛者ばかりの世界って、どうやって子供を作るんだよ!?

 百年もすれば、人類滅亡するよね?


「科学技術が現代よりもずっと進歩している世界。そこでは、同性でも子供が作れる技術が誕生してしまった。そしてその結果、同性愛者が爆発的に増えていったの」


 お答え頂き、ありがとうございます。

 だけど、何がどうなれば同性愛者が増えるのか、まるで理解が及びません。


「そうして、今の日本とは異なる、私達から見れば歪な社会が形成されていった。そしてある日、二つの世界を繋ぐ穴が日本に開いてしまい、そして、その穴を通って並行世界パラレルワールドから一部の過激派がこちらの日本に侵略してきているというのが現状なの」


 もう、突っ込み所満載である。

 だがしかし『笑わずに聞く』と約束したのだから、これはきちんと最後まで話を聞かねばなるまい。


「そして、彼らは進んだ科学兵器を使って、こちらの世界で同性愛者を増やしているわ。ほら、同性愛者が増えたとか、出生率の低下とか、そういったニュースを見た事が無い?」


「まぁ、言われてみれば、見た事があるような無いような……」


「それらの影には、彼らの暗躍が少なからず関わっているわ」


 それで、肝心の魔法少女はいつ出てくるんでしょうか?


「進んだ科学技術を要する彼らに対抗するには、現状の警察の装備では力不足だった。だけど、あちらの世界には無い『力』がこちらの世界にはあったの。それを持ったのが私達、魔法少女」


 成る程、()()は良く分かった。

 ……いや、良く分からんけど、香澄先輩が言わんとする所は大体把握できた。

 つまり、良くある特撮ヒーロー物の世界観を想像すればいいらしい。


「……あの、香澄先輩。一つだけ答えてもらっていいですか?」


 正直、何が何やらまったく理解できないが、香澄先輩が冗談を言っていない事だけは分かる。

 いやまぁ、これだけの妄想を真面目に垂れ流す電波ちゃんという可能性もあるが、俺が好きになった香澄先輩は、無意味に変な事を言い出す人間ではない。

 何かの事情があるのだろう。


「うん、何?」


 だけど、俺が一番知りたいのはそこではない。

 確かに『魔法少女』とか言い出した時には面食らったが、俺が香澄先輩を好きだという気持ちからすれば、とても小さな物だと言える。

 何やら事情を抱えているようだけれど、これから付き合っていく上で少しずつ理解していけばいい事だとも思う。

 ひょっとしたら、俺には重すぎる事情なのかもしれないが、それはそれが分かってから考えれば良い問題で、今大事なのはそこではないのである。


 俺は香澄先輩から、たった一つだけの真実を確認するために、それを告げた。










「香澄先輩は、俺の事が好きですか?」










 俺がどれだけの思いで、今日この部屋までやってきたのか。

 せっかく意を決して告白したのだから、その返事を聞かないと、帰るに帰れないじゃないか。


 俺の投げた質問に、一瞬驚いた顔を見せる香澄先輩。

 徐々に顔を赤く染め、ついにはそれを隠すようにそむけてしまう。


 しばらく沈黙が場を支配したが、そう長くは続かなかった。


「………………うん」


 そう小さく呟く香澄先輩は、首まで真っ赤に染まっていた。


【今日のQ&A】

Q ちゃんとした恋愛小説を書けばいいと思うのですが?

A ……それな!

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