告白
すみません、ついカッとなってやってしまいました。
エイプリルフールなので許して下さい……
俺は今、人生で最大の山場を迎えているのかもしれない。
唇に残るやわらかな感触。
鼻をくすぐるシャンプーの匂い。
やけに大きく聞こえてくる心臓の音。
『――次のニュースです。近年の出生率の低下には外的要因があるとして、厚生労働省は対策室を設置して対応に当たる模様です…………』
テレビから流れてくる場違いなニュースの声が、かろうじて俺の理性を留めてくれていた。
もしも、ニュースが流れていなかったら、頭が真っ白になって、そのまま香澄先輩を押し倒していたかもしれない。
――たった今、俺は憧れの香澄先輩とキスをした。
たまたまバイト先で出会った香澄先輩に、俺は一目で恋をした。
思い切って話しをしてみると、同じ大学だという事で会話も弾み、それから連絡先を交換して交流を重ねる事一ヶ月。
俺は、彼女の部屋に招かれる事に成功していた。
もうすぐ試験なので、ノートを借りたいと相談したところ、香澄先輩は「じゃあ家に来る?」と言ったのだ。
一人暮らしの女性が自分の部屋に異性を招き入れる事が、何を意味するのか。
流石にそれが分からない程、鈍くは無いつもりである。
部屋の中に入ってノートを受け取った後、頃合いを見て俺は香澄先輩に告白をした。
「一目会った時から好きでした。香澄先輩、俺と付き合って下さい!!」
返事は無言のキス。
一瞬で香澄先輩の顔が迫り、俺の唇は奪われた。
頬を染めて、恥ずかしそうに目を伏せる香澄先輩。
お互いの息が感じられる程の距離間。
唇に残るやわらかな感触。
『――また、後天的に同性愛に目覚める事例が発見され、出生率の低下との因果関係を調査していく方針のようです…………』
テレビから流れてくる声が、俺の思考を現実に留めてくれていた。
嘘……ではない、文字通り目と鼻の先にいる香澄先輩がそれを証明してくれている。
それこそ、その長い睫毛の本数が数えられるぐらいに近くにいるのだから。
「えっと、香澄先輩……今のは?」
「わ、分かるでしょう?…………言わせないでよ」
プイと顔をそむける仕草に思わず頬が緩んでしまう。
俺は香澄先輩の耳元に口を近付け、そっと囁いた。
「俺、ちゃんと聞きたいです」
「……い、嫌よ」
耳まで真っ赤に染めて恥ずかしがる香澄先輩が、今まで見た事が無いくらいに可愛い。
好きな娘につい意地悪をしたくなるこの心境が分かるだろうか?
「ほら、ちゃんと説明してくれないと、分からないですって」
「……じゃ、じゃあ、一回しか言わないからね」
「はい、ちゃんと聞いておきます」
これは夢だろうか?
憧れの先輩が俺とキスをして、顔を真っ赤にしている。
……確かに、部屋に呼ばれた時点でかなり勝算が高い事は分かっていたが、ひょっとしたら俺の思い上がりなのかもしれないと、疑念は最後まで拭い切れなかった。
告白した時も、もし断られたらどうしようと気が気ではなかったのである。
それが、今や愛し愛される仲だ。
こうしたやりとりの一々が、胸に染みて鼓動が高鳴ってくる。
それにあれだ。
当然ながら、現在部屋の中には俺達二人しか存在しない。
キスの先を期待してしまうのは、男として間違っているだろうか?
いや勿論、無理に押し倒すような真似はしないが、一人暮らしの女性が、意中の異性を部屋に呼び込むのだから、その可能性は否定できないわけで…………だから、コレは男として当然の生理現象なので、どうか許して欲しい。
俺があれこれ考えていると、香澄先輩は意を決したようで、胸に息を溜め、思い切って告白をしてくれた。
「魔法少女の私と契約して、一緒に戦って下さい!!」
「………………うん?」
「あ、あの、その、だからって勘違いしないでよ!私は、誰とでも契約するような軽い女じゃないんだから。貴方だから契約したんだからね!!」
すみません香澄先輩、何を言っているのか全く分かりません……
「そ、それに、契約できたって事は、貴方がちゃんとそういう気持ちだったって証拠なんだから、別にいいでしょ!?」
……いや、何で俺が責められてるんですか?
「は、初めてだったんだから、ちゃんと責任取ってよね!!」
目に涙まで浮かべて俺に詰め寄る香澄先輩。
何だか良く分からないが、そこまで言わせたら、こう答えるしかないでしょう。
「あっハイ、任せて下さい」
俺だって、男の子だからね。
【今日のQ&A】
Q ジャンルが『恋愛』になっていますけれど、間違いありませんか?
A …………たぶん。