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幻想。

作者: 長井瑞希

 形あるものは、いつか必ず壊れてしまう。ガラスだったり陶器だったり、割れ物と呼ばれるものは特に壊れやすい。電子機器は水没すれば壊れるし、木製のものは燃えてしまえば簡単に壊れてしまう。

 形あるものですら壊れてしまうのなら、形のないものはよりいっそう壊れやすいのだろう。

 実際に触れることのできない、目に見えないものなんて……。


 アルコールが入るとひどい振る舞いをするらしい。ある程度の量なら自制も効くのだが、一定量を飲むと記憶があやふやになり、どうやらその時に暴走しているらしい。

 さすがに毎回そうなるわけではないが、それでも初めてその様を見た人からすれば、拒否感が発生しても仕方ない。

 そしてその小さな火種が、もしかしたら『絶交』というものへの引き金になることだってある。

 僕達の信じた絆は、そういった些細な――少なくとも個人的には、だ――出来事で壊れてしまう。

 つまるところ、人と人との絆というものは、割とあっさりと壊れてしまうものなのだ。


 永遠の絆なんてものは存在しないのかもしれない。それでも、求めてしまう。永遠が、欲しい。


 永遠。別に、不老不死になってこの先ずっと愛する人と暮らしたい……なんて欲望があるわけではない。けれど、そのくらい固い絆で結ばれた相手と生活したいと思うのは、僕だけではないはずだ。


 先日、彼女と別れることになった。彼女がその永遠の相手ではなかったと言えばそれまでだ。しばらくしたら新しい彼女を探したい。

 ただ、ふと思ってしまったのだ。誰かにそれを、永遠の愛を求めるのは間違っているのではないか、と。


 ある人はいう。愛なんて煩わしいものだと。

 ある人はいう。愛とは与えるものだと。

 ある人はいう。愛するには資格がいるのだと。


 己に資格はあるのか。己は愛を与えていたか。己は、本当に愛を欲しているのか、と。


 努力無しに人は何かを為し得ない。愛することを努力する。愛とは努力のこと……。


 ともあれ、ひとまずは独り身の、束の間の休息を楽しもう。

 そして、本物の愛について考えてみようと思う。

 それが結局のところ幻想でしかなかったとしても、後悔だけはしないように……。

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