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七話~これからの記憶~

 君は今、何を考えているのかな

 ぐ隣にいるのに

 手を伸ばせば届く距離なのに

 君が凄く遠くにいるようで

 いくら手を伸ばしても届かないような気がして

 直ぐ振り向けば君がいる

 だけど振り向いても君がいないような気がして

 こんなに近くにいるのに

 君がとても遠い人に思えて

 僕の思い過ごしかな

 それならそれで良いんだ

 でもね

 どうしようもなく焦るんだ

 無意識に君を探しちゃうんだ

 服のすそを引っ張って

 行かないでって叫んでる

 君はどんな顔をして僕を見ているの?

 君は何を考えてるの?

 君は今何を思っているの……?

 直ぐ隣には君がいる

 手を伸ばしても届かない

 振り向いても君はいない

 どうしてなんだろう

 僕は何処で間違えた?

 何処で君を傷つけた?

 僕には何も分からない

 だから

 何も分からない僕に教えてよ

 君が僕からいなくなった理由を

 服の裾を引っ張って

 行かないでって叫んでも

 君はごめんねって離すんだ

 どうして何処かに行っちゃうの?

 君は僕が嫌いなの……?

 本当は全部分かってるんだ

 君がどんな顔をしているのか

 何を考えているのかも

 何を思っているのかも

 でも分かりたくなくて

 目をそむけて

 逃げても君は戻って来ない

 だから戦うよ

 だから

 だから……!

 本当は全部知って……



「本当は全部知って……」

「わぁぁああぁぁあああぁぁ!!!」

「あ、紗綾。忘れ物、取りに来た……」

「見るなって言ったでしょーが!勝手に見ちゃ駄目!あと勝手じゃ無くても駄目!あぁもう返して!私のノート!!」

 紗綾が学校にかよい始めて一ヶ月。

 後遺症こういしょうも無く、紗綾はあの頃の様に平和に日々を送っていた。

 学校に相変わらず変わりは無かったが、『駆け足注意!』の紙が、『駆け足要注意!!特に階段!!』になっていた。

 紗綾はまたバンドに復帰ふっきし、バンドに力を入れている。

 優斗は部活をめ、帰宅部になった。

 紗綾が理由を聞くと、

『紗綾がいつ倒れても良いように』

だった。

 なので優斗は、紗綾のバンドにいつも顔を出していた。

 空が茜色あかねいろに染まりつつある。今日も校舎には楽器の音が響いていた。ギター、ベース、キーボード、ドラム、そしてヴォーカルの歌声。


「行くよー!せーの!」

 今日も音楽室は紗綾の掛け声から始まった曲の音で満たされていた。

 紗綾のバンドは基本恋愛をモチーフにしている。なので曲も繊細せんさいで柔らかな曲だ。

 現在スーパーのイベントでライブをして欲しいと依頼されていた。なのでそのライブに向けて、絶賛練習中だ。



「つっかれた~!」

「お疲れ様」

 紗綾は練習をえ、優斗と一緒に階段を降りていた。

 空は完璧に茜色に染まっている。

 紗綾はふと窓から夕日を見た。

「…そういえば…」

 あの日もそうだった。

 事故にった日。あの日も、この窓から真っ赤な夕日を見ていた。 毎日が退屈で、楽しいのはバンドだけだった。

 でも、今は違う。

 今は毎日がとても楽しく感じられる様になった。こういう当たり前に過ごせる日々が、一番楽しいのだと、感じる様になった。

 あの日は、何気なにげなく夕日を見ていた。あぁもうこんな時間かと。

 今は夕日が輝いて見えた。キラキラ輝いて、まるで、

「……!真っ赤な月……」

「え?何か言った?」

「あ、ううん!ちょっと歌詞が思い付いたから」

 今日もいつもの様に日々を送っている。

 当たり前と言う素敵な日々を。

 そして紗綾の未来は無事拓き、これからも記憶はつむがれて行く。



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