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佐々木
佐々木。
黒いセミロングの普通の女子高生。
その髪から微かに女性の匂いを香らせる。
「なぁーなぁー、さいとー」
その少女は気まぐれな猫の様に僕に構ってくれと促す。
背の丈も他の女子と比べて小さく、僕の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
僕は平日の昼間から彼女の部屋で何をするでもなく、ただ一緒に時間を潰している。
「少しはこっち向いてよ!」
彼女は僕の顔をグイッと強引に彼女の方に向ける。
幼い顔立ち。
瞳は黒目がちで鼻は小さい、典型的な童顔だ。
「どうした、ロリ女子高生」
「あー? 童顔なの気にしてるのにー」
すぐにそっぽを向いてしまった。
他愛もない、告白から数ヶ月経った恋人同士が交わすような非建設的な会話。
相手の気持ちがこっちを向いているかの確認手段。
長く一緒に居ればその程度で事足りてしまう。恋人とはそのようなものだ。
ただ彼らと違うのは、僕らは恋人では無く姉弟ということだ。