第一章)頭の悪い父親な第六話
「さて、説明してもらおうか、セイト?」
紐でぐるぐる巻きにした暗殺者(仮)を指差しながら、俺の父親、アルフォンス=イルヴィナスが聞いてくる。
容姿としては、イケメンというよりハンサム。俺と同じ金髪に、アメジストのような紫色の眼。身長は190cmはあるかな?見た目は35~40歳くらいに見えるから、もしやあなた、ロリコンさんですか?と聞きたくなる。だって、見た目30代後半の相手は見た目10代なんだぜ。俺じゃなくても、自然と犯罪の二文字が出てくると思うな。
「なんか、その人が窓を割って突っ込んできて、ぶっ倒れたぁ」
嘘は言っていない。突っ込んできて、の所から随分と省略しているけどね。
それを聞いてアルフォンスは、あっ、とした表情になる。
「・・・普通に考えてみれば、セイトはまだ3歳児じゃん・・・」
こいつ馬鹿だ。3歳児に事情を聞こうとしていたんだからな。でも、俺も気づかなかったから同じか。
「悪かったなセイト。部屋に戻って休んでいいぞ」
そう言って、アルフォンスは、気絶した暗殺者(仮)を連れて行こうとする。
が、それを俺は呼び止めた。
「とう様、ちょっといいでしゅか?」
噛んじゃった。だが、アルフォンスは、それよりも俺に呼び止められたことが意外だったようで、一瞬、ポカーンとした面になってから、我に返って言葉を返してくる。
「なんだ、セイト?(と、とう様!?この子はオレが父親だと理解している!?わー超嬉しい!!)」
・・・。ポカーンとしたのは、とう様というフレーズに対してだったようだ。どうやら俺の両親は、揃って親バカ、ということのようだ。
ああ、要件を言わなきゃ。
「その人、どうするんですか?」
よし、今度は噛まなかった!が、俺の言葉に凍りつくアルフォンス。この様子なら、殺すか尋問かだな。子供の前で尋問とか、殺すとかそういうのは言えないんだろう。一応、俺も元日本人だ。自身の命を狙った相手でも、殺すとかそういうのはできればやめてほしい。
およそ5秒後、なんとかいい感じの答えを考えついたのか、口を開いた。
「うん、この人は家の窓を壊したから、そのことでちょっと怒らなきゃいけないんだ」
うん、バレバレの嘘だ。目が泳いでるし。もうちょい聞いてみるか。
「怒ったあとはどうするんですか?」
また目が泳いでいる。
「も、勿論、きちんと謝らせて帰ってもらうよ」
動揺しすぎだ。簡単に嘘だとわかる。この人、そんなんで社会でやっていけるの?と、思ってしまうぐらいに。まあ、この世界の社会の仕組みは大して知らんが。そこまで考えてやっと気づいた。
そういえば、この世界の人達って、日本人には考えられないくらい馬鹿なんだっけ?
なら、動揺していても問題ないのかな?
いや、流石にそれはないだろう。
そんな思考をしながら、決定的なことを言う。
「嘘ですね、とう様。
尋問するのですか?殺すのですか?それとも、両方ですか?」
次の瞬間、アルフォンスの顔が真っ青になった。
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:アルフォンス=イルヴィナス:
なんということだ。
この息子は、どう考えても3歳児としてはおかしい頭脳を持っている。
「とう様、ちょっといいでしゅか?」などと言ってきたから、なんだろうと思ったのだが、その時はそれよりも、セイトに「とう様」と呼ばれて浮かれていた。
まさか、嘘を見破られるとは・・・。
一応、社交場などでも嘘は普通に言っているが、それが見破られたことなど一度もなかった。しかし、セイトは少しの会話だけで嘘を見破った。そして、セイトの提案によって、尋問した後、とりあえず牢に入れておくことになった。
殺さずに牢に入れるというのは同意しかねたが、尋問するというのは名案だ。今まで刺客はそのまま殺してきたから背後関係が全くわからなかったが、これならなんとかなりそうだ。
にしても、3歳でこれの頭の良さか・・・。
末恐ろしいな、セイトは。




