第一章)第五十四話 襲撃 ⑤
ベルゼブブを殺した後、相手の統率性が失われた魔族の部隊は、冒険者と防衛兵によって簡単に殲滅された。その間、俺は後方で座って魔力を回復、圧縮していた。
ちなみに、魔力は何もしなくても回復する。俺が散々やった実験では、どうやら、空間内の魔力を皮膚から取り込んでいるようだということがわかった。呼吸をしなくても勝手に回復するし、水中でも普通に回復したことから、ついでに空気中以外にも水中にも魔力があるということがわかった。あと、魔力回復量は個人個人の保有魔力が多くなるほど多くなり、平均的に見れば毎分0.05~0.1%。多い人で1%も回復する人もいた。
俺の魔力回復速度は大体毎分0.5%。俺が計測した限りの平均が0.05~0.1%なことから、平均よりは早い。その為、結構早く全回復した。今やっているのは体内魔力の圧縮作業だ。
一般的には知られていない、というか俺が開発した技術のため他の人には真似できないが、体内魔力を圧縮することによって、より多量の魔力を貯めておける。ちなみに、俺の5歳の時に計測した保有可能魔力は137080だったが、7歳現在は322090と、2年で2倍以上に増えている。これに関しては、大して実験していないから詳しくは分からないが、要は使えば使うほど魔力が体に馴染んでその分受け入れやすくなっているってことだと思う。あと、未確認だが、知識量が増えれば増えるほど魔力も増えていっているような気がする。といっても、誤差の範囲だし、ただ魔法を使っているだけでも魔力保有量が増えたから、知識を得る=魔力保有量が増える、ではないことは確かだけど。
話を戻すが、体内魔力圧縮作業によって俺は絶対安全な状態なら最大で、保有魔力の10倍ほど溜め込める。といっても、ひとつ間違えれば魔力暴発を起こすため、かなり危険なのだが。その為、集中を乱されるのはやめて欲しいのだが・・・。
「少し話を聞かせてもらおうか?」
そう言って俺に話しかけてきたのはギルドマスターのアグニ=バーステッドだ。
アグニは、その片方しかない目で俺をまるで睨みつけるかのように、というか睨みつけて有無を言わせぬ様子で仁王立ちをする。並、どころか上位の冒険者でさえ動けなくなるような威圧があるが、俺にとっては特に気にならない程度だ。
「いや、拒否する」
その為、このように断ることもできる。
元々、情報公開義務などない。ただしここで、はい、と答えると、それに類似した義務が生じる。何を聞かれているのか明確ではない以上、一度、はい、と答えたら変なところまで聞かれる可能性がある。だから下手には答えられないのだが、他の冒険者だったら、ギルドマスターの威圧を受けると頷かずにいられないだろうな。それだけの威圧があった。逆にその威圧を受けて平然と拒否した俺に唖然としつつも、アグニはしつこく情報開示を求めた。勿論断ったが。
最終的には諦めてくれたものの、主に精神的に疲れた。
「セイト君」
軽くだらけていた俺に、セレーナが話しかけてきた。「・・・隣りいいかな?」と聞いてくるセレーナに頷いて隣りに座らせる。少し間を開けて座ったセレーナは、思い切って間を詰めてきた。耳まで赤くしている様子は結構可愛いのだが、俺はロリコンではないので別にご褒美とかではない。ないったらない。
赤くなってしばらく無言だったセレーナだったが、意を決したように口を開く。
―――直前、10km先で強大な魔力が出現した。
次話投稿は多分今週中です
遅れても来週です




