第一章)第五十三話 襲撃 ④
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「んな!?」
ベルゼブブが驚いた声をあげ、俺の攻撃を避けようとする。しかし、急激な速度の変化についていけなかったのか、避けきれず俺の右ストレートを受けた。
俺は勿論、『計算行動・第五技・集中』を使っていたため、ベルゼブブはトラックに轢かれたかのように吹き飛んだ。その時に、直線上にいた魔王が巻き込まれて軽くクッションになっていたが、問題ない。本命はここからだからな。
俺は追撃せず、かわりに魔法を組み上げる。この時、組み上げた魔法式は単純かつ簡単なものだ。
『周囲の空気を集めて射出する』
風属性、5級魔法『風球』の魔法式。俺が全くアレンジを加えていないその魔法式は、ちゃんと踏ん張っていれば飛ばされることすらない殺傷性ゼロの魔法のものだが、この場合には十分だ。ちなみに、5級魔法よりも下の生活魔法との境目の魔法と言われているほど使えないとされている魔法だ。
さっきまで俺とベルゼブブが戦っていた場所の空気が集められ、そして、起き上がろうとしているベルゼブブに射出される。ベルゼブブは魔法の気配を感じたのか身構えようとする。しかし、その魔法が『風球』で、しかも瞬時に回復できる魔力しか込められていないとわかると、防御もせずに普通に起き上がろうとする。
勿論、それが俺の狙いだ。
俺はそのまま次の魔法の準備に取り掛かった。正直、今の魔法だけで殺せる気もするが、『計算行動・第一技・予測』で予測したかぎり、暴風を生み出されて何とかされる確率が高い。まあ、それまでに瀕死になってはいるんだろうけどな。
俺が予備の魔法式を組み立て終わり、ベルゼブブが立ち上がると同時に『風球』がベルゼブブの胸のあたりに着弾し、ベルゼブブの周囲に圧縮された空気が充満する。ベルゼブブはさすがの耐久性というか、竜でも一撃で殺す『計算行動・第五技・集中』を受けても大したダメージを負っていなかった。しかし、大したダメージを負っていなくても、息もできないほどの高速戦闘のあとならば、必ずひと呼吸入れる。
実際、ベルゼブブは呼吸をして、そして、生臭く特徴的な刺激臭を感じ取り息を止め目をつむった。が、既に呼吸をしてしまっている。それに、目をつむった程度、息を止めた程度ではこれは防げない。勿論、息をしてくれたほうがより影響を受けるんだろうがな。
俺が戦闘中に発動した魔法は『空気中の酸素を電気分解してオゾンにする』というものと、もう一つ頭を覆うような形で空気遮断を使った。
オゾンには急性・慢性双方の中毒症がある。
急性中毒では目や呼吸器が刺激され、高濃度になるにつれて咳やめまいが引き起こされ、さらに高濃度になると呼吸困難や麻痺、および昏睡状態になり、放置しておけば死亡する。 慢性中毒では倦怠感や神経過敏など神経の異常や、呼吸器の異常をきたすらしい。実際にそんな多量に吸い込んだことはないからわからないがな。
俺の魔法によるオゾンの濃度は、かなりの魔力(といっても保有魔力の5%程)を込めたため、結構高濃度な20 ppm程になっている。これは、ガスマスクが必須なレベルのおよそ2倍の濃度だ。
ちなみに、空気遮断の魔法を使ったのに息を止めたのは、遮断空間内の酸素が足りなくなったからで、実はオゾンのほうの魔法には対して関係がない。
超高濃度のオゾンを吸い込んだベルゼブブは、予想通り、呼吸困難と麻痺を起こしていた。ギリギリ昏睡状態になっていない程度だな。予測だと、魔法を使って暴風を生み出してオゾンを撒き散らす、ようなことをするのだろうと出ていたが、実際にはそんなことはなく、完全に動けなくなっているようだった。
どうやら、前世と勇者の文献の『猛毒を操る』という情報を加算しすぎたようだ。毒を操るからといって、毒に耐性があるといえばそういうわけでもなかったという話だな。
俺は『破壊』魔法によって、動けないベルゼブブを殺した。
まさかの実力の半分も出せないまま殺られるベルゼブブ・・・
作者もなぜこうなった状態です。初期プロットではもう少しベルゼブブは生きていたはずなのに・・・
次話投稿は来週だと思います
ちなみにまだ一章は終わりません




