第一章)第五十二話 襲撃 ③
おそくなってすみませんm(__)m
完全な不意打ちでベルゼブブに放った掌底は、しかし、ベルゼブブが後ろに向かって跳ぶことによって回避された。流石、魔族の中で七体いる頂点のうちの一人なだけはあるな。相当な反応速度だ。まあ、これは当たればいいや程度だったからな。
俺は掌底を放った体勢のまま『計算行動・第六技・移動』を使って、弾丸のような速度でベルゼブブに肉薄、追撃する。傍から見れば、7歳の子供が体術の真似事をして、それを大の大人が避けているようにしか見えないと思うが、当人達は至って真面目だ。
―――実際には、傍から見るとその速度が周囲と比べてそこだけ早送りになっているかのように錯覚するほど早く、しかも、両者ともに魔法を使っていない(少なくとも使っている気配がない)為に、周囲の人達は目を見開いているのだが、セイトはそれに気づいていない。
俺は、時折フェイントを入れながら変則的に攻撃を繰り出す。が、やはり、そもそも人間とはスペックが圧倒的に違いすぎるために、不意打ちでもない限り当たらない。むしろ、時間が経つにつれてこっちの動きを読まれ始め、ベルゼブブの方に余裕が出てき始めていた。まあ、それが狙いなんだけどな。
「どうした? お前の動きは大体読めてきたぞ?」
「さあ、どうだかなッ」
そこで、俺は不意打ち気味に魔法を使う。
俺の体内の魔力が抜け、代わりに事象改変の理論が書かれた目に見えない魔法式が周囲に出現する。そしてその魔法式に魔力が充填されていき、事象を改変する。
ここまででおよそ0.2秒。
つまり、人間の反射速度とほぼ同等だ。
そしてベルゼブブの反射速度は、今の身のこなしから察するにおよそ0.05。
ベルゼブブにとって、俺の発動した魔法を見極めるのに、この高速戦闘中では十分過ぎる程の時間ではある。しかし、俺の発動した魔法はこの世界の者にとって、理解の範疇の外にある科学のものだ。
実際、ベルゼブブは俺の魔法を無視してほんの一瞬動きが止まった俺に対して反撃してくる。俺はそれを紙一重で避け、体勢を立て直してから息を止めた。そのまま、今度は動きを変則的なものから直線的なものに変えて、ついでに速度も一段階速くしてベルゼブブに攻撃した。
次話投稿は明日の朝の1時です




