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黒天の破壊者  作者: Solu
第一章 暴食の大陸編
5/60

第一章)四話の別視点の第五話

遅くなりました、第五話です

 :暗殺者(仮):


 おかしい。

 どう考えてもおかしい。

 暗殺対象は上級貴族、イルヴィナス家の子供で、最も簡単な任務だというから、ナンバー7、つまり最弱の俺が使われたというのに・・・。

 何なんだッ!?この子供はッ!?

 最弱といっても、剣の速度だけはかなりの評価を頂いている。

 だというのにッ!!


 なんで、本を読みながらそう簡単に避けているんだッ!?


 こちらを一切見ずに、華麗な足さばきで避けている。しかも、かなりの余裕をもって。


 「なんで当たらねえんだッ!!(小言)」


 俺は、その態度に対する怒りと焦りで、ついつい『ブースト』を使ってしまう。『ブースト』は、魔力を各部に付与することで、一時的に力や速度を増す技術だ。しかし、その威力によって、凄い音がする。もし、よけられた場合、あの危険人物が来る可能性が高くなってしまうのだ。そう思い、内心焦ったが、その心配は・・・・・杞憂に終わった。


 バシッ


「んな・・・ッ!?」


 その子供が、『ブースト』した俺の剣を真剣白刃取りで止めたからだ。しかも片手で。一応利き腕の左だが、それでもありえない。達人のレベルになってやっとできる程のものなのに、こんな子供が、しかも片手でやるなんて信じられるものではない。だが、現にここでやってみせた。

 これはマズイと思い、剣から手を離してから利き足による回し蹴りを放つ。内臓をぐちゃぐちゃにする程の威力の蹴りだ。これで死ぬはず。


 バギッ


 クリティカルヒットした手応え。実際、脇腹に足が突き刺さっている。

 流石にこれなら死ぬだろう。

 が、何かが引っかかる。

 何故、内臓の潰れる音ではなかったのか?

 何故、子供の足元の床板が折れているのか?

 そして何故、内臓が潰れたはずなのに、血を吐かないのか?

 答えは簡単。

 この子供の内臓は無事。

 代わりに床板が破壊された。


 「な・・・ッ!?」


 見てみると、この子供は何事もなかったかのように本を読んでいる。その碧い瞳が一瞬、こっちを向いた。その瞬間、殺らなきゃ殺られる、と思った。

 そこからの動きは、自分からしても見事なものだった。

 流れるような動きで足を戻し、そのまま踵落としを繰り出す。この一撃だけは、ナンバー1にも劣らないものだった。


 「(絶対よけられない!!)」


 そう確信した。一瞬、この子供がこちらを見たが、これなら何も出来ないはずだ。

 だが、そうはならなかった。

 何が起こったのかわからなかった。

 ただ、いつの間にか自分の足が跳ね返って、自らの額に蹴りをしていたことだけはわかった。

 それを認識した瞬間、俺の意識は途切れた。



―――――――――――――――


 :父親:


 さて、これからセイトに会うのだが、どうすればいい。

 セイトとは、生まれてから一度も会ったことがないのだ。いくら、仕事が忙しいからといって、会わないのはどうかと思うだろう。が、上級貴族として、国の責務がある。しょうがないのだ。

 と、思考がそれたな。

 う~ん、ここは普通に行くか。

 でもな~、相手は子供だし明るい感じの方がいいか?

 ただ、セリムはべったりしているせいでセイトに嫌われたって、ミレイちゃんに言われたし。

 う~ん。

 う~~ん。

 う~~~~ん。

 う~~~~~~~~ん。

 う~~~~~~~~~~~~~~~~ん。


 よし、ここは明るく行ってやるぞ!!

 そして、セイトの部屋のドアを開けた。結果・・・


 「セイト~、お父さんだぞ~。って、おい、この状況は何なんだ!!」


 本を読んでいる金髪碧眼の子供に、その椅子にされている大人。そして、割られた窓や折れた床板。


 理解不能だった。








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