第一章)第三十九話 異変
家に帰ってから、俺はリオスからある報告を受けていた。
古代樹の森の様子がおかしい、と。
忘れている人が多そうなので一応言っておくと、リオスは暗殺者(仮)だ。
それはともかく、古代樹の森についてだ。
詳しく聞いて見ると、魔物の動きが活性化していたり、高レベルの魔獣が森の外に出てきているなど、過去なかったような状態らしい。
・・・原因はハッキリしているな。
確実に俺とセレーナのせいだ。今の森は、俺達がLランク魔獣のグリフォンを倒したため、いわば、抑止力がなくなっている状態なのだ。高レベルの魔物が大量に居る古代樹の森では、本来縄張り争いなどが頻繁に発生し、もっと混沌とした状態になるはずだ。しかし、それらの高レベルの魔物よりも桁違いに強いグリフォンが存在していたために、それが抑止力として働き、一応の秩序が保たれていた。それを俺達が失くしてしまったので、本来の無秩序な状態に戻ったのだろうな。もしくは、トップが殺されて混乱しているのか。まあ、大体そんなところだろ。―――それだけじゃないかもしれないが。
「あー、放置でいいと思うぞ」
「何ででしょうか?」
「そのうち収まる。俺が原因だし」
「はぁ、そんなところだと思いましたよ」
でもまあ、一つ気になることがあるからな。様子だけでも見に行ったほうがいいか。
「まあ、一応様子は見てくるが」
「それはまたなんで?」
「ちょっと気になることがあってな」
「具体的には・・・といっても教えてくれませんよね?」
「当たり前だ」
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買ってきた服を置いて、俺とセレーナは古代樹の森に来ていた。ギルドの緊急の依頼で、古代樹の森の調査というものがあったので、ついでに受けてきている。参加可能人数は無制限。別に金に困っていないので、わざわざ受けてこなくても良かったのだが、セレーナのランク上げのために一応受けておいた。セレーナを連れて来たのは、まあ、分かるだろうけど、家の中に一人だと危険だからだ。普通に考えればこっちの方が何倍も危険だけどな。
「やっぱりか・・・」
古代樹の森の入って直ぐの所。そこに、予想通りの光景が広がっていた。
「・・・何で・・・どうしてこんなことに・・・?」
「見ての通りだ。実力のない冒険者が調査だからと楽観視して死んだんだよ。一応ここは高ランクの魔物やら魔獣、それから魔人やら魔王が出てくる森だしな」
実際には、一応なんてもんじゃなく、AランクもしくはSランクの化物しか出てこない。しかし、Lランクを屠れる力を持つ俺達にとっては、大した事がないのだ。
それはともかく、とりあえず目の前の光景をどうするかだな。
7、8人の内臓をぶちまけられた死体が転がっている。死体は、腕や足が欠損していたり、胸の中央に穴が空いていたり、食い散らかされていたりと、結構グロイ。それに血生臭い。なれている俺はともかく、セレーナは・・・と思ったが、そういえばセレーナもそのくらいは見たとか何とか言ってたのを思い出す。顔色が少し悪いが、思ったより平気そうだ。
とりあえず、放置しておくのはアンデット化したり色々と危険なので、魔法で火葬しておき、残った骨は土の中にちゃんと埋めておいた。
処理を終えてから、俺はさっきから俺達の方を見ているやつに向かって声をかけた。
「そろそろ出てきたらどうだ?」
この現場は不自然だった。まず、冒険者を殺し食い散らかした跡があるというのに、肝心の食い殺したやつが死体を残したまま姿を消しているということ。魔物や魔獣なら普通、その場で全部食べてしまうかお持ち帰りする。ここが巣とも考えられるが、それなら見張りがいないのはおかしい。
不自然な点はこれだけじゃない。その欠損部位の断面だ。欠損部位の断面からは、血やら肉やら内臓が出ていてわかりにくいが、まるで、部位を空間ごと削り取ったかのように綺麗な断面だった。魔物や魔獣に食い殺されたなら、こんな綺麗な断面なはずがない。
他にも、魔物や魔獣の気配がしないなどの不自然な点はあるが、今はいいだろ。それよりも、これをやったのは何者かという疑問に行き着くわけだが、それは今までの情報から予想はつく。
G、暴食の使い魔、カブトムシ、森の異変、空間ごと削り取るような食い方・・・。
これだけあれば『計算行動』を使わなくても余裕で分かる。
そして、俺の予想が外れていないことを裏付けるかのように、俺が意識を向けた方向から一人の男が姿を現した。
今週はもう一話投稿します。一応明日か明後日の予定です




