第一章)第二十一話 多重人格
話し合った結果、魔王は捨てておいた。目を覚ましても、もうこちらを襲ってくることはないだろうからな。
「で、お前はいったい何者なんだ?」
魔王を適当な場所に捨ててきて、一段落した所で、俺は赤い目の少女に聞いた。
『答えると思う?』
「思わないな」
今のところ味方とはいえ、簡単に情報を渡すのは馬鹿のやることだ。この世界の奴らはそのくらい馬鹿なのだが、今のこの少女はそうは思えない。ならば教えるはずがない。・・・と、思ったのだが・・・
『じゃあ教えるわ』
「はァッ!?」
予想外の事に思わず声を荒げてしまった。
『えっとね、まず正体から言っちゃうと・・・』
「おいおいおいおい、マジで言うのかよ」
まさか、ホントに言うつもりなのか!?
『私は翠の目の子、つまりこの体の本来存在している人格の・・・』
「そこからネタバレになりそうだからやめようねッ!?」
というか、人格とか言ってる時点でもうアウトだけどね。
『いや、ここまで言ったらもうアウトじゃない』
「それさっきの言葉言ってから直ぐに思ったよ」
『という訳で、最後まで言っちゃうけどいいわよね?』
「・・・思ったんだけど、俺が何故止めたのか意味分かんないな」
『奇遇ね。私も今そう思ってた』
まあ、あれだ。流れ的な?
『とにかく、私は《裏人格》みたいなものなのよ』
「そんなとこだと思ったよ」
人格がどうのこうのって言うと、大抵多重人格的な感じだからな。でも、一つだけ気になることがあるな。
「だけど、なんで目の色が変わるんだ?」
この問に対する答えは、ややこしかった。
『私も知らないわ』
「知らねえのかよッ!?」
『というのは冗談』
「冗談かよ!?」
『というのが冗談』
「どっちだよ!?」
『知ってるけど言わない』
「最初に言えよそれを!!」
・・・なんというか、ペースを崩されるな。翠色の方の少女とは全く違う。いや、あの時は、初対面だったから猫被っていて、本来の性格がこんなんだったかもしれない。
『他に何か聞きたいことはある?』
他に聞きたいことか・・・。なら、
「グリフォンを殺したのはお前の方だよな?」
『ええ、そうよ。あと、私達の名前はセレーナよ。この子も言ってたでしょ』
あ、あの時、俺が聞いてなかったのはそれか。
「じゃあ、セレーナ」
『なぁに?』
「その血だらけの服何とかしてくれ」
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セレーナが川で服を洗っている間、俺は勿論、のぞき見を・・・するわけないだろ!!
布団に入って寝たふりをして気配察知で周囲の警戒と、そして、セレーナが妙なことをしないように見張っていた(見てはいないが)。
と、服を洗い終わったのか、セレーナが俺の方に近寄ってくる気配がした。
「洗い終わったのか?」
そう聞いて、振り向いた俺の目に映ったのは、服を着ていない、つまり、全裸のセレーナだった。




