第一章)第十七話 セレーナ ②
今回はちょっと短めです
:セレーナ:
目を覚ますと、そこは森の中だった。
意識を失う直前にケルベロスに襲われていたはずなのに、何故か襲われた跡がなかった。それどころか、忌々しい《奴隷の首輪》は外れており、体中にあったおびただしい量の傷も消えていた。
「(どうして?)」
疑問に思ったが、まずはここがどこなのかを考えることにした。これからどうするか決定するには、まずは現在位置を把握しなければならないから。でも、見渡す限り木しかなかった。いや、足元に草とかはあるけど。
とりあえず、私は近くにあった草や木などの種類を調べてみる。家にいた時に読んだ本の中に、植物関係の本もあったからわかるかもしれない。
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こっちにある青い花は多分、魔物の嫌がる臭いを発する『マモノヨケ』だと思うけど、この黒い花はわからない。まあ、この辺の木々の大半は、古代樹の周りに多く見られる『小大樹』だったことを考えると、ここは古代樹の森なのかな?となると、私のいた国の隣の国のミニマム王国ってことになるのだろうかな?
く~
唐突にお腹が鳴った。そういえば、弟が殺された一昨日から汚い水と硬いパンくらいしか食べてなかったんだった。
私はマモノヨケの花を持って食べれるものを探すことにした。
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5分ほど歩いて、握りこぶしくらいの大きさの果物がある木を発見した。見たところ食べれる品種だったから、3つも食べてしまった。お腹が減っていたのだからしょうがない。
不意に、風に乗ってかすかな「バサッ」っと、鳥が羽ばたくような音がした。
普段なら気にもしないその音に、私は一気に警戒心を高める。この森が古代樹の森なら、空を飛ぶ生物はいなかったはずだ。
あのとてつもなく危険な一体を除いて
羽音は次第に大きくなり、私の頭上に影が落ちてきた。私が恐る恐る視線を上へ向けると、そこには巨大な魔獣がいた。
巨大な嘴や巨大な爪。巨大な翼に巨大な尻尾。白と黄土色の魔鳥、Lランク魔獣『グリフォン』
Sランクとは比べ物にならない強さを誇る化物。その力は、魔王の上位のものと拮抗するとも呼ばれている。とてもじゃないけど、生きていられる気がしなかった。
そして、私の意識はもう一度途切れた。




