第一章)命知らずっているよねな第十三話
「・・・あ、あの?どうしたらこんなんになるんですか?」
ギルドカウンターの受付さんに報告をした時の第一声がこれだった。俺の左手には、グリーンドラゴンの角二つと、ゴブリンの右耳117個が入った袋を下げられている。ちなみに重さは15kgぐらいだが、風属性の魔法で持ち上げているため、腕の負担は1kgくらいになっている。
グリーンドラゴンの角が1本多くなっているのは、帰る途中でまた出くわしたからだ。こっちの方も、『計算行動・第七技・反撃』で脳天を潰したが、やはり、指を一本犠牲にした。今度は右手の中指だ。おかげで、右手の人差し指と、中指は結構痛い。しかし、所詮『結構』程度だ。粉砕骨折くらい、師匠の『あれ』に比べれば全く問題ない。所詮は『計算行動・第八技』で3、4日くらいで治せる怪我だからな。『あれ』をやられたら二週間はマジで動けないからな。『計算行動・第八技』でいくら回復能力を高くしても二週間は絶対かかるけど、何故か師匠に直してもらえば一瞬なんだよね。あれはどうやってんのだか・・・。
などといつの間にか脱線していた思考をしていると、後ろの人に遠慮がちに声をかけられた。
「あの~、早くしてくれませんか?」
ああ、そうだった。依頼対象のやつを渡さなきゃだったんだ。ちなみに、声をかけてきたのは年上だが、俺がギルドに来た時にいたやつなので、敬語を使われてしまっている。
別にウザイやつ以外は手を出す気はないのだけどね。
「これ、依頼対象ね」
そう言って、左手に持った袋を渡す。それを、受付の人が左手で受け取る。が、15kgのものなんて、片手で持つのは困難だ。
予想通り、体勢を崩してゴブリンの耳とグリーンドラゴンの角を床にぶちまけてしまった。
「ああっ、済みませんっ!!」
俺とか周りの奴らにお辞儀して謝っているが、そんなことよりも早く床に散らばった物を集めて欲しい。じゃないと、集めるのを手伝うふりをしてパクろうとする奴らが出てくるし。
案の定、周りにいた奴等が集めるのを手伝い始めた。そして、ゴブリンの耳のうち、6つを3人の人間に盗られた。それぞれ、二つずつ。
半殺しにしてやろうかね。
そして、次の瞬間、精神的にも物理的にも、俺以外、誰も動けなくなっていた。
『計算行動』のように物理的に可能なことではない。理論上は可能なことを再現する力。
つまり、魔法。
「『関節硬化』ってか?これでそのままの体勢で全く動けなくなったはずだ。さて・・・」
盗ったやつは半殺し、盗ろうとした奴は厳重注意程度にしておいてやるか。
「この中に、ゴブリンの耳を盗ったやつ3人と、盗ろうとしたやつ4人がいるが、その命知らずども7人は、どうされたい?」




