第5楽章〜高鳴る鼓動
「伴奏?俺が?」
さて、この会話の詳細を説明しましょう。
実は僕、昔通っていたフルートの塾、みたいところに行ったんだ。
そうしたら、
『もうすぐコンクールがあるから、とりあえずそれに出てみたら?』
っていわれて、お母さんとかもなぜか賛成しちゃってて・・・・。
それで、いきなりコンクールに出ることになっちゃったんだ。
コンクールでは、必ず伴奏者が必要。
だけどだけど、僕はずっとフルートを吹いていなかったから、伴奏できる人なんて知らない。
そう、委員長以外、思い当たる人物がいないんだ。
そして、裏委員長に頼んでみてるってわけ。
「ダメ?」
「曲によるな。何吹くんだ?」
「テレマンの幻想曲第10番。」
「やだ。」
「へ?」
「俺、テレマン嫌いなんだよ。」
「どうして?」
「どうしても。」
委員長は言い切った。そんなに、嫌いなのかなぁ。
当時は、バッハよりも人気だったって言う人なのに。
「じゃあ、なんだったら弾いてくれる?」
「・・・・・『アンデルセン〜常動曲 フルートとピアノのためのカプリース』」
「む、む、む、無理だよっ!!あんな難しい曲、弾けるわけない!」
「それ以外、俺は弾かねぇよ。」
「なんで!?」
「っていうか、弾く前から無理とか言うな。ほら、そこに楽譜あるし、譜読みくらいしてみろよ。」
バサッ、と目の前におかれて、とりあえず譜面を見てみると・・・・
(う、うわぁ・・・・)
目の前に広がる音符の羅列・・・・見ているだけで目が回りそうなくらい。
絶対に弾けないと思う・・・・ただでさえ、全然吹いてなかったし。
「さ、いってみるか。」
腕を慣らし始めた委員長。
「む、無理だってぇ・・・・」
「ものは試しだ。な?」
にこっと笑いかけられて、僕は反射的に顔を赤く染めた。
委員長って、女の子にもてるだろうなぁ・・・すっごいきれいな顔してるし。髪の毛もさっらさら。
羨ましい限りです・・・まったくもう。
僕と委員長は、息を吸うタイミングにあわせて、演奏し始めた。
僕は、途中で混乱し始めて、所々音を外したりして、ほんっと、ボロボロだったんだけど、委員長は全然楽勝って顔で弾いている。
しかも、パーフェクト。
***
「お前、本当に何年も吹いてなかったんだよな?」
「う、うん・・・・。」
「それにしては、妙に上手いな。天才、ってやつか?」
「そ、それは委員長のことでしょ!」
「どっちのだか。」
委員長は、どれだけ勉強しているのかはわからないけどすごく頭もいい。
逆に裏になると、勉強はどうだか分からないけど、音楽センスとルックスはずば抜けている。
どっちも、僕にはかけている部分だ。
「はぁ、委員長が羨ましいなぁ。」
「俺だって、お前が羨ましいよ。」
「どうして?僕が持ってないもの、全部持ってるじゃん。」
「この体質、どうにかして欲しいもんだぜ?一つの体に2つの心。何て厄介なんだ。」
「そっか・・・そうだよね。」
僕がすっと視線を下に向けると、委員長は僕の額をつんとつついて、問う。
「お前は、どうしてこんな俺を羨ましがるんだ?」
「そりゃあ、頭もいいし、ピアノもうまい。そんでもってルックスもいいし。」
「お前だって可愛いだろ。」
「僕はカッコイイって言われたいの!」
すると、高い身長を少しかがめて、僕の額に、キスをした。
「な、な、なっ・・・・・・・・!」
「お前は充分、かっこいいよ。」
そのままパタンと音楽室を出て行った委員長の背中を見ながら、僕は呆然と立っていた。
「い、今の・・・・・・夢?ザッツ、ア、ドリーム?」
僕の鼓動は、ひどく高鳴っていた。




