第2楽章〜ピアノの『朝』
・・・放課後・・・
僕は、委員長に言われたとおりに、音楽室に来ていた。
これは内緒だけど、実はフルートも持ってきてるんだ。
小学校の時のだから、少し小さいけど。
「すみません、お待たせしましたか?」
「ううん。そんなに待ってないよ。それに、委員長、委員会でしょ?」
「でも、呼び出したのは僕ですから。」
「気にしないでいいって。」
委員長は、ほんとに些細なことでも、すっごい謝ってくるんだ。
そりゃもう、びっくりするくらい。
「それで、用事って何?」
「僕、ピアノ全然上手く弾けなくて・・・アドバイスを頂けないかと。」
「え?すごい上手いじゃん。僕なんかがアドバイスなんて出来ないよ。」
「とりあえず、聞いてみてください。」
そういって、委員長はグリーグ作曲の『朝』を弾き始めた。
「どうでしょう。」
「どうでしょうって言われてもなぁ。」
コメントの仕様がないよ・・・。
だって、こういっちゃ悪いけど、ほんとに・・・・下手なんだ。
和音も少し違うし、リズム感も悪い。
僕のフルートの方が、もう少し上手いと思う。
「委員長、この前は・・・もうちょっとうまくなかった?」
「ですよね・・・昔からそうなんです。」
「へ?」
意味がわからなくて、僕は変な声を出してしまった。
っていうか・・・昔からって・・・何?
「二重人格なんです。」
「にじゅうじんかく?」
「はい。眼鏡を外すと、性格も技能も全く反対になってしまって。」
「へ〜そうなんだ〜。ね、外してみて!」
「だ、ダメです!」
「何で?」
「山下君に何かしてしまうかもしれないので・・・・」
「何かって?いいじゃん、外しちゃえ!」
僕は半ば無理矢理委員長の眼鏡を外した。
すると、委員長はいきなり髪型をバサッと崩して、椅子に腰掛けた。
そして、ピアノを弾き始めた。
・・・かぁっこいい・・・・・。
弾き終わった委員長は、ふぅっと息をついて、僕をぎろっと睨んだ。
めがね外した方が、よっぽどもてると思うんだけどな。
「おい、お前。」
「な、何!?」
「カバンの中に入ってるモンは、何だ?」
「え?教科書とノートと・・・・」
「んなこと聞いてんじゃねえよ。楽器、入ってんだろ?」
「な、何で分かったの!?」
「バーカ、勘だ。」
え?勘?勘ですか?っていうかそれで当てるってのも、すごくない!?
な、何なんですか?この人。いきなりかっこよくなっちゃったりして。
「ふ、フルート・・・・」
「フルートか・・・お前、『朝』、吹けるか?」
「ん、まぁ、少しは。」
「よし。俺に合わせて吹け。」
「な、な、な、何で!?」
「面白そうだからに決まってんだろ?」
委員長(裏?)に合わせるのは、結構大変だった。
プロに勝るとも劣らない実力のピアノと、何年間も吹いていなかったフルート。
僕はため息しか出なかった。
「お前、いい音を吹く。」
「全然、ダメダメだよ。」
「そういうことじゃねえよ。確かにお前は練習不足で、音もたじたじだ。だがな、音は澄んでいた。音楽に一番大切なのは、そういうことだろ?」
なんだか僕はその言葉が凄く嬉しかったんだ。
もう一度・・・フルートを吹こうかと僕を彷彿とさせてくれた。




