毎日異世界召喚拒否してた俺、今回だけは期待を込めて応じてみました。
俺には悩みがある。
それは毎日のように異世界召喚されることだ。
その度に抵抗し事なきを得ている。
もう面倒くさくなってきたし召喚されるのもいいかと思ってる。
俺には普通の人にはない力がありそれを隠して生きている。
力とは超能力サイコキネシスだ。
わざわざ手足を動かさずとも着替え、食事、その他諸々なんでもできる。
楽し放題なのだ。
でも一般の人々にバレると大騒ぎになるから隠してる。
しかし異世界に行けばそれもしなくていいかもしれない(保証はないけど)。
だって異世界といえば魔法だろ。
それが日常に溶け込んでいるような世界でサイコキネシスなんて目立たないだろう。
まぁこんなに俺のことを欲しているんだ。
勇者だとか言ってさぞちやほやされるだろう。
そんな甘い妄想が脳裏をちらつく。
というわけで今日から俺は異世界デビューすることにする。
そろそろ召喚の時間だ。
今日はされるがままに身を任せよう。
白い輝きと共に魔法陣が足元へと出現する。
いつもならばサイコキネシスで自分の体を空間に固定することで抵抗しているが、今日でそれもおしまいだ。
光が俺の全身を包み込む。
すると地面に穴が開いたかのように魔法陣に吸い込まれていった。
宇宙を彷彿とさせる空間をしばらく彷徨った後に遂にたどり着いた。
召喚場所はRPGゲームに出てくるような内装の城の中だった。
王と大臣?、召喚士?そして兵士らしき人達が俺のことを丸い目をして見つめていた。
俺は状況が分からないのでただボーっとしていた。
「やった。やっとだ!やりました王様」
召喚士らしき男が喜びの声を上げる。
「こ、これは現実か?」
王が目を何度もこすり確認をする。
「ああ、長かった。何度も何度も何度も拒否し続けられ、このまま一生召喚できないのではと思っていました」
そういって召喚士が感傷に浸り始めた。
「おい、お前らボーっとしてないでそのものを捕らえよ」
王は兵士たちに命令を下す。
え?
俺は事態を飲み込めず兵士たちにされるがままに縄に縛られる。
「そのものを魔王様に捧げよ」
魔王?捧げる?
俺は生贄ってことか?
勇者じゃないのか?
「召喚士よよくやった。これでこの国は滅亡を免れた。お前には褒美として一生暮らせるだけの金銀財宝をくれてやろう」
俺の命と引き換えに国を守る?
ごもっともな理由だ。
だが相手が悪かったな。
俺は煮えたぎる怒りを抑えながら兵士たちに連れられる。
「お前には悪いが魔王の生贄になってもらう」
兵士のリーダー格のような男が深々と頭を下げる。
だがそんな謝罪じゃ俺の怒りは収まらない。
「何で俺なんだ?」
一応疑問に思ったことを聞いておこう。
「魔王様は力のあるものをご所望だ。そこで異世界から力のあるお前が生贄として選定された。国一番の召喚士の召喚を何度も払いのけるその実力。魔王様にも満足いただけるだろう。だが安心しろ。お前は死ぬのではない。魔王様の力の一部になるのだ」
リーダーは説明と共に慰みの言葉をかけてくる。
俺はそれを無視して歩み続けた。
そして時は来た。
「さあ、ここが魔王様のいらっしゃる間だ。間違って吸収されてしまうと困るから我々はここまでにする。お前ひとりで入れ」
兵士たちが大きな扉を開き、俺の背中を押した。
「では、さらばだ」
扉は閉められ、俺は暗闇の空間に放り出された。
縄がきつい。ほどくか。
「貴様が我を満たす生贄か、確かに不思議な力を持っているようだな。今の見ていたぞ。手を触れることなく縄をほどいた」
魔王のものと思われる不快な声が耳をなでる。
「悪いけど。俺は生贄になんかなる気はないよ」
「そんな口きいてられるのは今の一瞬だけだ!」
魔王の触手のようなものが何本も俺めがけて空を走ってきた。
超能力者の俺にそんなものは当たるわけない。
サイコキネシス。
魔王の触手は空中でビタリと静止する。
「な、なんだ。身体が動かん」
魔王は戸惑いの声を上げる。
「サイコキネシスだ。覚えておけ。とはいっても短い記憶になるだろうがな」
「なんだ?サイコー死ね死す?」
それが魔王の最期の言葉だった。
俺は魔王の体をぞうきんを絞るように何重にも捻り上げた。
体液が周囲に飛散し激臭が立ち込める。
「臭いな。早く次行こ」
俺はゆっくりとさっき来た道を戻り王の元を目指す。
途中国の兵士らしき者たちの襲撃を食らったがサイコキネシスで動きを止めそのままにした。
今は彼らに恨みはない。
無駄に荘厳な装飾の施された階段を上り王の元へと迫る。
「これで一生安泰だ!あんなチンチクリン一人召喚するだけでこんだけの金が手に入るなんて俺はなんてついてるんだ」
あれはさっきの召喚士。
チンチクリンだって?
見逃してやろうと思っていたが今の発言はアウトだ。
奴の首を180度捻る。
鈍い音を立てながら召喚士は階段を転げ落ちていった。
階段を上りきる。
この扉を開けば奴がいるはずだ。
ゆっくりと扉を開く。
「これからパレードじゃ。我を国を救った英雄として称えるためのな!」
「異世界から生贄を召喚するというお考え、王様だからこそ思いついた名案です!」
こいつら何を浮かれているんだ?
俺にも気づかずに。
何がパレードだ。
お前らをこれから待ってるのは血祭だ。
俺の怒りが一段とヒートアップする。
「すげー盛り上がってんじゃん。俺も話に混ぜてよ」
「な、何故貴様がここに!魔王の生贄となったはずじゃあ......」
王は驚き腰を抜かす。
「何でだろうな?いや、冥途の土産に教えてやるよ。魔王は俺が倒した」
「な、何を言っておる。そんなわけ...あり得ない!この国の全戦力を投入しても勝てなかったんだ。それを貴様のような生贄一人で!」
「お前は俺の使い方を間違えた。生贄じゃなくて勇者として扱えばよかったんだ。そうすればもう少し長生きできたろうに。じゃあな」
俺は王と大臣を左右に真っ二つに引き裂いた。
ああ、一線を超えてしまったな。
まあ異世界だし大丈夫だろ。
こんな世界なら元の世界の方がましだ。
戻り方を何とか探そう。
俺は今まで超能力を隠しながら普通に生きることを目的として人生を送ってきた。
それはそれは彩のないつまらない人生だった。
だがこれからの人生は違う。
目的は元の世界に戻る方法を探すことだ。
子供の時やったゲームのようでワクワクするではないか。
これからどんな魔法、魔物等に出くわすのだろうか?
俺はそんな期待に満ちた妄想を膨らませながら城を後にした。




