表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/93

ざまぁ②ソーシャルハッキングと猫動画

時は、ほんの少しだけ遡る。


黒田が通話のために、席を離れている間も、オリガミからのクラッキング進行状況の通知が次々と届いてきていた。


もちろん、音漏れしないタイプの骨伝導イヤホンを通して聞いているので、隣の早瀬さんには伝わっていない。通常は多少の音漏れはするらしいが、オリガミ端末からの指向性音波キャンセリング技術により、静かな環境でも、周りにオリガミの声は聞こえないらしい。


『調査部門保有のスマートフォンに、ドールハウスのアプリのインストールを確認しました。やはりドールハウスの調査を行っていたようですね。全システム把握の手間が省けそうです。』


『フィッシングサイトの構築を完了。フェイク動画の構築を完了。』


『社員紹介動画より調査担当者の擬似音声を構築しました。黒田に、ソーシャルハッキングを試みます。』


ソーシャルハッキングとは、人間の心理や行動の隙を突いて、情報や権限を不正に取得する手法のことだ。例えば、信頼できる人物を装ってパスワードを聞き出したり、偽の連絡やサイトで相手を騙して情報を入力させたりする。オリガミが得意とする手法だ。アナログハックと言うこともあるらしい。


『担当者の声で、黒田にコールします。以降、私による担当者擬似音声と黒田との会話です。』


――『ドールハウス、相当あくどいことをやってたみたいです。藤崎社長が、女性に暴力を振るっている動画を手に入れました。動画リンクを送っておきましたので、ご確認ください。社長のアカウントでしか開けないように、セキュリティをかけてますので。』


――『ははっ。面白いことになりそうだな。ありがとう、最高の報告だ。ボーナス期待しとけよ』


『黒田との通話を終了しました。現在、黒田がフィッシングサイトにアクセスし、パスワードを入力しています……入力完了。黒田のアカウントのパスワードを取得しました。本来であれば、黒田もパスワード入力には警戒したかもしれません。成功したのは、お兄様が彼の冷静さを崩してくださったおかげでしょう。ありがとうございます。』


『フェイク動画を再生します……黒田の視聴を確認。サーバー上のフェイク動画を、心理的リラクゼーション効果を有する映像作品へと置き換えます。』


『取得した黒田のアカウントのパスワードを使い、端末への侵入を試みます……』


『黒田の端末への侵入に成功しました。』


『端末内情報をサーチします……黒田による暴力行為の動画を発見しました。』


『お兄様。暴力行為の動画はスマートフォンに送信しておきます。交渉にお使い下さい。』


『黒田のアカウントには、会社の全情報の閲覧権限があるようですね。全社情報のダウンロードを開始。以降、バックグラウンドで進行します。』


うーん。やっぱり、オリガミすごすぎ。相手が可哀想になるレベルだ。


※※※


今、俺の目の前には黒田がいる。ニコニコして自信にあふれた姿だ、哀れな……オリガミを敵に回すなんて、本当についてないやつだ……


黒田が口を開く。


「藤崎社長?実はですね、先程すごく面白い動画を手に入れたんですよ?ご覧になりません?」


ああ。オリガミが見せたフェイク動画か。「心理的リラクゼーション効果を有する映像作品」と置き換えたと言ってたな。どんな動画と置き換えたのかな?


俺は何も知らないような顔を作り、黒田に返答する。


「え?動画ですか?」


「くっくっく。クソ面白い動画だよ。特に主演に注目してみろよ?バカみたいな顔してるぜ?」


本性?をあらわして、俺にそう言う黒田。


黒田は、動画を再生させ、スッとそれを差し出してくる。そして、その動画を見た瞬間、俺の体に電流が走った!


オ、オリガミ……どこでこんな動画見つけてきやがった……。今まで見てきたものの中でも、最上級にやばいブツじゃないか……。俺の動画閲覧履歴を完全に把握しているだけはあるな……。エロだけではなく、こっちの嗜好まで完全に把握してたか……。


「ど、どこで……こんなものを……な、な、なんて……なんて……」


俺は心底驚嘆して言った。オリガミを称えたい。


「なんて可愛らしい、にゃんこ動画なんだ!」


猫、最高!


※※※


俺がそう叫ぶと、黒田はポカンとした表情となった。


そして、猫の動画が映し出された、自分のスマホを俺から奪い取る。あああ……もうちょっと見ていたかった……


黒田は自身のスマホに映し出されている猫の動画を見て呆然としていた。再生を終了して、もう一度、動画を再生させたが、映し出されるのは猫の可愛らしい動画だけだった。


さて、可愛すぎる猫の動画を見たせいで、テンションが上がってしまった。ここで、黒田の混乱を広げるために、思いつくまま猫トークをすることにした。


「黒田社長、趣味合いますね!俺もネコ派なんですよ!いやあ、猫って本当に癒されますよね。あのふわふわの毛並み、つぶらな瞳、気まぐれなのにたまに甘えてくるところがたまらなく可愛いんです。祖父母の家にも三匹いるんですけど、毎日写真送ってもらってるんですよ。猫の動画も毎晩寝る前に見てますし、最近は肉球のぷにぷに感を再現したグッズまで集めてるんです。黒田社長も、猫のどんなところが好きなんですか?」


黒田は俺の問いに答えられない。なにが起きているのか理解できていないみたいだった。頭が上手く働いていないようだ。まあ、無理もない。


「な、なんで?」


お?あまりの予想外の展開に、精神的に無防備になったな?じゃあ、とどめといきますか。


俺はニコニコしながら黒田に言った。


「あ、そうそう。面白い動画と言えば俺も持ってるんですよ?見ます?」


そして、オリガミから送られてきた動画を再生して、黒田に見せた。


※※※


動画には、黒田が男を殴ったり蹴ったりしている様子が映っていた。


『おらっ!俺の言うことだけを聞いてれば、いいんだよ!』


黒田は怒鳴りながら、倒れている男を何度も蹴っていた。男は「すみません、もうしません……」と謝っていたが、黒田はやめなかった。


この暴力を受けていた男が何をやったのかはわからないが……やりすぎだ。


俺の横に立つ早瀬さんも、驚いたようにスマホの動画を見ている。そして、俺の顔と交互に見やった。ふっふっふ。俺はこういうことができるのだよ。驚いたか!全部オリガミの力だけどな!


※※※


しかし……黒田は、なんのためにこんな動画保存してたんだ?意味がわからない。自分の犯罪の証拠じゃないか?そんなもの残しておく、意味があるのか?サイコパスなのか?


俺の心を読んだように、オリガミの声が、骨伝導スピーカーより響く。


『見せしめ動画を作ろうとしたのではないかと推測されます。黒田に逆らうとこんな風になるぞと脅すための動画を。』


なるほどな。バカな動画を残していたものだ。こんな動画が出回ったら、黒田は警察に逮捕されるだろうし、会社の信頼もなくなる。おそらく倒産してしまうだろう。


まあ、これで勝負は決した。もう黒田は俺に逆らえない。

猫動画と赤ちゃん動画だけは見てしまうという方は、【ブックマーク】と【下の評価 ★★★★★】をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ