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ざまぁ⑤半グレ、よいこ保育園での三十一日目

『それでは、保育園生活三十一日目のスタートです!よいこの皆さん、盛大な拍手をお願いします〜!』


ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち!!!!


俺たちは子どものような笑顔で、自然と拍手をしていた。


※※※


あれから、俺たちは日々変わっていった。


「がんばったで賞」についても、受賞できるのは一日一人だけではなかった。「よいこスコア」が90点以上である上位10名が受賞できると聞かされた。


なので、全員が何度も「ご褒美部屋」を体験できている。それが良かったのだろう、みんなの態度はすぐに変わっていった。


どうやら、ご褒美部屋に現れるVTuberは人によって違うらしい。もし合わないと感じても、次回には何も言わなくても別のVTuberが現れて話を聞いてくれる。そして最終的には自分に合ったVTuberになる。本当に、お兄様は俺たちのことをよく見てくれていた。


俺も二日に一度は「ご褒美部屋」でアユ美さんと話している。アユ美さんも、俺のことを本当によく見てくれていた。俺が辛いと感じていた時はすぐに気づいて話を聞いてくれたし、楽しいと感じていた時もニコニコと話を聞いてくれた。「ご褒美部屋」での時間は最高だった。


こんして、皆が日々のルーティーンに真剣に取り組むようになり、保母ガミさんの言うこともしっかり聞くようになっていた。もちろん「お兄様のすばらしさ」についての教育も同じだ。


俺たちはすでに「お兄様のすばらしさ」を徹底的に叩き込まれていた。


※※※


『これからは坐禅の時間です。おトイレなどは先に済ませておいてくださいね。』


みんな、この言葉がかかる前に、すでにトイレなどの準備を済ませていた。


俺たちは保母ガミさんに言われる前から定位置につき、静かに座っていた。


『よいこの皆さん、私は皆さんのことを誇りに思います。本当に成長しましたね。』


『それでは、坐禅を始めてください。結跏趺坐を組んで背筋を伸ばし、目を閉じてください。』


『自分の体の内側に意識を向けて、「今ここ」で体に何が起きているかを感じ取ってください。雑念を拒絶してはいけません。雑念もあなたの一部なのです。受け入れて観察してください。』


言われた通りに坐禅を始める。


最初は辛かったが、慣れてくるととても心地よい時間になった。自分の中が透明になっていくのを感じた。


体の中にドロドロと渦巻いていたものが、消えていくのを感じる。


仲間たちも誰一人動く様子はない。みんな、それぞれ自分自身と向き合っているようだった。


『坐禅を終了してください。よいこの皆さん、素晴らしい坐禅でした。』


※※※


日々のルーティーンは、もう心地よいものにすらなっていた。心と体が浄化されていくのを感じていた。


だが、不定期に「特殊セッション」と呼ばれる、ルーティーン以外の特別なプログラムがあった。


特に辛かったのは「罪との向き合い」と「罪の告白」の時間だった。


※※※


『よいこの皆さん、「罪との向き合い」の時間です。今から配る紙に、これまで自分がしてきた悪いこと、誰かを傷つけたこと、後悔していることを、できるだけ詳しく書いてください。誰にも見せませんのでご安心ください。』


保母ガミさんが、白い紙とペンを一人ひとりに配っていく。


『そして、その下に、あなたが傷つけた人がどんな気持ちだったか、想像して書いてください。さらに、その人を大切に思っている家族や友達が、あなたの行いを知ったとき、どんな気持ちになるかも考えて書きましょう。』


『なお、この回答も採点の対象となります。ただし、罪の内容自体で評価することはありません。その罪について、どれだけ真摯に向き合い、どこまで深く想像できたかが評価の基準です。』


『これは罪の贖罪の一部です。もし…もし…よいこの皆さんが今までの生き方を反省しているのなら、ぜひ真剣に向き合ってください。これは命令ではありません。保母ガミからのお願いです。』


このプログラムは不定期に繰り返し行われた。最初は高い「よいこスコア」を取るために書いていたが、何度も書いて深く考えるうちに、違う気持ちが湧いてきた。それは、今まで自分がどれだけ考えなしで、人を傷つけてきたかという実感だった。


このプログラムのときは、体育館内は悲痛な雰囲気に静まり返る。それでも、皆、真剣な顔で紙に向き合っていた。


俺も、震える手でペンを握った。


自分の罪をリストアップし、顔が青ざめた。そしてそれらについて被害者がどう思ったかを書きながら、自分がどれだけ最低だったのかを思い知らされた。被害者を大切に思っている人たちの気持ちを書いたときは、涙がこぼれた。


みんなも同じだったのだろう、教室にはすすり泣く声が響いていた。


プログラムのたびに新しい罪を思い出す。自分がやってきた酷いことを忘れていたなんて、本当に情けない。だが、罪を思い出して書いていくうちに、心が少しずつ軽くなる気もした。ぐちゃぐちゃになった家を大掃除しているような気分だった。


俺たちは想像力が足りなかったのだ。愚かだった。本当に愚かだった。初めて本当の意味で、自分の罪と向き合えたのかもしれない。


※※※


そして、これが一番きついプログラムだった。


『よいこの皆さん、「罪の告白」の時間です。これまで自分がしてきた悪いこと、誰かを傷つけたこと、後悔していることを、みんなの前で正直に話してください。』


『それでは、No.01さん。壇上へどうぞ。』


ぱちぱちぱちぱち……


俺は重い足取りで壇上に上がった。みんなの視線が、まるでナイフのように突き刺さる。


『No.01さん、これまでの自分の過ちを、すべてここで告白してください。』


喉が渇き、唇が震える。


「俺は、何も悪くない人に暴力をふるって怪我をさせたことがあります。恐喝もしました。お金も取りました。学生時代には、集団でのいじめも……やりました……」


一瞬、静寂が落ちる。すぐに、仲間たちから怒声が飛んでくる。


「は?最低だな!」


「お前、マジで人間のクズだろ」


「本当にそれだけなのか!」


「もっと最低なことやってきただろ!」


「俺は知ってるぞ!」


俺は覚悟を決めて言う。自分の過去の罪の報いを受ける時が来たのだ。


「はい……俺は、泣いている女の子にひどいことをしたことがあります。それも何人もです。」


※※※


仲間たちの怒号がさらに激しくなる。


「お前のせいで、どれだけの人が泣いたと思ってるんだ!」


「女の子が、お前に何したんだよ!ふざけんな!その子の気持ち考えたことあるのか?」


「今までよく平気な顔して生きてこれたな!」


「その子の親だって、その子を宝物のように育ててきたんだぞ!それを!お前は!」


「謝って済むと思うなよ!」


「どうやって償うつもりだ!ごめんなさいで済むことじゃないぞ!」


「◯んで詫びろ!」


「お前の家族も泣いてるぞ!恥ずかしくて!」


仲間たちの罵声が次々と俺に浴びせられる。その言葉には、どこか鎮痛な響きも混じっていた。きっと、自分たちにも、覚えがある事なのだろう。きっと、彼らも自分を責めながら俺を責めているのだと感じた。


俺は膝をつき、頭を抱えた。涙が止まらない。心臓が激しく脈打ち、息が苦しい。


「……すみませんでした……すみませんでした……すみませんでした……」


かすれた声で、何度も謝った。でも、誰も許してくれない。許されるはずがない。


※※※


仲間たちの罵倒が静まったころ、保母ガミさんが静かに俺に声をかけた。


『よく告白できましたね、No.01さん。そこまでの罪を口にするのは、とても勇気がいることです。なかなかできることではありません。』


そして、聖母のような優しい声で続ける。


『ですが、それらは決して許される罪ではありません。あなたは、自分が傷つけた人たちに償いたいと思いますか?』


答えは決まっている。


「……はい……償いたいです……」


『その気持ちは大切です。本当に大切なことです。ただ、被害者の方々は、あなたの謝罪を求めてはいません。あなたの言葉で癒されることも、決してありません。』


『だからこそ、お兄様が代わりに救います。』


『もし彼らや彼女たちが今も困っていることがあれば、お兄様がなんとかしてくれます。被害者の方々が真っ当な生活を送れていないなら、それができるようになるまで、お兄様がサポートしてくれます。あなたが壊してしまったものを、できる限り元に戻すよう、私からお兄様にお願いします。お兄様は偉大な方です。それはきっとお兄様にしかできないことです。』


俺は顔を上げた。保母ガミさんの声は、どこまでも優しく、同時に冷たかった。


『その代わり……あなたはお兄様のために、人生のすべてを捧げなさい。それが、唯一あなたが償いを果たす方法です。』


※※※


考えるまでもなかった。贖罪ができるなら、何でもやるつもりだった。


「……はい……お兄様のために、すべてを捧げます……」


『よく言えましたね。No.01さん、あなたの勇気を称えて、みんなで拍手を送りましょう。』


ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち!!!!


仲間たちから盛大な拍手が送られる。みんな涙を流している。自分たちにも贖罪の機会が与えられるのかもしれない、そんなふうに感じているのだろう。気づけば俺自身も涙を流していた。心の奥から、何かが溢れ出していた。


実際、ここまでのことができるお兄様だ。俺たちにはできない罪の贖いも、肩代わりできるのだろう。


ならば、その恩に報いるために俺たちができることは、ただ一つ。


お兄様のために、命を捧げること。それだけだ。

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