ざまぁ①おっおママ爆誕
「ボス!なんであんな動画あげたんですか!」
朝から手下がうるさい。
「うるせぇな……昨日は女と遊んでたんだよ。もう少し寝かせろっての。」
「そんな場合じゃないですって!ボスの動画、今ネットでめちゃくちゃバズってますよ!しかも悪い意味で!」
「悪い意味?どういうことだ?」
昨日アップしたのは、逃げた女のエロ動画のはずだ。確かにインパクトはあるが、そこまで話題になるようなものじゃない。
「とにかく見てください!本当にヤバいんです!」
「……朝から大げさなやつだ」
※※※
手下が差し出してきたスマホの画面を覗き込む。
そこに映っていたのは、俺が自慰行為をしている動画だった。ただの自慰動画ではない。画面の中の俺は、
『おっおっおっ!ママっ!ママっ!おっおっおっ!ママぁ!』
と、信じられない言葉を叫びながら行為に及んでいる。
しかも、映像は複数のカメラアングルからテンポよく切り替わり、編集も妙に凝っている。まるでプロの手による悪意ある作品だ。
「な、なんだこれ……?こんな動画をアップした覚えなんてないぞ?」
いや、そもそもこんな風に叫びながら自慰した記憶もない。確かに女の都合がつかない時に、ここでマスかいた事ぐらいはある。
しかし、
『おっおっおっ!ママっ!ママっ!』
なんて叫んだことは一度もない。生まれてから今まで、そんなセリフを口にした覚えはないし、お袋だって生きてはいるが、上京して十年以上会ってもいない。俺はマザコンでもなんでもない。
だが、ネットに拡散されているその動画には、そんな俺の情けないあえぎ声がはっきりと記録されていた。
※※※
「な、なんなんだよこれ……」
周りの部下の見る目が冷たい。そりゃそうだろう。こんな情けない姿を見せつけられたら、誰だって呆れるに決まってる。
こりゃ、舐める舐められるっていうレベルじゃない。完全に笑い者だ。
映像自体はどう見ても本物っぽい。きっと、ここで一人でやってた時に盗撮されたんだろう。ただ、音声だけは明らかに違う。
……まさか、これが噂のディープフェイクってやつか!
「おい!お前ら!これはフェイクだ!騙されんじゃねーぞ!」
必死に声を張り上げて否定する。
だが、手下の一人が冷めた口調で返す。
「いや、もうフェイクかどうかなんて関係ないですよ。この動画、ネット中に拡散されてますから。それが問題なんです」
「か、拡散?」
「ええ、もうそりゃ国内のネット中に。だからバズってるって言ったじゃないですか。ボス、通称『おっおママ』らしいですよ。ほら、掲示板にスレッドもたってますよ」
手下たちは半ば呆れ、半ば面白がっているような顔で俺を見ていた。
※※※
──【おっおっおっ!】伝説の「おっおママ」動画を語る【ママっ!】
【1】名前:名無しの手下
おまえら、「おっおママ」ってしってるか?
わらえるぞ。みてみ?
ttp://***tube.com/watch?v=***
【5】名前:名無しの手下
>>1 これ家族にバレたら地獄すぎるw
【12】名前:名無しのネット民
おっおママ、トレンド入りしてて草
【15】名前:名無しのネット民
YuuTubeの切り抜き見たわw
大拡散してるなw
【27】名前:名無しの兄
なんだこれ?ディープフェイクってやつ?
【34】名前:名無しの手下
>27 ディープフェイクかわからんらしいぞ
専門家にいわせると、ディープフェイクなら無茶苦茶出来が良いらしい
【41】名前:名無しの手下
どっちにしろ終わってるw
もう「おっおママ」って一生言われるやつw
【63】名前:名無しの兄
本人降臨まだ?
【73】名前:名無しの手下
おっおママ、もう伝説級だろw
【91】名前:名無しのネット民
これ、ホワイトプロダクションの代表じゃね?
【95】名前:名無しのネット民
>>91 げ?マジじゃん
ホワイトプロダクション終わったな
【101】名前:名無しのネット民
>>95 あいつかあ。女癖悪いって有名だったな。
だれかの復讐かもなw
【105】名前:名無しのネット民
>>101 復讐大成功やんww
【108】名前:名無しの兄
おっおママグッズ出たら買うわw
【115】名前:名無しのネット民
>>108 いらねぇwww
【132】名前:名無しの兄
おっおママ、伝説入りおめでとう!
※※※
おかしい……どうしてこんなことになってるんだ?
確かに昨日、逃げ出した女の動画をアップロードしたはずだった。
イラつきながら、自分の手元にあるオリジナルの動画ファイルを確認する。
冒頭の数秒、女が映る前までは間違いなく記憶通りの映像だ。だが、その後が違う。なぜか俺の自慰動画にすり替わっている。
しかも音声は『ママー!おっおっおっ!』と、あの情けない声に差し替えられていた。
俺は、自分の手で、自分の情けない動画をアップロードしたわけだ。なんてこった……。
※※※
クソッ、完全に嵌められた……!
動画がすり替えられてただと?一体誰がこんなことを?このパソコンのある部屋に入れるのは、俺か手下たちしかいない。ということは、手下の誰かか?
「おい!このパソコン、最近触ったやつは誰だ?女の動画が入れ替えられてるぞ!絶対に許さねぇからな!」
「いや、俺たち触ってないっすよ。それにパスワードも知りませんし……」
そうだった。そもそも俺は手下どもを信用していない。パソコンのパスワードなんて教えるはずがない。
※※※
じゃあ何だよ、外部からハッカーでも侵入したってのか?そんな映画みたいな話、現実に起きるもんなのかよ?
高橋か?女の動画を消すついでに、こんな仕掛けを残していったのか?あいつ、こういうの得意だったよな。しかも東応大生だ。十分あり得る。
「おい!高橋だ!あいつが犯人だ!今すぐ探し出せ!」
だが、命じても手下たちは誰一人動かない。中にはニヤニヤしているやつまでいる。
「その命令、俺たちに何のメリットがあるんですかねぇ、おっおママさん?」
その言葉に苛立ちを隠さず、声を低くして言い放つ。
「テメェら、今までどれだけ美味しい思いさせてやったと思ってんだ?」
だが手下の一人は気にした様子もなく、舐めた口をきてきた。
「そりゃ、今までは良かったですよ。でも、これからどうするんです?金も女も、もう集められないんじゃないですか?タダ働きはごめんですよ」
くそっ……殴り飛ばしてやりたいが、今ここで暴れても逆効果だ。
「……ちっ。じゃあ高橋を見つけてきたやつに100万円やる」
「その程度ですか?おっおママさん、それが限界ですか?」
「足元見やがって……300万円だ。高橋には、絶対にけじめをつけてやる」
「そうこなくっちゃ。じゃあ行ってきますね。おっおママさん?」
「おう、行ってこい。大口叩いたんだ、ちゃんと結果出せよ!」
再び力を取り戻したら、絶対にこいつらを、ぶっ殺してやる。だが、今はまだその時じゃない。今は我慢のときだ。
※※※
ネットに流出した動画はフェイクだ。
ただし、フェイクなのは音声だけで、映像の俺の自慰行為は紛れもなく本物だ。もしもこのまま世間に舐められたままなら、俺は完全に終わる。
この状況をひっくり返すのは、難しいだろう。時間が経てば多少は風化するかもしれないが、それまでに俺の評判は地に落ちているはずだ。
※※※
YuuTubeでは切り抜き動画が溢れ、すっかりミーム扱いだ。くそっ、XXのトレンドにも『おっおママ』がランクインしてやがる。どいつもこいつも暇人ばかりか!
ホワイトプロダクションもこのまま終わりか?……いや、俺が裏に回れば、まだやりようはある。
しかし、手下どもに舐められっぱなしでは済まされない。このままでは会社ごと乗っ取られる危険すらある。あいつらは俺のやり口も過去も全部知っているからな……。
※※※
何か、でかいことやる必要がある……「やっぱりボスについていけば間違いない」と手下たちに思わせるような、圧倒的な結果を見せつける必要がある。
そんなことを考えていた矢先、スマホに通知が届いた。ドールハウスのアプリからだ。
※※※
"このたび、弊社は本社機能を新社屋へと移転いたしました。
新社屋は自然豊かで静かな環境に位置し、所属VTuberの皆様が快適に配信活動を行えるよう、最先端の配信設備や広々としたダンススタジオ、充実した寮施設を完備しております。さらに、東京へのアクセスも非常に良好です。
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スポンサーの皆様には、近日中に新施設の見学イベントをご案内予定です。詳細な日時につきましては、追ってご連絡いたします。"
※※※
これだ……もう、これしか道は残されていない。
『おっおっおっ!ママっ!ママっ!おっおっおっ!ママぁ!おっおっおっ!ママっ!ママっ!おっおっおっ!ママぁ!』
自分の情けない姿が延々と流れる動画をBGMに、俺は覚悟を決めた。
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