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終わりの始まり(半グレ視点)

「くそっ、高橋の野郎、逃げやがった!」


俺は事務所で怒鳴り声を上げた。


事務所で使ってやってた。アイツの彼女のVTuberとも連絡が取れない。一緒に逃げたのだろう。


あいつらの部屋には、盗聴器も仕掛けていたし、逃げ出すような話もなかったはずだ。


ついこの前も「大変だよね。なんとか動画を返してもらえるまで、一緒に頑張ろう」なんて、のんきなことを言っていたくせに。あれは全部演技だったのか?


高橋の彼女、いい女だったのに、結局最初しか抱けなかった。


ヤリすぎてメンタルが壊れたら、せっかくの金づるが台無しになると思って、手を出さずにおいてやったのに。


ちくしょう!こんなことならもっと早く抱いておけばよかった。


VTuberとして売れなくなったときに、好き放題してやろうと思ってたのに。


今回みたいに、売れてる最中に逃げられたら、損失は二倍だ。


歯ぎしりしながら考えた。仕方ない。このまま高橋たちを放置していたら、他の連中にも舐められる。何の得もないが、あの動画をネットに流すしかない。


※※※


これまで何十人も、同じようなことを繰り返してきた。それでうまくいっていた。


人気が出始めた女性配信者に企業案件をちらつかせて近づき、隙を見て抱く。一度抱いて動画を撮ってしまえば、その事が世間にバレると困る連中は、思い通りに動いてくれる。


そうやって、金づる配信者を事務所に引き入れ、金を吸い上げてきた。最高のビジネスモデルだと思っていた。


※※※


もちろん、人気が落ちた配信者にも使い道はある。


長い間、俺の命令に従ってきた人間だ。俺の命令なら何でも聞くようになっている。


たとえ配信で稼げなくなっても、性欲処理係くらいにはなる。そうやって女をたくさん抱いてきた。


落ち目の配信者をリサイクルしてやってるんだ。奴らも幸せだろう。最高の日々だった。


※※※


だが、何十回も抱いていれば、どんな美人でも飽きてくる。


そうなったら手下に回せばいい。手下どもも大喜びだし、忠誠心も上がる。そりゃそうだ。自分じゃ絶対抱けないような女を、俺に従っていれば抱けるんだからな。


そうやって手下を増やし、その力でまた新しい女を手に入れる。ここ数年はそれでうまく回っていた。最強のサイクルだと思っていた。


※※※


しかし、ここ最近は、思い通りに物事が進まなくなってきている。


最初に違和感を覚えたのは、ドールハウス所属のVTuberを狙って、恥ずかしい動画を撮ろうとした時だった。


まずは、株式会社ドールハウスの本籍がある家に出入りしている女をターゲットに選んだ。若い女ならVTuberの誰かだろうと踏んでだ。


そして、適当に闇バイトを雇って拉致させる計画を立てた。


闇バイトたちは俺の素性を全く知らないし、仮に捕まっても俺にまで捜査の手は及ばない。気軽に使い捨てができる、都合のいい連中だった。


※※※


実行日、闇バイト二人は、計画通りに女を拉致することに成功した。


だが、拉致直後、あっさりと捕まってしまったようだった。しかも、動画を撮る前にだ。


「女を確保した」との連絡が入って以降、全く音沙汰がなくなってしまったのだ。焦った俺は、闇バイトたちの自宅や、普段使っている溜まり場にも人を送って探させたが、二人は見つからなかった。


「なんて無能な奴らだ」と最初は苛立った。だが、冷静になって考えてみると、どうもおかしい。


普通なら、警察に捕まった場合はニュースになったり、警察関係者から情報が入ったりするものだ。しかし、今回は警察沙汰になった形跡が一切ない。まるで誘拐事件自体が「なかったこと」になっているような雰囲気すらあった。


さらに調べてみても、闇バイトの二人の足取りは完全に途絶えていた。まるでこの世から消えてしまったかのように。警察の記録にも事件として残っていない。


「一体何が起きているんだ?」俺は混乱した。


ドールハウスの裏には、俺たちが手を出せない、もっとヤバい連中がいるのか?それとも、警察や行政が裏で動いているのか?


何も分からなかった。


※※※


その少し後くらいからだ。どんな配信者に企業案件をちらつかせても、誰も引っかからなくなったのは。


以前なら、例えば十人の女性配信者に「うちの事務所で企業案件を紹介できる」と声をかければ、そのうち一人くらいは「ぜひ話を聞かせてほしい」と食いついてきた。


特に、まだ駆け出しで人気が出始めたばかりの配信者は企業案件に飢えている。だから、警戒心が薄かった。そういう女を狙い、甘い言葉で誘い出して罠にかけてきた。


だが、最近は違う。どんなに「大手企業のタイアップ案件がある」「高額ギャラが出る」といった美味しそうな話を持ちかけても、誰一人として返事をよこさない。メッセージを送っても無視される。下手をすればブロックされる始末だ。


まるで、俺の存在自体が業界でタブーになったかのような扱いだ。


何が起きているのか、まったく理解できなかった。


※※※


そんな時、ずっと無視されていたドールハウスの運営から連絡があったことを思い出した。突然「企業案件に興味がある」とメッセージを返してきたのだ。確か、一週間ほど前の話だ。少し違和感を感じたが、気にしなかった。


俺がターゲットにしていた「アユ美」という人気VTuberは多忙で難しそうだった。しかし、他の所属VTuberなら案件を受けることも検討すると言ってきた。


もう誰でもいいと思い、ドールハウス側が提供してきたアプリの内容を確認しながら、どのVTuberをターゲットにするか選んでいた。


だが、その話もドタバタしている内に立ち消えになってしまった。


※※※


そして今回の「高橋とその彼女のVTuberの突然の失踪」だ。まさに泣きっ面に蜂、踏んだり蹴ったりだった。


立場がどんどん危うくなっていくのを感じて、焦りと苛立ちが募る。だが、ここで手下に舐められるわけにはいかない。威厳を保つためにも、何かしらの行動を起こさなければならない。


※※※


まずは、逃げ出した高橋の女の動画を流出させよう。


俺は、パソコンに保存してあった女の動画ファイルを、海外のアダルト動画サイトにアップロードした。これで少しは溜飲が下がるだろう。そう思っていた。


※※※


これが破滅の始まりになるとは、この時は思いもしなかった。


自分の手でアップロードしたものが何だったのか。知ったのは、その少し後だった。

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