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社長バレ後のクラスメイトたち

ネム誘拐事件の黒幕には、必ず責任を取らせなければならない。


ネムがさらわれたことへの怒りが、どうしても収まらない。このまま放置すれば、またネムや千穂が狙われるかもしれないという不安もある。


しかし、誘拐の実行犯は捕まえたが、肝心の黒幕が誰なのか、まだ特定できていない。


手元にある唯一の手がかりは、誘拐の実行犯が所持していたスマホのデータだけだ。


※※※


『お兄様、解析が完了しました。黒幕は非常に慎重で、通話による指示は一切行われていません。全てのやりとりは匿名性の高いメッセンジャーアプリを通じて行われていました。』


スピーカー越しに、オリガミの落ち着いた声が届く。


『ただ一度だけ、実行犯が「本当に報酬が支払われるのか証拠を見せてほしい」と要求した際、銀行の通帳画像が送信されていました。この画像は既に端末から削除されていましたが、復元に成功しました。』


実行犯も黒幕を完全に信用していたわけではなかったのだろう。報酬の支払いを疑い、証拠を求めたことで、思わぬ証拠が残った形だ。


『さらに、その通帳写真の紙面反射を詳細に解析した結果、撮影者の顔を復元することに、成功しました。』


「か、紙の反射から、撮影者の顔をか?」


「はい。そうです。」


そんなこともできるのか。半端ないな。


『もっとも、この顔が黒幕本人か、あるいは闇バイトの一員かは断定できません。』


つまり、まだ黒幕の正体を特定したとは言い切れないということだ。


「やっぱり、そう簡単にはいかないか……」


思わずため息まじりに呟く。


『お力になれず、申し訳ありません。』


「いやいや、オリガミがいなかったら、そもそもここまで調べることもできなかったよ」


こんなことで、オリガミに謝られると、逆にこちらが申し訳なくなってしまう。


※※※


ネムが誘拐された夜が明け、朝になった。千穂が迎えに来る時間だ。


俺は千穂に、昨夜の出来事をできるだけ曖昧に説明した。警察沙汰になって騒ぎが大きくなるのは避けたかったので、「ちょっとしたトラブルに巻き込まれただけ」とごまかして伝えるにとどめた。


千穂は驚いた様子で、


「ネムちゃん、大丈夫だったの!?」


と心配そうに尋ねてくる。


「今回は無事だったよ。ただ、この家に出入りする人間が狙われてたみたいだから、これからは千穂も一人で出歩かないでくれ。俺が必ず付き添う。できるだけ早く解決するから」


「う、うん……わかった」


千穂は不安げに頷いた。


※※※


その後、千穂は小走りでネムの部屋へ向かった。ネムは爆睡していたらしい。その安らかな寝顔を見て、千穂も少し安心したようで戻ってきた。


ネムを一人で家に残して、本当に大丈夫だろうか?


いや、この家のセキュリティは万全だ。ネムが外に出さない限りは大丈夫なはず。


とはいえ、絶対とは言い切れない。あいつは研究に夢中になると、誘拐されたことすら忘れそうなタイプだ。


千穂は知らないが、家には最強のガードであるオリガミがいる。ネムさえ外に出なければ問題ない。……本当に出なければ、だが。やっぱり心配だ。


俺は千穂に聞こえないようにオリガミに言った。


「オリガミ、今日は絶対にネムを外に出さないでくれ」


骨伝導イヤホン越しに、オリガミがいつもの調子で返事をする。


『承知しました、お兄様。ネムさんは今日は家に閉じ込めておきますね?』


「閉じ込める」はちょっと言い方が悪いが、ネムのためだ。仕方ない。


※※※


心配する千穂の手を引き、眠気と不安を抱えたまま登校する。


千穂がこちらを見て、少し不安そうに言う。


「大丈夫?顔色悪いよ?」


「ああ、ちょっと寝不足でさ。昨夜のこともあるし、疲れも溜まってるみたい」


「学校、休んだほうがいいんじゃない?」


「いや、千穂も家に出入りしてたから心配なんだ。今日はできるだけ一緒にいるよ」


「え?そうなの?嬉しい……えへへ」


この笑顔、守りたい。


※※※


「それに、出席日数もギリギリでさ。これから急に仕事が入るかもしれないし、出られる日はできるだけ休みたくないんだ」


留年だけは絶対に避けたい。もう一度高校三年生をやるのはごめんだ。


早く卒業して、計画に集中したい……それが今の俺の目標だ。


※※※


学校ではすっかり注目の的になっていた。「ドールハウス」の社長が俺だと、例の黒歴史テレビ放送でバレてしまったからだ。別に隠していたつもりはなかったが、こうも一気に広まるとは思わなかった。


教室に入ると、いつも通りザワザワとした空気が流れる。


以前は「犯罪者扱いしちゃったよ、どうしよう……」という微妙な空気だったのが、今では「クラスのヒーローが来た!」みたいな歓迎ムードに変わっている。


正直、落ち着かない。


冤罪で一度は犯罪者扱いされ、名誉が回復したと思ったら、今度は社長だと知れ渡る。教室内のヒエラルキーがジェットコースターのように変化している。


自分の席に座り、ぼんやりと窓の外を眺める。ネムは今ごろ家でぐっすり寝ているんだろうな。うらやましい。早く卒業して、自由になりたい。


そんなことを考えていると、クラスメイトが声をかけてきた。


※※※


「ね、ねえ藤崎くん、ドールハウスの社長さんなんだよね?」


「ん?ああ、そうだよ」


彼女はそっと距離を詰めてくる。あ、この子、クラスでも人気のある女の子だ。委員長やってた気がする。ふわっといい香りがする。


「オリ男さまって会ったことあるの?」


会ったことあるどころじゃない。あれは俺がベースなんだから。


「まあ、社長だからね?」


「今度、サインもらってきてくれない?お願い、ファンなんだ!」


「うん、サインくらいならいいよ」


そう答えた瞬間、委員長は嬉しさのあまり俺の頭を抱きしめてきた。


「キャー!本当?うれしい!」


完全に舞い上がっている。……おお、柔らかい。思わずその感触を堪能してしまう。


すると、後ろからバタバタと足音が近づき、彼女を引き剥がすようにして、今度は俺の頭を奪うように抱きしめる人物が現れた。


「だめ!」


千穂だった。うむ……千穂の方が大きい。俺はこちらの方が好みだ。もっと強く抱きしめてくれてもいい。


「あ、ごめん千穂!ちょっと興奮しちゃって!藤崎くんを取ったりしないから!」


「ほ、本当?」


「私、オリ男のファンでさ。サイン貰えるようお願いしたら、いいよって言われて。つい嬉しくて、我を忘れて抱きついちゃったんだ」


そう説明されても、千穂はまだ困ったような顔をしている。


「そ、そうなんだ……」


そういえば、千穂は俺がオリ男だって知ってるんだったな。そりゃ複雑な気持ちにもなるか。


「委員長の言う通りだよ。心配しなくていいから」


名残惜しかったが、千穂をそっと引き離し、席に戻るよう促した。


朝から柔らかい幸せをたっぷり味わえたおかげで、不安も眠気もどこかへ吹き飛んでしまった。我ながら単純だ。


そして、クラスの男子たちからは羨望のまなざしを一身に浴びていた。……ああ、なんていい気分。


※※※


その日も授業が終わった後、千穂と一緒に下校した。


今日も千穂が夕飯を作りに来てくれるらしい。俺は「家を出るときは必ず連絡して」と念を押した。今の状況では、千穂を一人で歩かせるわけにはいかない。


千穂が無事に家へ入るのをしっかり見届けてから、俺も自宅へと戻った。


※※※


家に帰ると、玄関を上がった瞬間にオリガミの声が響いた。


『通帳を撮影した人物を特定しました』


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