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最近のVTuberすごくね?

食後、千穂を家まで送り届けた後のこと。


俺はリビングのソファに沈みながら、他に使えそうな金策がないか、ぼんやりと考えていた。


そのときだった。オリガミが声をかけてくる。


『お兄様。掲示板で、少々気になるやり取りを見つけました。念のためお伝えしておきます。』


「ん? 掲示板? どれどれ……」


オリガミがテレビの画面に表示したのは、某匿名掲示板のスレッドだった。


※※※


──【誰か説明して】ここ数日で出てきたVTuber、ヤバすぎない?


【1】名前:名無しの兄

なんか、最近のVTuberすごくね?新規にすごいのばかりいる。


【12】名前:名無しの兄

>>1 たとえば?


【27】名前:名無しの兄

>>12 まず「オリ男」だろ?そして「サバ美」。あと「タイ子」とか。


【34】名前:名無しの兄

>>27 「アジ代」もな!


【52】名前:名無しの兄

まずさ、アバターがすげえんだよな。ぜったいにプロの仕事。それもトップレベルの。絶対にあいつら、バックに大資本がついてるぞ。いまトップ層VTuberのアバターと、クオリティ変わらんもん。


【63】名前:名無しの兄

>>52 わかる。あれすげえよな。髪の流れもすごく自然でさ。髪からシャンプーの匂いが漂ってきそう。


【69】名前:名無しの兄

>>63 変態乙


【73】名前:名無しの兄

>>63 たしかに。あれ、どうやって作ったんだろう。


【91】名前:名無しの兄

このまえガッツリしらべたんだけどさ、4月の末くらいからだな。調べた限りでは、あの超絶クオリティのアバターは「オリ男」からっぽい。


【108】名前:名無しの兄

>>91 「オリ男」ってあの折り紙のか?たしかにあのアバターもそんな感じだったな。オリ男、俺好きだわ。言ってることはよくわからんけど、あいつの折り紙、パネェぞ。


【115】名前:名無しの兄

>>108 ねえちゃんが「オリ男さま〜」っとか言ってたからどんなものかみたら、すごかった。延々とチャラい言葉を垂れ流しながら、ガチの折り紙技術を披露してくるんだぜ?なんかギャップで脳がおかしくなる。陽と陰のコラボレーションや!


【119】名前:名無しの兄

>>115 俺の彼女もキャーキャー言ってたわ。ムカつく。


【124】名前:名無しの兄

>>119 でも、おまえも、ぺ◯らにお熱だったじゃん。ぺ◯らしか勝たん!とか言ってたよな?


【126】名前:名無しの兄

>>124 なんで知ってんだ!エスパーかよ!


【132】名前:名無しの兄

あとよ、その新規たち、トークもすっげえいいんだよな。初めて感とか初々しさはあるんだけど、それも含めてコンテンツが成立してるから。


【145】名前:名無しの兄

>>132 トークスゴイよな。アナウンサーみたいにめっちゃハキハキしてるの多いし。どっかの芸能プロダクションとりこんだんかね?


【151】名前:名無しの兄

>>145 ありえそう。なんかこっちの言ってほしいことを言ってくれるんだよな。高級キャバクラみたいな感じ。


【156】名前:名無しの兄

>>151 時代変わったよなあ


【162】名前:名無しの兄

おい!なんかこいつら、全部同じ会社の所属になったみたいだぞ!株式会社ドールハウスだって!


【170】名前:名無しの兄

>>162 やっぱり、大資本だったか!


【183】名前:名無しの兄

>>170 代表取締役は藤崎正太郎?だって。おい……こいつ高校生だぞ!


【191】名前:名無しの兄

>>183 はあ!?高校生が、そんなことできるか!どこか別の会社が絡んでるだろ!


【203】名前:名無しの兄

>>191 いや、親会社っぽいのはないなあ。この藤崎ってのが、天才モデラーとか?


【214】名前:名無しの兄

>>203 でも、モデリング技術だけじゃ、人は集まらんだろ?


【225】名前:名無しの兄

>>214 役員に、星ヶ谷ネムだってさ!あの天才AI開発者の!


【231】名前:名無しの兄

>>225 え?じゃ新しいVTuberみんなAI?さすがにそれはないだろ。


【245】名前:名無しの兄

>>183 あ、藤崎って、藤崎グループと関係あるんじゃね?


【258】名前:名無しの兄

>>245 可能性あるな…それなら違和感ないか。きっと金に物を言わせて優秀な人材をかき集めてきたんだろ。


【272】名前:名無しの兄

>>245 なんだよ!七光かよ!うらやましい!


【300】名前:名無しの兄

オリ男のグッズ、まさかの折り紙セットで草


※※※


ふう……思考をまとめながら、ソファにもたれかかった。


「まずいな……叔父さんの会社の関係者だと思われてるのか。誤解が広がる前に、叔父さんに、何か説明しておかないと駄目かもな」


『藤崎悠斗さんですね。お父様の弟にあたる方の。』


『ご説明するとなると、私に関する情報をある程度開示せざるを得ないかもしれません。』


「だよなあ……でも、本音を言えば、オリガミのことは知られたくない。叔父さんも経営者だし、どう動くか読めない」


『私の調査によれば、彼は“信頼を裏切る行為”を極端に嫌う人物のようです。』


「なるほど……じゃあ、誠実な対応は逆に有効か。少なくとも変に隠そうとして嘘がバレるよりはマシだな」


「それに、オリガミとネムだけでこの先ずっとやっていくのは、さすがに現実的じゃない。どこかで、協力者を増やす必要がある」


「正直なところ、叔父さんがダメだったら……信じられる相手なんて、千穂ぐらいしか残ってないし」


『では、“限定的な情報開示”をご提案します。「たとえば、ネムさんと協力して、VTuberの作成・運用ができる強力なAIを開発した」という程度に留めておく、とか。』


「それだけでも十分すごいけどな……。AGIに到達してるとか、世界最高峰とか、そういう話は封印してという事か」


『はい。オリガミAIの本質には触れず、あくまでこの金策プロジェクトが主目的である、という建て付けにすれば、納得させやすいかと思います。』


※※※


『ただひとつ、懸念点があります。藤崎悠斗さんの奥様である、藤崎柚希さんです。』


「柚希さん?優しくて、控えめで……しかも美人で、最高に素敵だよなあ」


『……お兄様、彼女の肩書をご存じないのですか?』


「肩書?」


『彼女は弁護士です。業界では知らぬ者のいない、非常に優秀な実務家です。しかも“調査能力”に長けており、嘘を見抜く技術もプロフェッショナル級です。こちらの情報が漏洩する可能性は、決して低くありません。』


「……柚希さん、弁護士だったの!?ちょ、待って。美人で優しくて賢くて弁護士って、なにそれ。もう最強じゃん。最高かよ」


『お兄様、ずいぶん熱がこもっていますね……柚希さんのこと、もしかして……』


「う……ああ……たぶん……初恋の相手だったかもしれん……」


「あ、でも昔の話だぞ?昔の話な?」


※※※


『正直、あまり褒められた方法ではありませんが……彼女を味方につける“確実な手段”があります。』


「なにそれ。そんなのがあるの?教えてくれ!」


『実は、カクカクシカジカで……』


「……柚希さん、そんな一面あったの?いや、マジでかっこいい……」


『それで……カクカクシカジカと……』


「そんなこと言うのか?……たしかに事実だけど……いや、たしかに柚希さんならそうなりそうだけど……それ、少し抵抗あるな……」


……でも、やるしかない。


たとえ相手が叔父さんたちとは言え、オリガミの存在を知られるわけには行かない。


善は急げ、だな。


俺はスマホを手に取り、叔父さんにアポを取るため、電話をかけたのだった。

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