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ワタシの決断と行動(ネム視点)

正太郎がテレビ局との交渉で外出し、家にいなかったある晩のことだった。


その日も千穂ちゃんが夕食を作りに来てくれた。千穂ちゃんには感謝しかない。毎日こんなに美味しいご飯を食べられて、ワタシは幸せ者だ。


「今日も千穂ちゃんのご飯は最高だな!」


「えへへ……ありがとう!」


千穂ちゃんは照れくさそうに微笑みながら、そう答えた。


※※※


千穂ちゃんの絶品手料理を堪能した後、ワタシは意を決して、正太郎について話を切り出すことにした。


「なあ、千穂ちゃん。最近、正太郎、変じゃないか?もしかしてアイツ疲れてないか?」


「あ、ネムちゃんもそう思った?」


千穂ちゃんは「やっぱりね……」と納得したような表情で、じっとこちらを見つめてきた。


むむ、気付いていなかったのはワタシだけだったか。でも、それは仕方ないだろう。オリガミは常に正太郎の様子をモニタリングしているし、千穂ちゃんは正太郎との付き合いも長い。経験値が違うのだ。


「やっぱり、千穂ちゃんなら分かるんだな。ワタシは全然わからなかったぞ」


「え?でも気付いてたんじゃないの?」


「いやさ、正太郎用のサポートAIがいるんだよ。それがイヌガミも動かしてるんだけどさ、ワタシに通知が来たんだ。正太郎が精神的に疲れてるって」


ワタシがそう話すと、千穂ちゃんは不安げな表情で口を開いた。


「そうなんだね……しょうちゃん、どうしちゃったんだろ?ネムちゃん、理由わかる?」


「それがさ、そのサポートAIが言うには、TV局でさ、たくさんのスーツのお姉さんのアプローチを受けてるみたいなんだ」


「え?え?え?しょうちゃん、とられちゃうの?」


千穂ちゃんは、今にも泣き出しそうな瞳で、そうつぶやいた。


「違う違う、そういうことじゃないんだ。千穂ちゃんのところにも、突然『やばい!助けて!何か話して!』って慌てた電話がかかってきたことない?正太郎から、切羽つまった感じの声でさ」


「う、うん、時々かかってくる。お願いされたから、イヌガミちゃんが可愛いとか、しょうちゃんに作るご飯の話とかしてる」


「そう、それなんだよ。スーツ姿のお姉さんたちに誘惑されて、つい流されそうになったとき、正太郎は情欲を抑えるためにワタシたちに電話してきてるみたいなんだ。ワタシたちの声を聞いて、心を落ち着かせてるみたいで」


「そ、そうなんだ……」


「うん、それに最近は正太郎もかなり無理してるみたいだし……このままだと本当に限界が来ちゃいそうなんだ。だからこそ、婚約者であるワタシたちがなんとかしなきゃと思うんだ」


千穂ちゃんはしばらく黙って考え込んだ後、静かに口を開いた。


「それって……やっぱり、しょうちゃんを体で癒やすってこと?」


「そうだ。やっぱりスキンシップが最強のストレス解消だと思うんだ。正太郎も性的に満たされれば、スーツ女に惑わされる事もなくなって、楽になると思うしさ。正太郎が変な女に引っかからないためにもな」


「そうだね……」


「それで、千穂ちゃんはどうしたい?やっぱり正妻の千穂ちゃんからがいいと思うけど、もし不安だったり迷いがあるなら、ワタシが先でも大丈夫だぞ?」


「だ、大丈夫だよ!……ね、ねえ、ネムちゃん、本当にワタシが最初でいいのかな?」


「もちろんだよ、千穂ちゃんは正妻なんだから、一番最初で当然だと思うぞ」


正太郎と他の女の子が行為することをイメージするのは、正直かなりモヤモヤする。でも、相手は千穂ちゃんだし、今はそんなこと言っていられない。


千穂ちゃんが、少し戸惑いながらも意を決した様子で口を開いた。


「……ネムちゃん……ネムちゃんってさ、その……初めて?」


「初めてって……キスとかか?」


「うん」


「キスか……したことないな」


ワタシの言葉に、千穂ちゃんはしばらく考え込んでから、静かに口を開いた。


「……そっか、それなら、ネムちゃんが最初にしょうちゃんを癒やしてあげてほしいな」


「え、本当にいいのか?千穂ちゃん、ずっと正太郎のこと大好きだったんじゃないのか?」


「うん……でも、私、一度失敗しちゃったから。ネムちゃんより先にっていうのは、私にはふさわしくない気がするの。しょうちゃんに嫌な事を思い出させちゃうかもしれないし……」


千穂ちゃん……やっぱり、あのことが心に引っかかっているんだな。その複雑な事情についてはオリガミから少し聞いていた。しかし、ここはワタシが無理に踏み込んでいい部分じゃない。千穂ちゃん自身の気持ちと選択を、しっかり受け止めるべきだ。


「千穂ちゃん、わかったよ。でも……ワタシは千穂ちゃんの味方だからな!相談事とかあったら聞くからな!」


これが千穂ちゃんの出した答えなのだろう。なら、ワタシにできることは決まっている。まずはワタシが一歩踏み出して、とっとと正太郎に抱かれてしまおう!そうすれば、千穂ちゃんも、気兼ねなく正太郎に抱いてもらえるだろう!


やっぱり、千穂ちゃんには笑顔でいてほしい。彼女には笑顔が一番似合うんだから。


※※※


千穂ちゃんが帰った後、しばらくして正太郎がテレビ局での交渉を終えて帰宅した。


「あれ?千穂、もう帰ったのか?」


「ああ、イヌガミと一緒に帰ったよ。正太郎が疲れてるんじゃないかって、すごく心配してたぞ?」


「うん、今日は少し疲れたかもしれないな……」


やっぱりな。顔色も冴えないし、どこか元気がなさそうだ。今日もテレビ局で神経をすり減らしたのかもしれない。


「なあ、正太郎、少し話したいことがあるんだ。あとで部屋に行くから、時間もらっていいか?」


「ん?了解。でも、先にご飯とお風呂を済ませてもいいかな。今日はちょっと疲れててさ」


「わかった。それじゃ、また後でな」


よし、ワタシも先にお風呂を済ませておこう。体をきれいにしとかないとな。


ムフフフ。正太郎はワタシのことが本当に大好きだからな。きっとすごく喜んでくれるはずだ!


※※※


正太郎がお風呂から上がるタイミングを見計らい、ワタシはそっと正太郎の部屋の前に立った。


今日はいつものダボダボパーカーにショートパンツ姿。タイツはあえて履かず、生足で勝負だ。少しでも正太郎の気を引けたらいいな、なんて思っていると、自分の鼓動が早くなっているのを感じる。


さ、さすがにイザとなるとドキドキするな……いや!女は度胸だ!正太郎はワタシの事大好きだから大丈夫だ!


ワタシは正太郎の部屋のドアの前で、深呼吸してから、少し大きめの声で呼びかけた。


「正太郎、入るぞー。いいか?」


「ネム?どうぞ、入っていいよー」


部屋の中から返事が聞こえたので、ワタシは正太郎の部屋に入った。正太郎は作業机に向かい、折り紙に集中しているようだ。


「おお……やっぱり正太郎の折り紙はすごいな。今作ってるの、イヌガミだろ?」


「ああ、折り紙を折っていると、不思議と気持ちが落ち着くんだよ」


正太郎は折り紙に集中しながらも、手を止めずに作業を続けている。ワタシはぐるりと部屋の中を見渡した。


「……ワタシの折り紙、かなり増えてるな」


うつ伏せになったり、仰向けになったり、ノートパソコンをいじってるワタシの姿の折り紙がある。折り紙で人を表現するって半端ないな。やっぱり正太郎はすごい。


「うん。ネムたちの可愛いところや綺麗なところ、格好いい瞬間を見つけると、折り紙で形にしたくなるんだ」


正太郎は、こうやって何気なくドキッとすることを言ってくるから、油断できない。天然ジゴロか?ワタシのこと好き過ぎるだろ。ムフフフ。


さて、このままグダグダ話してても仕方ない。いくぞ!行動あるのみ!


「なあ、正太郎こっち向いてくれ。ほら早く」


ワタシは正太郎の頬に手を添え、すこし強引にこちらを向かせた。


「ん?どうし……むぐっ!?」


ワタシは正太郎の唇に吸い付いた。キスってこれでいいのかな?タコみたいになってる気がする。でも……悪い気はしないな。三十秒ぐらい経った頃だろうか、息苦しくなってきたので、ワタシは正太郎の唇から離れた。


「んんっ……ぷはぁ……!これが、ワタシのファーストキスだぞ。どう?びっくりしたか?」


「はぁ、はぁ……ネム、今の……どうして急に?」


正太郎は戸惑っている様子だ。このまま一気にいくぞ!間髪入れずに、正太郎の手を取りワタシの柔らかく大きく膨らんだ場所へと導いた。そのまま、まっすぐに正太郎の瞳を見つめて、静かに言葉を紡ぐ。


「正太郎、今日はワタシが全部受け止めてやる。最近、疲れてるよな?ワタシが癒やしてやりたいんだ……だから、ワタシの初めて、正太郎が奪ってくれないか?」


正太郎の瞳に、抑えきれない情熱が灯るのが見て取れた。次の瞬間、正太郎はワタシをしっかりと抱き寄せ、深く熱いキスを落としてきた。


「んっんっ……」


思わず甘い声が漏れてしまう。……やっぱり、経験者は違う!キスの仕方が全然タコじゃない!


やがて、長いキスが終わり、唇がそっと離れた。胸の奥がじんわり熱くて、頭がふわふわする。


熱くなりすぎないように、ワタシは必死で自分を保つ。そして、そっと正太郎の耳元に顔を近づけて、静かにささやいた。


「千穂ちゃんのことは心配いらないよ。ワタシが先に、って言い出したのは彼女自身なんだ。たぶん、これは彼女なりのみそぎなんだと思う。ちゃんと気持ちを汲んでやれ。」


ワタシは深呼吸して、言葉を選びながら続けた。


「でも……今日ワタシを抱いたら、明日は必ず千穂ちゃんを抱いてあげてな。これは絶対だ。大事な約束だからな」


その言葉が引き金だった。正太郎がワタシに覆いかぶさってきた。ワタシは目を瞑って、嵐のようなそれを受け入れる。


あとはもう、正太郎の熱に身を委ねるしかなかった。


※※※


その夜、ワタシは初めてを全部正太郎に捧げた。不思議と怖くはなかった。


気がつけば、意識がふわりと遠のいて、そのまま朝を迎えていた。どうやら、いつの間にか眠りに落ちてしまったらしい。


いま、正太郎はワタシの胸に顔をうずめて、幸せそうに眠っている。コイツは本当におっぱいが好きなんだなあ……まるで甘えん坊の赤ちゃんみたいだ。


昨夜の出来事は断片的にしか思い出せないけれど、胸の奥に残るのは、ただただ満ち足りた幸せな感覚だけだった。


あと……なんとなく、思わず大きな声を出してしまった気がする。そう、例の発作のときのような……駄目だ。これは考えちゃだめなやつだ。きっと大丈夫だ。


ワタシはそっと体に抱きつく正太郎の腕をはがし、彼を起こさないよう静かにベッドを抜け出した。


その後、シャワーでしっかり汗を流し、クローゼットからいつもの服を取り出して身に着けた。何着も持っている、同じダボダボパーカーとショートパンツに黒タイツだ。


そして、ワタシはなんだかフワフワした気分で研究室へと足を向けたのだった。


※※※


研究室のドアを開けると、すぐにオリガミの声が響いた。


『お兄様の汗に含まれるコルチゾール濃度が、昨日と比べて大幅に下がっています。ストレスレベルが大きく改善されたようです。ネムさんにお任せして本当によかったです。』


「そっか、本当に良かった。正太郎はワタシのことが大好きだからな!当然だよな!」


『ふふっ、その通りですね。お兄様はネムさんのことが本当に大好きです。もちろん千穂さんもですけど。』


そうだった。すっかり忘れていた。今日は千穂ちゃんの番だった。


千穂ちゃん……大丈夫かな……。正太郎、ちゃんとリードできるだろうか?仕方ない。あとで、もう一押し背中を押してやるか。


昨夜の激しい営みの余韻がまだ体に残っていて、あちこちにじんわりとした違和感がある。


そんな感覚を味わいながらも、ワタシはぼんやりと正太郎と千穂ちゃんのことを考えていた。


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