第4章:時を刻む歌声
ココロの歌声は、もはや震えてはいなかった。
彼女の勇気と、誰のためでもなく自分自身の才能を信じる心から生まれた歌声は、冷たい氷の街の隅々まで響き渡った。
その音は、まるで暖炉の炎のように熱く、時計塔を覆う分厚い霜と氷を突き刺した。
歌声が強くなるにつれて、ココロの周りの空気が、シャンパンゴールドに輝き始めた。
それは、ココロの才能と希望の輝きが、ついに光となって解放された証拠だった。
キン、キン、キン――!
巨大な時計塔の氷の表面から、亀裂が走り始めた。その亀裂を伝って、ココロの歌声の光が中へと流れ込んでいく。
シロツグは歓喜の声を上げた。彼の首の砂時計は、もはやチリチリという微かな音ではなく、祝福するように賑やかに金の砂を落とし続けている。砂時計からあふれ出た金のきらめきが、ココロの足元から螺旋を描きながら、時計塔へと昇っていった。
ココロは、自分の歌声が、冷たい壁にぶつかって消えるのではなく、街の時間を動かし、温め直しているのを肌で感じた。
その瞬間、空中に無数に漂っていた虹色の氷の結晶(失われた歌の残骸)が、ココロの歌声に吸い寄せられるように、一斉に溶け始めた。溶けた結晶は、水となって地面に落ちるのではなく、無数の小さな光の粒へと変化した。
光の粒は、まるで再会を喜ぶかのように、ココロの歌声に合わせて優しくきらめき、跳ね回る。
そして、ついに時計塔を覆っていた氷が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。氷は地面に落ちる前に温かい水蒸気となって消え、その熱が、街全体を優しく包み込んだ。
チク、タク、チク、タク……
何の音もなかった街に、時計塔の針が時を刻む、確かな音が響き渡った。時が再び動き出したのだ。
ココロは、達成感と喜びで胸がいっぱいになった。彼女の歌声は、沈黙に敗北しなかった。それどころか、止まっていた街の時間を動かすほどの強いきらめきを放ったのだ。
「ありがとう、ココロ。君の歌声は、この街の希望を救ったんだ」
シロツグがココロの肩に跳び乗ったとき、ココロの体が暖かい光に包まれた。シロツグの砂時計の金のきらめきが、異世界への扉となる。
ココロが目を開けると、再び雪が降る、現実の公園に座っていた。シロツグの姿はもうない。
しかし、ココロの心は以前とは全く違っていた。
彼女は立ち上がり、大きく息を吸い込んだ。
そして、誰にも聞かれなくてもいい、ただ自分自身のために、歌い始めた。
自分の歌声が、冷たい雪に吸い込まれて消えることはない。
なぜなら、その歌声には、止まった時間を動かすほどの、温かい輝きが宿っていることを知ったからだ。
ココロの瞳には、シロツグの砂時計の金のきらめきが宿り、彼女は自信を持って、次の雪の日へと歩き出した。




