第2章:歌の結晶を探して
ココロが足を踏み入れた「クロノス・ヴィレッジ」は、静寂そのものだった。
立ち並ぶ建物、街路樹、ベンチのすべてが、分厚い霜と氷に覆われ、太陽の光を浴びてダイヤモンドのように荘厳にきらめいている。しかし、その輝きは冷たく、街には人の気配が全くなかった。
「まるで時間が止まった標本のようだわ…」ココロが思わずつぶやいた。
「その通りだよ。この街の時間は、ずっと前に止まってしまったんだ」
シロツグが、首にかけた小さな砂時計の金の砂をチリチリと鳴らしながら答えた。
「この街の住人は、何かを諦めてしまった。夢や希望を失い、歌うことをやめたせいで、時間そのものが冷え固まってしまったんだ」
シロツグは空中に漂う、無数の小さな粒を指差した。
「あれを見てごらん」
それは、光を反射して虹色のプリズムのように輝く、氷の結晶だった。ココロがそっと手を伸ばすと、それはすぐに手のひらに触れ、冷たい感触だけを残して消えていった。
「あれは、昔この街で響いていた歌や、楽しかった笑い声だ。時間が止まったせいで、それらが空気に凍りつき、結晶になってしまったんだ。失われたきらきらだよ」
ココロは悲しくなった。こんなにも美しい結晶が、実は誰も歌ってくれなくなった寂しさの証だなんて。
「どうすれば、この時間を動かせるの?」
シロツグは、街の中心にそびえる、巨大な時計塔を仰ぎ見た。時計塔は分厚い霜に覆われ、針は動かない。
「鍵は君の歌声だ、ココロ。君の歌声には、冷たさを溶かし、時間を温める力がある。それは、この街の時間を再び刻むために残された、唯一の希望のきらめきなんだ」
ココロは不安になった。自分の歌声が、誰にも届かない沈黙の中に消えてしまうのが怖い。こんな巨大な街を、たった一人の歌声で救えるわけがない。
しかし、シロツグが優しくココロの足元に寄り添い、温かい毛並みと、砂時計の金のきらめきで励ます。
シロツグとの友情の温もりが、ココロの勇気を微かに灯した。
ココロは決意し、時計塔を目指して、シロツグと共に静寂の街を歩み始めた。




