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語るよ佐井田さん。—記憶の波にさらわれて—  作者: 猫田笑吉


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9/11

『赤飯の記憶 ― 第九話 翔子、恋に落ちる(理由は小学生)』

赤飯工場の湯気の向こうで、翔子の心は揺れる。

初めての“恋”に、戸惑いとときめきが混ざり合う朝。

赤飯よりも熱い想いに、佐井田は静かに見守る。

今日も休憩室は、小さなドラマで満たされる――。

翌日。

赤飯炊飯機の湯気が立ち上る中、翔子がそわそわしていた。


佐井田「どうしたの? 落ち着きがないわね。赤飯が恋しいの?」


翔子「い、いや、赤飯じゃなくて……人、です」


佐井田「人?」


翔子「……はい。恋、かもしれません」


佐井田、箸を置く。

「ほう。語りなさい翔子ちゃん」


翔子「えっと……その人がですね……」


頬がほんのり赤く染まる。


「……私に“味噌汁、こぼれてますよ”って言ったんです」


佐井田「…………」


「それで、なんか“ドキッ”てして。

 あ、これ恋だなって」


佐井田「翔子ちゃん、それ小学生の恋ね」


翔子「ですよねぇ!? でも何か……すごい優しかったんですよ!

 ティッシュ渡されて、“慌てないで”って言われて」


佐井田「それ完全に保健室の先生ポジションね」


翔子「その瞬間、脳内で花咲いたんです。バラとかじゃなくて、チューリップ!」


佐井田「うん、完全に小学二年生」


翔子「でも、それから毎日その人のこと思い出して、

 朝起きた瞬間に“味噌汁こぼれてますよ”って再生されるんですよ!」


佐井田「私の“動画記憶”より再生率高いじゃない」


翔子「これが恋かって思って……」


佐井田「翔子ちゃん」


翔子「はい」


佐井田「――今あなたが恋してるの、“味噌汁の妖精さん”だからね」


翔子「えっ!?!?」


佐井田、にっこり。

「あなたも、ホイホイされちゃったのね」


翔子「いや、人をゴキブリみたいに言うな!!」


――つづく。

初恋って、味噌汁で目が覚める瞬間から始まるんですね。

翔子のドキドキを見守る佐井田の視点が、少し大人の余裕を与えてくれます。

次回は、この“小学生レベルの恋心”が、どんな奇跡を起こすのか――お楽しみに。

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