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語るよ佐井田さん。—記憶の波にさらわれて—  作者: 猫田笑吉


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7/11

『赤飯の記憶 ― 第七話 探偵は自動追尾する』

いつもの休憩室でのひととき。

湯気の向こうで佐井田茜がふわりと笑うと、日常に少しだけ非日常が入り込む――

今回の話は、そんな佐井田の“自動追尾能力”が明かされるエピソードです。

日常の端々で見せる奇妙な魅力、そして友情が芽生える瞬間に、ついクスリと笑ってしまうことでしょう。

風間翔子が湯飲みを置いた。

「探偵っすか? 本格的に?」


佐井田茜は湯気の向こうでふわりと笑う。

「そう。ちゃんと履歴書書いて、面接受けて、尾行までしたのよ」


翔子は目を丸くした。

「へっ? 面接から実技行くんすか?」


「そう。ほら、私ってすぐ覚えるでしょ? 顔も服装も歩き方も、全部一瞬で」

「まぁ、記憶動画っすもんね」

「だからね、覚えた瞬間、体が勝手に動くの」


翔子はおそるおそる尋ねた。

「勝手に……?」


「そう、自動的について行くの。まるで野良犬みたいに、気づいたら相手の後ろに立ってるのよ」


佐井田は湯飲みをくるくる回す。

「尾行一日目、最初のターゲットは浮気調査。歩いてたら、“あ、いたわ”って思った瞬間――」


「――もう横にいたの」


翔子は手をかざして後ずさる。

「はやっ!? って言うかターゲットと並走して、あんたは競歩の選手か」

「そう、お尻をぷりぷりしながら並走してたわ」


「それがね、相手も元競歩の選手だったのよ、だからヒートアップしちゃって」

「で」

「気づいたら彼女の家までぷりぷり歩いていたわ」

「家までぷりぷりターンまだ続いてた」


相手に「貴方は何者?」って聞かれたから、

佐井田は涼しげに肩を回し、「通りすがりの競歩マニア兼探偵です」と答えた。

翔子は思わず突っ込む。

「いや、自己紹介が趣味と目的を兼ねてる」


佐井田は微笑む。

「で、友達になったわ」

翔子は言った。

「喧嘩の後に友情芽生える例のやつかぁーい」


休憩室に二人の笑い声が溶け、湯気とともにいつもの空気に戻っていった。


今回のエピソードで描かれるのは、特別な能力や派手な事件ではなく、佐井田の自然な奇人ぶりと、友情の芽生えの瞬間です。

普段の休憩室で交わされる日常のやり取りに、クスリと笑える余韻を感じてもらえたら嬉しいです。

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