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語るよ佐井田さん。—記憶の波にさらわれて—  作者: 猫田笑吉


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5/11

『赤飯の記憶 ― 第五話 ヤマンバギャルの青春』

休憩室の窓から差し込む灰色の光。

今日もコーヒー片手に、佐井田がふと思い出すのは、高校時代の自由でちょっとぶっ飛んだ青春の記憶。

笑いあり、ちょっとの懐かしさあり。

さあ、あの伝説の“ヤマンバギャル”との出会いを覗いてみよう――。

休憩室の窓の外、灰色の光が差し込む。

佐井田は湯気の上がるコーヒーを一口すする。


「そう言えば、高校は楽しかったな」


風間翔子が首をかしげる。

「何ですか? また、男性教師ホイホイですか?」


佐井田はぷっと笑い、首を横に振る。

「違うの。その頃の私は、授業はもう見ないようにしたの。簡単よ。

そしたら、面倒くさいこともなくなった」


「へぇ~」

翔子は興味津々で前のめりになる。

「まぁ、成績は下がっちゃったけどね」

佐井田は眉尻を下げて笑った。


「でもね、私はある人に出会えたの」


「誰っすか?」


佐井田の目が、突然ピカーンと光る。

「ヤマンバギャルよ」


翔子の口が思わず「あぁ……」と開く。息を飲むその表情に、佐井田はにんまり。


「私もなりたいって思ったの。だって誰も素顔も素性も知らずに、

ノリだけで生きられるんだもん」

「それにメークを取って街ですれ違っても、誰が誰だか分からない」

佐井田は小さく「ふふっ」と笑った。

「勿論、その子の記憶も無い」

佐井田ニッコリ

「最高だったわ〜」

佐井田はうっとりとした。


「マジっすか……そんな自由な生き方、見たことないです!」

翔子の瞳がキラリと光る。


佐井田は立ち上がり、スマホを差し出す。

「見る?」


翔子の視線の先には――

黒リップ、真っ黒アイライン、金とオレンジのメッシュヘア。モリモリアゲアゲ、自由そのもののヤマンバギャル佐井田が立っていた。


翔子は思わず息をのむ。

「うわ……完全に別人じゃないですか!」


挿絵(By みてみん)


佐井田は肩をすくめ、にやりと笑う。

「そう、これが私の青春。授業も記憶も全部、置いてきた」


二人は声をあげて笑った。

小さな休憩室の空気が、夏祭りの夜のように一瞬はじけた。


授業も成績も、ちょっと置いてきた佐井田の青春。

だけど、その自由さや出会いの瞬間は、今も心の中で輝き続けている。

翔子と笑い合ったあの一瞬の空気は、休憩室の小さな夏祭りのように、ふわりと弾んだまま残っている――。


次回はまた違った空気の、第6話でお会いしましょう

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