灰色の倫理 解決した事件 中編
今回は推理要素ほぼないです。
あとちょっと流血表現あります。
東帝大学から三十分ほど車を走らせると『シャドゥコート陽影』と書かれた表札が見えてくる。
そこの426号室が髙野秋の家である。
ポストの中をいつものように覗くと珍しく一枚の手紙が入っていた。
差出人の名前は書かれていなかった。
手紙の内容は短かった。
___あの夜、君は見ていたね___
差出人の見当はついた。だが
(そんな事…考えたくもない。 吐き気がする。)
髙野は急いで部屋に入った。
この吐き気はあの事のせいだと心の中で言い訳をしながら。
「じゃぁ、もう兵堂、東京にいないんですか?」
あぁ、と電話越しに坂田の声が聞こえた。
『あいつんとこに行った翌日の様だ。
とりあえず今は俺が事件の事調べて下村が兵堂の事を調べてるって感じだから詳しいことは下村に聞かんと分らん。 お前、確か下村とも連絡先交換してたろ。 ならそっちで聞いた方が早い。
ま、それで下村と仲良くなれりゃぁいいんじゃねーの?』
最後の方はにやけているのが音声通話でも伝わってきたため電話を切ってやろうかと思ったがあと一歩で踏みとどまった。
電話を切った後藤見は下村には電話せずに絡まった糸を解いていくように今回の事件内容を頭の中で整理した。
(兵堂はもう...東京にはいない。ならば警視庁の管轄ではない。クリスマスどころか正月までに解決するのも難航するだろうな。)
アパートのベランダから窓を見ると少し早めの初雪が降っていた。
(まぁ、今日はもうイブだ。 クリスマスまでの解決は無理だろうな。)
心の中でそう思いながら藤見は晩御飯のシチューを口に運んだ。
カップルたちが町を練り歩くクリスマス、12月25日は日曜日だった。
そんな景色を、横目に見ながら藤見はパソコンを打った。
陽影町一家襲撃事件
そう打つと見覚えのある名前の会社がいくつかの記事を作っていた。
――――――――――――――――――
陽影町一家襲撃事件、被告に執行猶予付き有罪判決
――――――――――――――――――
1999年2月15日 地方裁判所
26年前に発生した「陽影町一家襲撃事件」で起訴されていた無職・兵頭鏡介被告(当時28)に対し、地方裁判所は○日、懲役1年・執行猶予1年の有罪判決を言い渡した。
本事件は、陽影町の住宅で一家が何者かに襲撃され、両親が死亡、当時6歳だった長女が生存した凄惨な事件として知られている。
被告は事件当時から一貫して黙秘を続けており、殺意や致死行為そのものについては立証に至らなかった。
裁判では、被告が事件当夜に現場住宅へ侵入していた事実や、被害者に対する暴行行為については認定されたものの、死亡との直接的な因果関係については証拠不十分として認められなかった。
裁判長は判決理由の中で、
「被告の行為が事件に深く関与していたことは否定できないが、殺害行為を直接裏付ける証拠が存在しない以上、罪責は限定的に判断せざるを得ない」
と述べた。
この判決により、事件は形式上「解決」とされたが、被害者遺族や関係者の間では、真相が明らかにされないまま幕引きとなったことへの疑問の声も根強い。
なお、被告側・検察側ともに控訴についてはコメントを控えている。
確認は、これで十分なはずだった。
――少なくとも、今は。
藤見はパソコンと同時に自分の目も閉じた。
クリスマスから一夜。
まだ半分寝ている頭を無理やり起こして数学科第二研究室のドアを開けると珍しくぱっちりと目を開けている髙野が電話をしていた。
何時もならばむしろ髙野が半分寝ていて起こすのが大変なのにな…と心の中で不平不満と呼ぶかさえ分からない言葉を発していると髙野は「分かった。」とだけ言って電話を切った。
そして怖いくらい真剣な顔で髙野は藤見に向き直り言った。
「藤見君…君は、何を調べてる。」
見たこともない顔に目玉が飛び出すかと思ったのを抑えつつ藤見は言った。
「髙野先生。それは上司としての質問ですか?それとも興味での質問ですか?」
髙野は呆れ顔で
「興味本位だよ。」と返した。
「ならば回答を拒否します。 それより髙野先生。僕は今先生の質問で一つ新たな疑問が思い浮かびました。」
「何だい?」
「仮に、仮にです。僕が髙野先生の事について何か調べているとしましょう。
ならば貴方は…なぜそれに気づいたのです。」
純粋な疑問だった。
髙野のいない場所でしか今回は動いていない。
ならばどうやって気付いたのか。
それだけだ。
少しの沈黙の後、髙野はくすりと笑って答えた。
「君は私からの質問の回答を拒否した。 ならば私にも、拒否権は存在するんじゃないかい?」
「つまりそれは回答を拒否すると?」
「解釈は好きにしてくれて構わない。 さぁ仕事に戻るよ藤見君。」
もたれ掛かっていた壁から背中を離したその背中は不思議と大きく見えた。
「藤見君。君が私の事を模索するのは構わない。ただ忘れるな。
君の本業は私の事を調べる事ではない。それに、それで倒れられたりする方がよっぽど困る。
君の事で困る人が居ることを、忘れるな。」
藤見は小さく溜息をついた。
その無理難題に答えるのは正直に言って難しいとは思った。
だが、自分の事を心配してくれる人が居るのは純粋に嬉しかった。
その日の18時頃
髙野は藤見すらいない研究室に居た。
居ない、と言うよりは髙野が無理矢理帰らさせたという表現の方が正しいかもしれない。
机の上に置いてあるのは幾つかの図形のようだった。
(こんなだったかな…あの家の間取り図は。)
仮に幾ら藤見達が事件について調べていたとしても、髙野は全ての情報を警察に提供したわけではない。
何故かと聞かれれば答えは一つだけだ。
場面緘黙症と言う病気がある。
心理的な原因がある場合に引き起こされる病気で特定の場所で話せないと言った症状がある。
髙野の場合は‘場所‘ではなく‘事‘で話せない症状だった。
つまり事件の事になると話せなくなると言う事だ。
ではなぜすべての事を話していないと言わないのかと言えばそれも簡単だ。
途中までは答えれていたからである。
だが、6,7割程事件の情報提供をした頃から急に話せなくなったのは髙野の記憶の中に色濃く残っている。
今は多少話せるだろうが個人的に話したくない。
それだけだった。
ただ、嫌だと思ってもやらなければならない時は何時か来る。
(それが今か…)
髙野は空と言う名の天井を仰ぎながら思った。
(私は…自分の事が嫌いだ。あの時何もできなかった自分が。家族を守れなかった自分が。
幾ら外見で明るく振舞おうとトラウマと言うのは簡単に消えるものではない…
そして、また誰も守れないのなら、私はきっと、もっと自分の事が嫌いになる。
私は…自分が傷つくことよりも…誰かが傷つくことの方が嫌いだ…なら、少しでも、役に立て。なら、誰かが傷つくことのないように、少しでも努力をしろ。…そのくらいは、私でも…出来るだろう。)
ならば手始めに記憶を思い出すのが先だ。
随分と昔にはなるが忘れるというのはきっと不可能だ。
こうして模型を見ているだけでも随分と記憶が戻ってくる。
髙野自身も何を見たのかはっきりと覚えているわけではない。
(だが、今の私は准教授だ。この大学の准教授だ。 なら、それに相応しい事をするだけだ。)
暫く見ていると嫌と言うほど記憶が込み上げてきた。
それからどのくらいが経っただろうか。
時は12月と言うらしくもう18時に暗かった時点で周辺の暗さで時間を推測することはできない。
「何を一人で抱え込んでいるつもりだ。髙野の阿呆が。」
気付かないうちに湊川が後ろに立っていた。
どうやら帰るつもりだったようでもう既にコートを羽織っていた。
「何用かな。湊。」
「略すな。なぜお前は時々僕を略す。」
「別にいいでしょ。大して変わんないもん。」
「大いに変わる。それだったらまずお前のその髙野の旧字へのこだわりは何だ。
高野でも良いだろう。」
「それは駄目。」
「何でだ。」
「何となく。」
髙野はそのやり取りで一度も湊川の顔を見ることが出来なかった。
何故なら自分でも顔が青白いことに気づいていたからだ。
「で、用件は。わざわざ帰るところだったのに寄ってきたって事は何か理由があるんでしょ。」
湊川はどかっとソファに腰を下ろすとすこし目線を上げた。
「そうだな…先ず1つはもう8時なのにここの電気がついていたから…それと…」
湊川は一度言葉を切った。
切った、と言うよりも詰まらせた、と言う方が正しいのだろうと髙野は思った。
「それと、何?」
「それと、お前の部下に最近上司の様子が少しおかしい気がするから見ておいて欲しいと言われてな。」
髙野は思わずバッと湊川の顔を見た。
「随分と青白い顔の様だが、休息は取らなくて良いのか?」
「そんなことは今は如何でも良い。それよりその依頼主の名は何!?」
自分の声が想像以上に荒ぶっていることに気づいた。
「それを言わなければならないほどお前は鈍感か?
鈍感だ。と言う声が出なかった。
たとえ言ってもこの男はのらりくらり回避し続け教えてくれないと思ったからだ。
「まぁそう言う訳だ。休息くらい取れ。」
じゃぁな、と言って湊川は扉の方向へスタスタと歩いて行った。
「そうだ髙野。一個言い忘れたがお前は藤見に自分のことで傷つく人がいる事を忘れるなと言ったそうだな。ならばそれはお前も同じだ。
たとえお前の頭脳がどんなに優秀であろうとも、人間であることは否定のしようが無い。なら、その優秀な頭脳を使い過ぎて倒れたりするなよ。」
髙野は何も言い返せなかった。
自分がこのまま誰にも止められずに進んでいけば如何なるかは___容易に想像が着いたからだ。
湊川が居なくなった研究室は怖いほど静かだった。
そのせいか酷く
『倒れるなよ』
その言葉が部屋に反響している気がした。
髙野は藤見が何時間か前に入れた冷めたコーヒーを口に含んだ。
カフェインを摂取したと言うのに不思議と眠気が襲ってきた。
このまま眠ってしまえば明日藤見にきっと何か言われる。
そんな事は頭では分かっていても片付けようと言う気力は少しも湧かなかった。
(私は…私は、自分の手でこの事件を終わりにしたい…でも…)
『倒れるなよ』
その言葉がうるさいほど頭の中に反響する。
(もし、私が倒れて誰かが悲しむのなら、それも嫌だ...)
わがままな考えだとは分かっていながらもそのどちらか片方も、両方を否定することは出来なかった。
(私は…どうすれば良い?どうするのが正しくて、どうするのが皆が悲しまなくて済むんだ…
誰でも良い。誰も良い。だから…誰か、答えを教えて欲しい…)
そこまで考えると髙野の意識は闇へと沈んだ。
ー翌朝ー
時計は午前8:00を示していた。
未だ半分寝ている頭を無理やり起こして藤見はいつもより少し遅く職場へ着いた。
研究室のドアを開けると目の前の机に髙野が突っ伏して寝ていた。
自身が羽織っていたコートを高野に被せると藤見の目は自然と机の上の模型へと向かった。
それを見つめながら藤見は昨晩の電話を思い出していた。
「事件現場の見取り図?」
あぁ、と坂田の短い返事が返ってきたのをよく覚えている。
『そうだ。随分と古くはなってたが一応残ってはいた。 感謝しろよ。誕生日を返上して働いた上に普通はこんな資料を一般人には渡せないんだからな。』
藤見はそこでようやく坂田の誕生日がクリスマスだった事を思い出した。
「ありがとうございます。 あと坂田さんって誕生日クリスマスでしたよね。遅いですがおめでとうございます。」
『なぁ…もしかしてだがお前俺の誕生日忘れてたのか?』
「ええ、済みません。人の誕生日を覚えるのは苦手な様で。」
坂田ははぁ、とため息をついた後に珍しく少し真剣そうな声で言った。
『そうかい、そうかい。まぁ別に構わねぇよ。それより気になるのは高野の方だ。」
「髙野先生?」
率直な疑問を口に出すと坂田はすぐに答えた。
『あぁ、あいつな、いつもは誕生日の時は直ぐに連絡くれるんだが今回は何にもなくてよ。
それだけなら別にいいんだが実は髙野が連絡してこなかった時はそのすぐ後に大体なんか起きんだよ。
1回目は髙野の友人が事故に遭った。
2回目は確か…あいつの養母さんが癌だって申告されてたはずだ。
まぁ幸いその養母さんは早期の発見で大分良くなってきたらしいがな。』
参考にします、とだけ言って藤見は電話を切った。
そして藤見の前には坂田から送られてきた現場の見取り図と髙野の模型があった。
机の上に置いてある模型はその見取り図と完全一致していた。
(髙野先生も先生で何か調査を…?)
そこまで考えると髙野が飛び起きるように起きた。
藤見にはその顔が何かに恐怖しているような顔に見えた。
はっはっ、と浅い呼吸を繰り返しながら藤見の存在に気づいた髙野はそちらへ向き直った。
「…あぁ、藤見君か…悪いね、昨日寝落ちしちゃったようで。 今は何時だい?」
暫くぼうっとしているうちに15分ほど経っていたようで藤見は「8時15分です。」とだけ答えた。
「そうか…ありがとう藤見君。 取り敢えず私は資料の最終確認でもしてくるよ。」
髙野はそれだけ言って研究室を出ようとした。
「髙野先生」
藤見は思わず声を掛けた。
髙野の動きはドアに手を掛けるすぐ前で止まった。
「先生は、やはり何かを調べてますよね? 別にそれを駄目だというつもりはありません。
でも、教えてください。先生が事件の事を調べているというのなら、解決を速めるためにも調べたことを教えて欲しいです。」
それは小さな願望だった。
髙野は一つ息を吸い込んだ後に言った。
「藤見君。それは君があの事件について調べていることを自白しているようなものだ。
君は恐らくそれを隠そうとしている。言ってしまっていいのかい?
それに…」
髙野は一度言葉を切って藤見に向き直った。
「それに…これは私の事件だ。
自分の事くらい自分で出来るようになりたい。
自立と言うやつかな。」
君も私を守るために隠れて色々とやっているのかもしれない。
だが、私も君にも…誰にも傷ついてほしくないんだ。
だから、もしこの願いを君が許可してくれるのなら、君は…事件の事は以後、考えるな。
それだけだ。」
その声が酷く自虐気味に聞こえたのは気のせいだろうか。
ドアがぱたんと閉まる音がやけに大きく聞こえた。
髙野はスタスタと廊下を歩いていた。
自分でもどこへ行こうとしているのかは分からなかった。
ただ、今は研究室の空気が酷く暑苦しく感じた。
自販機の横に思わず腰を下ろした。
誰にも見つからないでここに居たい…
髙野はそう思いながら体育座りになった自分の足を抱えた。
自分が何をしたいのかも分からずただ体を小さくするだけだった。
幸いその日は最初の講義も遅い時間帯だった為どのくらいの時間かそこに座り込んでいた。
不意に冷たい感覚が頬に触れた。
思わず反射神経で身をのけぞらせた。
こんな悪ふざけをするのは誰かと思い視線を上げると湊川が立っていた。
「生きてたのか髙野。石像にでもなったのかと思った。」
真顔で言い放つので「んな簡単に死んでたまるか。 真面目に不真面目になるんじゃない。」
湊川は頭を少し搔きむしった後に金縁眼鏡をくいっと押し上げると
「悪かったな驚かせて。 話は変わるがお前は何でこんな所に居る?
どう見ても仕事をしてるようには見えなくてな。」
髙野は一瞬湊川から目を逸らした。
「ちょっとした休憩よ。 そんな事言わなくてもあんたなら分かるでしょ?」
何かを誤魔化すように呆れた声で言うと、湊川は少し考えた顔をした後に
「あぁ分かるさ。お前がただ休憩しているだけじゃ無いってことくらいはな。」
体がびくりと反応するのを隠しきれなかった。
「僕も詳しい事は知らない。 ただ…一人で抱え込むのは辞めろ。それだけだ。」
「じゃぁさ…」
そこからは言葉が少し詰まった。
「じゃぁさ、1個質問したい…
あんたはさ…面倒事が嫌いでしょ…なら、なら何でそんなこと言うの?」
半ば叫びだった。
湊川は一瞬、ほんの一瞬目を見開いた。
「…確かに…確かに僕は面倒事が嫌いだ。
だが、このまま放置すればもっと大きな面倒事になる。
それはもっと嫌だ。 それ以外に何か理由がいるか?
悪かったな。 説教臭くなってしまって。」
髙野は何も言わなかった。
否、言えなかった。
湊川は何も言わずにそのまま立ち去った。
数学科第二研究室のドアはノックされずに開かれた。
湊川は机に突っ伏している藤見の頭のくしゃくしゃと撫でた。
「ちょ…湊川先生…頭をがしがしながらなでるのは辞めてください。」
不貞腐れながらそう言っても湊川はそんな事知ったこっちゃない。
「辞めて欲しいなら一つ条件がある。」
「何です?」
そう言うと湊川の手がピタリと止まった。
「髙野と仲直りしろ。それだけだ。」
藤見は暫く返事をしなかった。
「…別に良いです。でも…今回はほぼほぼ僕が悪いと思うんです。だから…許してもらえるか、ってだけです。」
湊川はわざとらしく大きなため息をついた。
「阿呆かお前は。お前もそこそこ髙野と仕事してるだろ。なら分かるはずだ。高野の心はそこまで狭いわけじゃないって事はな。
それにお前が自分が悪いと思ってるならそれを伝えればいいだけだ。
さっさと仲直りしろよ…
仲介役も面倒なんだから。 手数料を払ってほしいくらいだ。」
そう言いながらも湊川の顔は真剣そのものだった。
「それに、あいつは多分怒っちゃいない。」
藤見は思わず顔を上げた。
「お前と…どう接すればいいか分かってないだけだ。」
その言葉に藤見は何も言えなかった。
じゃ、とだけ言うと湊川は部屋を出て行こうとした。
「湊川先生。」
湊川が出ていく前に出た声は自分が考えていたより遥かに小さな声だったが、恐ろしい程静かな部屋では大きく響いた。
「湊川先生は…物理学者ですよね。」
返事は無かった。
「…あの時、少し前、湊川先生は言いましたよね。
『じゃあ一個言っておく。 万に一つ…いや、億に一つだが、もしも高野が男と会って顔を青白くしてたらお前はここに来い。 それだけだ。』…って…。
先生が物理学者なら、‘‘万に一つ‘‘なんて言うのは何か理由があるんですか?」
湊川は大きく溜息をついて見せた。
「あのなぁ、僕は職業病か何かか?
確かに僕は物理学者だ。
でも、そんな焦った時までそれを貫かなければならない理由は一個もない。
それは髙野も同じだ。
焦った…と、言うよりは吃驚してたんだろーな。
お前が、事件の真相に、ここまで近づいた事に。
そんな時は髙野の野郎もあのほんわかした仮面を付け続けるのも無理だったんだろうな。」
じゃ、と言うと湊川は研究室を出て言った。
湊川は物理学科第八研究室へと足を動かしていた。
ドアを開けると思わず溜息が零れた。
「どうしたんですか 酷い落ち込み様に見えますが。」
目つきの悪い目で彼女___水野百合は言った。
「別に落ち込んじゃ居ない、誰かさんのせいで疲労が溜まっただけだ。」
「誰かさん?」
水野は眉根を寄せるとそう言った。
「ああ、厄介事に巻き込まれた。」
水野はへぇ、と興味のなさそうな返事をした。
「湊川先生って面倒事とか厄介事、嫌いなのに結構自分から首突っ込んでません?
私にはそんな気がしてならないのですが。
ホントはあー言うのに巻き込まれるの、結構好きなんじゃないですか」
「嫌だね。ぜーったい」
子供っぽい声が水野の耳に飛んできた。
「あんな事に巻き込まれて何の得になるって言うんだい?」
そんな愚痴を聞き流しつつ水野は小さく溜息をついて机に肘をついた。
「素の湊川先生ってホント子供っぽいですよね…何時もはもっと大人っぽい感じなのに。」
「うるさいなぁ…良いだろ別に。 それこそあんな冷徹そうな仮面をかぶるのだって…」
湊川はそれ以上を言おうとして言葉が出てこなかった。
自分がさっき言った言葉を思い出していた。
『あのほんわかした仮面を付け続けるのも無理だったんだろうな。』
「湊川先生?」
そう水野に呼ばれて湊川はようやく返事を出来た。
そして一個の事実に気が付いた。
(あぁそうか…僕も、髙野と同じ立場だったのか。)
そう思うと不思議と頬が緩んだ。
「さっきとは一転して随分と上機嫌なように見えますけど。何か良い事でもあったんですか?」
「いいや…何でもない。」
その顔は水野も驚くほど穏やかだった。
「…所でですが、何故あの時湊川先生は‘‘億に一つ‘‘なんて確率を出したんですか?
‘‘億に一つ‘‘なんて無視して良いレベルのノイズだと思います。」
「その質問に答える前にちょっと良いか水野。」
「お前あの時お手洗い行ってたろ。じゃぁ何で知ってんだ?」
湊川が頭に?を浮かべてそう言うと水野は子供っぽい笑みを浮かべた。
「あの時丁度お手洗いから戻ったのですが何やら面白い話をしていたようなので少し聞き耳を立てていました。一応謝っておきます。すみません。」
「あのなぁ…盗聴すんなよ…」
「はいはい。気が向いたら気を付けます。」
「気が向いたら禁止。」
湊川が呆れの表情を浮かべながらそう言うと水野はクスッと笑って「はいはい。」と答えた。
「はいはいも禁止。」
そんなやり取りが物理学科第八研究室に響き渡っていた。
髙野は数学科第二研究室のドアの前から動けていなかった。
(今ドアをガチャってやって当たり前みたいに入って謝れば良いんだけど…その行動がどれだけ大変か分かってんのかなぁ湊川は…)
そんな事を考えていると微動だにしなかったドアが突然開いた。
そしてそんなことが起こるとは全く考えていなかった髙野は持ち前の運動神経の悪さでそのドアを回避できるはずもなく、どん、と音を立てて髙野の顔面に直撃した。
痛った…と顔をしかめていると焦ったような藤見の顔が髙野の眼中に映った。
「あ、えっと…あの、髙野先生…」
藤見は自分を落ち着けるためかも知らないが唇をかみしめた。
「あの…取り敢えずすみませんでした。」
髙野が突然の事に目を見開いているとその表情をどう捉えたのか、
「あ…すみません。突然そんな事言われても困りますよね。」
ややそっぽを向いているのは照れ隠しのつもりなのかどうかも分からなかったが
「ごめんね。こっちこそ。」
言葉は思っていたより自然に出た。
「確かにこれは私の事件だ。だけどね、とある阿呆に諭されたんだ。
一人で抱え込むな…ってね。 藤見君。君が今何の役に立たなそうな情報であっても、何か知っているのなら教えて欲しい。 この事件を終わらせる為にね。」
藤見は久しぶりにふふっと笑った。
「良いんですか? ‘‘自立‘‘とやらは?」
「今更それをぶり返さないでくれよ。 でもね、私だって完全にそれを諦めてるわけじゃない。」
「どういう事です?」
「そのままの意味だよ、この事件は私が終わらせる、って言葉のね。」
「…つまり、良い所を持ってくって事ですか。」
見慣れた子供っぽい笑みを浮かべて「察しが良いね、藤見君は。」
その時後ろにぬるっと人の気配が近づいた。
「で?とりあえず阿保たちの内乱は終わったのか?」
「坂田さん…」
「あぁ、何となく事情は知ってる。 で、まぁ、新しい情報が手に入ったから、それを見せに来ただけだ。」
「そう…じゃぁ今回の情報交換会はこの情報も交えるとしようか。」
ー数学科第二研究室ー
「藤見君は見たことあるだろうけど、一応説明しとくね。
これが私の記憶の中にあるあの家の見取り図だよ。」
そう言って例の模型を指さした。
【玄関】
│
│(廊下)
│
┌──────────────┐
│ 居間 │
│ │
│ 押し入れ │
│ (右側) │
│ │
│ 階段↑(左奥) │
│ │
└──────────────┘
そして藤見は坂田から受け取った現場の見取り図を見比べていた。
【玄関】
│
│(廊下)
│
┌──────────────┐
│ 居間 │
│ │
│ 階段↑ │
│ (左側) │
│ ┌──────┐ │
│ │押し入れ│ │
│ │(階段下)│ │
│ └──────┘ │
│ │
└──────────────┘
無論、両方とも同じ場所の物なので完全一致してしている___はずだった。
「髙野先生。」
うん?、と髙野は模型から目を離した。
藤見は玄関の階段を指さした。
「一箇所だけ、この見取り図と模型で違う場所があります。」
坂田さんが持ってきてくださった資料だと押し入れは階段裏にありますが、
髙野先生の模型だと、玄関右側にあります。
一見してみれば、ただの置き間違いかもしれませんが、髙野先生は押し入れに隠れて居たんですよね。」
藤見は全てを言わなかった。
何故なら、同じ場所にいるこの秀才と天才ならば、言わずともすべてが伝わると思ったからだ。
坂田は目線を髙野に向けた。
そう、階段の位置が完全に逆だったのだ。
そして、押し入れの位置も逆、
そうすれば出される結論はただ一つ。
___髙野の視界は成立しないのだ。
「…髙野。率直に言う。お前の証言では犯人の姿を見ることはできない。 つまり___証言の前提が崩壊する。」
その後は重苦しい沈黙だった。
髙野は俯いたまま何も言わなかった。
「じゃぁさ…」
顔を上げないまま、髙野が不意に口を開いた。
「私は、何を見たんだろうね…?」
その声は少し震えているように感じた。
藤見は何かを言おうと口を開いた。
だが、不思議と声は出なかった。
自分でも何を言おうとしたのかは分からなかった。
「さて、私はそろそろ行くよ。 この後授業があるものでね。」
髙野はそれだけ言うと何事も無かったように研究室を後にした。
時計は丁度10:30を示していた。
髙野はパソコンを持ったまま講義室へと向かっていた。
だが途中で、不意に立ち止まった。
どんなに考えないようにしても頭に浮かんでいるのはあの事件。
「押し入れ…」
思わず声が出た。
懐かしい記憶が蘇る。
そしてその懐かしい記憶は同時に怖い記憶でもある。
昔から狭い場所が不思議と好きだった。
あの日も、押し入れに入って布団の上で飛び跳ねていた気がする。
そんなにずっと居ると寒いよ、と母の声が聞こえていた気がする。
本でも読むから出ておいで、と父の声が聞こえていた気がする。
そしてそれは、何の変哲もなく、とても平和な時間だった___途中までは。
大きな音で目が覚めた。
そしてそれは、音と言うよりは声の様だった。
幼心にそれを怖いと認識した様で、その押し入れの中から出たいとは思わなかった。
だが、幸か不幸か、押し入れの襖は少し開いていた。
幼子が恐怖心とほんの少しの好奇心で部屋を覗くとその瞳に映ったものは___
鮮血と、男のシルエットだった。
男がこちらを振り向いたような気がして急いで隅に隠れた。
どんなに男はこちらを見ていないと自分の心に言い聞かせても、
心臓はやけにうるさく、そして早く動いていた。
それからどのくらいが経っただろうか。
不意に押し入れの襖が開いた。
肩がびくりと反応したのをよく覚えている。
シルエットの男かと思った。
殺されるのかと思った。
だがそこに居たのは警察の制服を着た男だった。
「ここでご遺体が発見されたという通報があったんだ。 お嬢ちゃんは大丈夫かい?」
ご遺体、その言葉で自分の親が死んだことは怖い程すぐに理解できた。
そこから交番に連れていかれるまではずっと目を閉じていた。
開いたらまた、あの残場帝大学から三十分ほど車を走らせると『シャドゥコート陽影』と書かれた表札が見えてくる。
そこの426号室が髙野秋の家である。
ポストの中をいつものように覗くと珍しく一枚の手紙が入っていた。
差出人の名前は書かれていなかった。
手紙の内容は短かった。
___あの夜、君は見ていたね___
差出人の見当はついた。だが
(そんな事…考えたくもない。 吐き気がする。)
髙野は急いで部屋に入った。
この吐き気はあの事のせいだと心の中で言い訳をしながら。
「じゃぁ、もう兵堂、東京にいないんですか?」
あぁ、と電話越しに坂田の声が聞こえた。
『あいつんとこに行った翌日の様だ。
とりあえず今は俺が事件の事調べて下村が兵堂の事を調べてるって感じだから詳しいことは下村に聞かんと分らん。 お前、確か下村とも連絡先交換してたろ。 ならそっちで聞いた方が早い。
ま、それで下村と仲良くなれりゃぁいいんじゃねーの?』
最後の方はにやけているのが音声通話でも伝わってきたため電話を切ってやろうかと思ったがあと一歩で踏みとどまった。
電話を切った後藤見は下村には電話せずに絡まった糸を解いていくように今回の事件内容を頭の中で整理した。
(兵堂はもう...東京にはいない。ならば警視庁の管轄ではない。クリスマスどころか正月までに解決するのも難航するだろうな。)
アパートのベランダから窓を見ると少し早めの初雪が降っていた。
(まぁ、今日はもうイブだ。 クリスマスまでの解決は無理だろうな。)
心の中でそう思いながら藤見は晩御飯のシチューを口に運んだ。
カップルたちが町を練り歩くクリスマス、12月25日は日曜日だった。
そんな景色を、横目に見ながら藤見はパソコンを打った。
陽影町一家襲撃事件
そう打つと見覚えのある名前の会社がいくつかの記事を作っていた。
――――――――――――――――――
陽影町一家襲撃事件、被告に執行猶予付き有罪判決
――――――――――――――――――
1999年2月15日 地方裁判所
26年前に発生した「陽影町一家襲撃事件」で起訴されていた無職・兵頭鏡介被告(当時28)に対し、地方裁判所は○日、懲役1年・執行猶予1年の有罪判決を言い渡した。
本事件は、陽影町の住宅で一家が何者かに襲撃され、両親が死亡、当時6歳だった長女が生存した凄惨な事件として知られている。
被告は事件当時から一貫して黙秘を続けており、殺意や致死行為そのものについては立証に至らなかった。
裁判では、被告が事件当夜に現場住宅へ侵入していた事実や、被害者に対する暴行行為については認定されたものの、死亡との直接的な因果関係については証拠不十分として認められなかった。
裁判長は判決理由の中で、
「被告の行為が事件に深く関与していたことは否定できないが、殺害行為を直接裏付ける証拠が存在しない以上、罪責は限定的に判断せざるを得ない」
と述べた。
この判決により、事件は形式上「解決」とされたが、被害者遺族や関係者の間では、真相が明らかにされないまま幕引きとなったことへの疑問の声も根強い。
なお、被告側・検察側ともに控訴についてはコメントを控えている。
確認は、これで十分なはずだった。
――少なくとも、今は。
藤見はパソコンと同時に自分の目も閉じた。
クリスマスから一夜。
まだ半分寝ている頭を無理やり起こして数学科第二研究室のドアを開けると珍しくぱっちりと目を開けている髙野が電話をしていた。
何時もならばむしろ髙野が半分寝ていて起こすのが大変なのにな…と心の中で不平不満と呼ぶかさえ分からない言葉を発していると髙野は「分かった。」とだけ言って電話を切った。
そして怖いくらい真剣な顔で髙野は藤見に向き直り言った。
「藤見君…君は、何を調べてる。」
見たこともない顔に目玉が飛び出すかと思ったのを抑えつつ藤見は言った。
「髙野先生。それは上司としての質問ですか?それとも興味での質問ですか?」
髙野は呆れ顔で
「興味本位だよ。」と返した。
「ならば回答を拒否します。 それより髙野先生。僕は今先生の質問で一つ新たな疑問が思い浮かびました。」
「何だい?」
「仮に、仮にです。僕が髙野先生の事について何か調べているとしましょう。
ならば貴方は…なぜそれに気づいたのです。」
純粋な疑問だった。
髙野のいない場所でしか今回は動いていない。
ならばどうやって気付いたのか。
それだけだ。
少しの沈黙の後、髙野はくすりと笑って答えた。
「君は私からの質問の回答を拒否した。 ならば私にも、拒否権は存在するんじゃないかい?」
「つまりそれは回答を拒否すると?」
「解釈は好きにしてくれて構わない。 さぁ仕事に戻るよ藤見君。」
もたれ掛かっていた壁から背中を離したその背中は不思議と大きく見えた。
「藤見君。君が私の事を模索するのは構わない。ただ忘れるな。
君の本業は私の事を調べる事ではない。それに、それで倒れられたりする方がよっぽど困る。
君の事で困る人が居ることを、忘れるな。」
藤見は小さく溜息をついた。
その無理難題に答えるのは正直に言って難しいとは思った。
だが、自分の事を心配してくれる人が居るのは純粋に嬉しかった。
その日の18時頃
髙野は藤見すらいない研究室に居た。
居ない、と言うよりは髙野が無理矢理帰らさせたという表現の方が正しいかもしれない。
机の上に置いてあるのは幾つかの図形のようだった。
(こんなだったかな…あの家の間取り図は。)
仮に幾ら藤見達が事件について調べていたとしても、髙野は全ての情報を警察に提供したわけではない。
何故かと聞かれれば答えは一つだけだ。
場面緘黙症と言う病気がある。
心理的な原因がある場合に引き起こされる病気で特定の場所で話せないと言った症状がある。
髙野の場合は‘場所‘ではなく‘事‘で話せない症状だった。
つまり事件の事になると話せなくなると言う事だ。
ではなぜすべての事を話していないと言わないのかと言えばそれも簡単だ。
途中までは答えれていたからである。
だが、6,7割程事件の情報提供をした頃から急に話せなくなったのは髙野の記憶の中に色濃く残っている。
今は多少話せるだろうが個人的に話したくない。
それだけだった。
ただ、嫌だと思ってもやらなければならない時は何時か来る。
(それが今か…)
髙野は空と言う名の天井を仰ぎながら思った。
(私は…自分の事が嫌いだ。あの時何もできなかった自分が。家族を守れなかった自分が。
幾ら外見で明るく振舞おうとトラウマと言うのは簡単に消えるものではない…
そして、また誰も守れないのなら、私はきっと、もっと自分の事が嫌いになる。
私は…自分が傷つくことよりも…誰かが傷つくことの方が嫌いだ…なら、少しでも、役に立て。なら、誰かが傷つくことのないように、少しでも努力をしろ。…そのくらいは、私でも…出来るだろう。)
ならば手始めに記憶を思い出すのが先だ。
随分と昔にはなるが忘れるというのはきっと不可能だ。
こうして模型を見ているだけでも随分と記憶が戻ってくる。
髙野自身も何を見たのかはっきりと覚えているわけではない。
(だが、今の私は准教授だ。この大学の准教授だ。 なら、それに相応しい事をするだけだ。)
暫く見ていると嫌と言うほど記憶が込み上げてきた。
それからどのくらいが経っただろうか。
時は12月と言うらしくもう18時に暗かった時点で周辺の暗さで時間を推測することはできない。
「何を一人で抱え込んでいるつもりだ。髙野の阿呆が。」
気付かないうちに湊川が後ろに立っていた。
どうやら帰るつもりだったようでもう既にコートを羽織っていた。
「何用かな。湊。」
「略すな。なぜお前は時々僕を略す。」
「別にいいでしょ。大して変わんないもん。」
「大いに変わる。それだったらまずお前のその髙野の旧字へのこだわりは何だ。
高野でも良いだろう。」
「それは駄目。」
「何でだ。」
「何となく。」
髙野はそのやり取りで一度も湊川の顔を見ることが出来なかった。
何故なら自分でも顔が青白いことに気づいていたからだ。
「で、用件は。わざわざ帰るところだったのに寄ってきたって事は何か理由があるんでしょ。」
湊川はどかっとソファに腰を下ろすとすこし目線を上げた。
「そうだな…先ず1つはもう8時なのにここの電気がついていたから…それと…」
湊川は一度言葉を切った。
切った、と言うよりも詰まらせた、と言う方が正しいのだろうと髙野は思った。
「それと、何?」
「それと、お前の部下に最近上司の様子が少しおかしい気がするから見ておいて欲しいと言われてな。」
髙野は思わずバッと湊川の顔を見た。
「随分と青白い顔の様だが、休息は取らなくて良いのか?」
「そんなことは今は如何でも良い。それよりその依頼主の名は何!?」
自分の声が想像以上に荒ぶっていることに気づいた。
「それを言わなければならないほどお前は鈍感か?
鈍感だ。と言う声が出なかった。
たとえ言ってもこの男はのらりくらり回避し続け教えてくれないと思ったからだ。
「まぁそう言う訳だ。休息くらい取れ。」
じゃぁな、と言って湊川は扉の方向へスタスタと歩いて行った。
「そうだ髙野。一個言い忘れたがお前は藤見に自分のことで傷つく人がいる事を忘れるなと言ったそうだな。ならばそれはお前も同じだ。
たとえお前の頭脳がどんなに優秀であろうとも、人間であることは否定のしようが無い。なら、その優秀な頭脳を使い過ぎて倒れたりするなよ。」
髙野は何も言い返せなかった。
自分がこのまま誰にも止められずに進んでいけば如何なるかは___容易に想像が着いたからだ。
湊川が居なくなった研究室は怖いほど静かだった。
そのせいか酷く
『倒れるなよ』
その言葉が部屋に反響している気がした。
髙野は藤見が何時間か前に入れた冷めたコーヒーを口に含んだ。
カフェインを摂取したと言うのに不思議と眠気が襲ってきた。
このまま眠ってしまえば明日藤見にきっと何か言われる。
そんな事は頭では分かっていても片付けようと言う気力は少しも湧かなかった。
(私は…私は、自分の手でこの事件を終わりにしたい…でも…)
『倒れるなよ』
その言葉がうるさいほど頭の中に反響する。
(もし、私が倒れて誰かが悲しむのなら、それも嫌だ...)
わがままな考えだとは分かっていながらもそのどちらか片方も、両方を否定することは出来なかった。
(私は…どうすれば良い?どうするのが正しくて、どうするのが皆が悲しまなくて済むんだ…
誰でも良い。誰も良い。だから…誰か、答えを教えて欲しい…)
そこまで考えると髙野の意識は闇へと沈んだ。
ー翌朝ー
時計は午前8:00を示していた。
未だ半分寝ている頭を無理やり起こして藤見はいつもより少し遅く職場へ着いた。
研究室のドアを開けると目の前の机に髙野が突っ伏して寝ていた。
自身が羽織っていたコートを高野に被せると藤見の目は自然と机の上の模型へと向かった。
それを見つめながら藤見は昨晩の電話を思い出していた。
「事件現場の見取り図?」
あぁ、と坂田の短い返事が返ってきたのをよく覚えている。
『そうだ。随分と古くはなってたが一応残ってはいた。 感謝しろよ。誕生日を返上して働いた上に普通はこんな資料を一般人には渡せないんだからな。』
藤見はそこでようやく坂田の誕生日がクリスマスだった事を思い出した。
「ありがとうございます。 あと坂田さんって誕生日クリスマスでしたよね。遅いですがおめでとうございます。」
『なぁ…もしかしてだがお前俺の誕生日忘れてたのか?』
「ええ、済みません。人の誕生日を覚えるのは苦手な様で。」
坂田ははぁ、とため息をついた後に珍しく少し真剣そうな声で言った。
『そうかい、そうかい。まぁ別に構わねぇよ。それより気になるのは高野の方だ。」
「髙野先生?」
率直な疑問を口に出すと坂田はすぐに答えた。
『あぁ、あいつな、いつもは誕生日の時は直ぐに連絡くれるんだが今回は何にもなくてよ。
それだけなら別にいいんだが実は髙野が連絡してこなかった時はそのすぐ後に大体なんか起きんだよ。
1回目は髙野の友人が事故に遭った。
2回目は確か…あいつの養母さんが癌だって申告されてたはずだ。
まぁ幸いその養母さんは早期の発見で大分良くなってきたらしいがな。』
参考にします、とだけ言って藤見は電話を切った。
そして藤見の前には坂田から送られてきた現場の見取り図と髙野の模型があった。
机の上に置いてある模型はその見取り図と完全一致していた。
(髙野先生も先生で何か調査を…?)
そこまで考えると髙野が飛び起きるように起きた。
藤見にはその顔が何かに恐怖しているような顔に見えた。
はっはっ、と浅い呼吸を繰り返しながら藤見の存在に気づいた髙野はそちらへ向き直った。
「…あぁ、藤見君か…悪いね、昨日寝落ちしちゃったようで。 今は何時だい?」
暫くぼうっとしているうちに15分ほど経っていたようで藤見は「8時15分です。」とだけ答えた。
「そうか…ありがとう藤見君。 取り敢えず私は資料の最終確認でもしてくるよ。」
髙野はそれだけ言って研究室を出ようとした。
「髙野先生」
藤見は思わず声を掛けた。
髙野の動きはドアに手を掛けるすぐ前で止まった。
「先生は、やはり何かを調べてますよね? 別にそれを駄目だというつもりはありません。
でも、教えてください。先生が事件の事を調べているというのなら、解決を速めるためにも調べたことを教えて欲しいです。」
それは小さな願望だった。
髙野は一つ息を吸い込んだ後に言った。
「藤見君。それは君があの事件について調べていることを自白しているようなものだ。
君は恐らくそれを隠そうとしている。言ってしまっていいのかい?
それに…」
髙野は一度言葉を切って藤見に向き直った。
「それに…これは私の事件だ。
自分の事くらい自分で出来るようになりたい。
自立と言うやつかな。」
君も私を守るために隠れて色々とやっているのかもしれない。
だが、私も君にも…誰にも傷ついてほしくないんだ。
だから、もしこの願いを君が許可してくれるのなら、君は…事件の事は以後、考えるな。
それだけだ。」
その声が酷く自虐気味に聞こえたのは気のせいだろうか。
ドアがぱたんと閉まる音がやけに大きく聞こえた。
髙野はスタスタと廊下を歩いていた。
自分でもどこへ行こうとしているのかは分からなかった。
ただ、今は研究室の空気が酷く暑苦しく感じた。
自販機の横に思わず腰を下ろした。
誰にも見つからないでここに居たい…
髙野はそう思いながら体育座りになった自分の足を抱えた。
自分が何をしたいのかも分からずただ体を小さくするだけだった。
幸いその日は最初の講義も遅い時間帯だった為どのくらいの時間かそこに座り込んでいた。
不意に冷たい感覚が頬に触れた。
思わず反射神経で身をのけぞらせた。
こんな悪ふざけをするのは誰かと思い視線を上げると湊川が立っていた。
「生きてたのか髙野。石像にでもなったのかと思った。」
真顔で言い放つので「んな簡単に死んでたまるか。 真面目に不真面目になるんじゃない。」
湊川は頭を少し搔きむしった後に金縁眼鏡をくいっと押し上げると
「悪かったな驚かせて。 話は変わるがお前は何でこんな所に居る?
どう見ても仕事をしてるようには見えなくてな。」
髙野は一瞬湊川から目を逸らした。
「ちょっとした休憩よ。 そんな事言わなくてもあんたなら分かるでしょ?」
何かを誤魔化すように呆れた声で言うと、湊川は少し考えた顔をした後に
「あぁ分かるさ。お前がただ休憩しているだけじゃ無いってことくらいはな。」
体がびくりと反応するのを隠しきれなかった。
「僕も詳しい事は知らない。 ただ…一人で抱え込むのは辞めろ。それだけだ。」
「じゃぁさ…」
そこからは言葉が少し詰まった。
「じゃぁさ、1個質問したい…
あんたはさ…面倒事が嫌いでしょ…なら、なら何でそんなこと言うの?」
半ば叫びだった。
湊川は一瞬、ほんの一瞬目を見開いた。
「…確かに…確かに僕は面倒事が嫌いだ。
だが、このまま放置すればもっと大きな面倒事になる。
それはもっと嫌だ。 それ以外に何か理由がいるか?
悪かったな。 説教臭くなってしまって。」
髙野は何も言わなかった。
否、言えなかった。
湊川は何も言わずにそのまま立ち去った。
数学科第二研究室のドアはノックされずに開かれた。
湊川は机に突っ伏している藤見の頭のくしゃくしゃと撫でた。
「ちょ…湊川先生…頭をがしがしながらなでるのは辞めてください。」
不貞腐れながらそう言っても湊川はそんな事知ったこっちゃない。
「辞めて欲しいなら一つ条件がある。」
「何です?」
そう言うと湊川の手がピタリと止まった。
「髙野と仲直りしろ。それだけだ。」
藤見は暫く返事をしなかった。
「…別に良いです。でも…今回はほぼほぼ僕が悪いと思うんです。だから…許してもらえるか、ってだけです。」
湊川はわざとらしく大きなため息をついた。
「阿呆かお前は。お前もそこそこ髙野と仕事してるだろ。なら分かるはずだ。高野の心はそこまで狭いわけじゃないって事はな。
それにお前が自分が悪いと思ってるならそれを伝えればいいだけだ。
さっさと仲直りしろよ…
仲介役も面倒なんだから。 手数料を払ってほしいくらいだ。」
そう言いながらも湊川の顔は真剣そのものだった。
「それに、あいつは多分怒っちゃいない。」
藤見は思わず顔を上げた。
「お前と…どう接すればいいか分かってないだけだ。」
その言葉に藤見は何も言えなかった。
じゃ、とだけ言うと湊川は部屋を出て行こうとした。
「湊川先生。」
湊川が出ていく前に出た声は自分が考えていたより遥かに小さな声だったが、恐ろしい程静かな部屋では大きく響いた。
「湊川先生は…物理学者ですよね。」
返事は無かった。
「…あの時、少し前、湊川先生は言いましたよね。
『じゃあ一個言っておく。 万に一つ…いや、億に一つだが、もしも高野が男と会って顔を青白くしてたらお前はここに来い。 それだけだ。』…って…。
先生が物理学者なら、‘‘万に一つ‘‘なんて言うのは何か理由があるんですか?」
湊川は大きく溜息をついて見せた。
「あのなぁ、僕は職業病か何かか?
確かに僕は物理学者だ。
でも、そんな焦った時までそれを貫かなければならない理由は一個もない。
それは髙野も同じだ。
焦った…と、言うよりは吃驚してたんだろーな。
お前が、事件の真相に、ここまで近づいた事に。
そんな時は髙野の野郎もあのほんわかした仮面を付け続けるのも無理だったんだろうな。」
じゃ、と言うと湊川は研究室を出て言った。
湊川は物理学科第八研究室へと足を動かしていた。
ドアを開けると思わず溜息が零れた。
「どうしたんですか 酷い落ち込み様に見えますが。」
目つきの悪い目で彼女___水野百合は言った。
「別に落ち込んじゃ居ない、誰かさんのせいで疲労が溜まっただけだ。」
「誰かさん?」
水野は眉根を寄せるとそう言った。
「ああ、厄介事に巻き込まれた。」
水野はへぇ、と興味のなさそうな返事をした。
「湊川先生って面倒事とか厄介事、嫌いなのに結構自分から首突っ込んでません?
私にはそんな気がしてならないのですが。
ホントはあー言うのに巻き込まれるの、結構好きなんじゃないですか」
「嫌だね。ぜーったい」
子供っぽい声が水野の耳に飛んできた。
「あんな事に巻き込まれて何の得になるって言うんだい?」
そんな愚痴を聞き流しつつ水野は小さく溜息をついて机に肘をついた。
「素の湊川先生ってホント子供っぽいですよね…何時もはもっと大人っぽい感じなのに。」
「うるさいなぁ…良いだろ別に。 それこそあんな冷徹そうな仮面をかぶるのだって…」
湊川はそれ以上を言おうとして言葉が出てこなかった。
自分がさっき言った言葉を思い出していた。
『あのほんわかした仮面を付け続けるのも無理だったんだろうな。』
「湊川先生?」
そう水野に呼ばれて湊川はようやく返事を出来た。
そして一個の事実に気が付いた。
(あぁそうか…僕も、髙野と同じ立場だったのか。)
そう思うと不思議と頬が緩んだ。
「さっきとは一転して随分と上機嫌なように見えますけど。何か良い事でもあったんですか?」
「いいや…何でもない。」
その顔は水野も驚くほど穏やかだった。
「…所でですが、何故あの時湊川先生は‘‘億に一つ‘‘なんて確率を出したんですか?
‘‘億に一つ‘‘なんて無視して良いレベルのノイズだと思います。」
「その質問に答える前にちょっと良いか水野。」
「お前あの時お手洗い行ってたろ。じゃぁ何で知ってんだ?」
湊川が頭に?を浮かべてそう言うと水野は子供っぽい笑みを浮かべた。
「あの時丁度お手洗いから戻ったのですが何やら面白い話をしていたようなので少し聞き耳を立てていました。一応謝っておきます。すみません。」
「あのなぁ…盗聴すんなよ…」
「はいはい。気が向いたら気を付けます。」
「気が向いたら禁止。」
湊川が呆れの表情を浮かべながらそう言うと水野はクスッと笑って「はいはい。」と答えた。
「はいはいも禁止。」
そんなやり取りが物理学科第八研究室に響き渡っていた。
髙野は数学科第二研究室のドアの前から動けていなかった。
(今ドアをガチャってやって当たり前みたいに入って謝れば良いんだけど…その行動がどれだけ大変か分かってんのかなぁ湊川は…)
そんな事を考えていると微動だにしなかったドアが突然開いた。
そしてそんなことが起こるとは全く考えていなかった髙野は持ち前の運動神経の悪さでそのドアを回避できるはずもなく、どん、と音を立てて髙野の顔面に直撃した。
痛った…と顔をしかめていると焦ったような藤見の顔が髙野の眼中に映った。
「あ、えっと…あの、髙野先生…」
藤見は自分を落ち着けるためかも知らないが唇をかみしめた。
「あの…取り敢えずすみませんでした。」
髙野が突然の事に目を見開いているとその表情をどう捉えたのか、
「あ…すみません。突然そんな事言われても困りますよね。」
ややそっぽを向いているのは照れ隠しのつもりなのかどうかも分からなかったが
「ごめんね。こっちこそ。」
言葉は思っていたより自然に出た。
「確かにこれは私の事件だ。だけどね、とある阿呆に諭されたんだ。
一人で抱え込むな…ってね。 藤見君。君が今何の役に立たなそうな情報であっても、何か知っているのなら教えて欲しい。 この事件を終わらせる為にね。」
藤見は久しぶりにふふっと笑った。
「良いんですか? ‘‘自立‘‘とやらは?」
「今更それをぶり返さないでくれよ。 でもね、私だって完全にそれを諦めてるわけじゃない。」
「どういう事です?」
「そのままの意味だよ、この事件は私が終わらせる、って言葉のね。」
「…つまり、良い所を持ってくって事ですか。」
見慣れた子供っぽい笑みを浮かべて「察しが良いね、藤見君は。」
その時後ろにぬるっと人の気配が近づいた。
「で?とりあえず阿保たちの内乱は終わったのか?」
「坂田さん…」
「あぁ、何となく事情は知ってる。 で、まぁ、新しい情報が手に入ったから、それを見せに来ただけだ。」
「そう…じゃぁ今回の情報交換会はこの情報も交えるとしようか。」
ー数学科第二研究室ー
「藤見君は見たことあるだろうけど、一応説明しとくね。
これが私の記憶の中にあるあの家の見取り図だよ。」
そう言って例の模型を指さした。
【玄関】
│
│(廊下)
│
┌──────────────┐
│ 居間 │
│ │
│ 押し入れ │
│ (右側) │
│ │
│ 階段↑(左奥) │
│ │
└──────────────┘
そして藤見は坂田から受け取った現場の見取り図を見比べていた。
【玄関】
│
│(廊下)
│
┌──────────────┐
│ 居間 │
│ │
│ 階段↑ │
│ (左側) │
│ ┌──────┐ │
│ │押し入れ│ │
│ │(階段下)│ │
│ └──────┘ │
│ │
└──────────────┘
無論、両方とも同じ場所の物なので完全一致してしている___はずだった。
「髙野先生。」
うん?、と髙野は模型から目を離した。
藤見は玄関の階段を指さした。
「一箇所だけ、この見取り図と模型で違う場所があります。」
坂田さんが持ってきてくださった資料だと押し入れは階段裏にありますが、
髙野先生の模型だと、玄関右側にあります。
一見してみれば、ただの置き間違いかもしれませんが、髙野先生は押し入れに隠れて居たんですよね。」
藤見は全てを言わなかった。
何故なら、同じ場所にいるこの秀才と天才ならば、言わずともすべてが伝わると思ったからだ。
坂田は目線を髙野に向けた。
そう、階段の位置が完全に逆だったのだ。
そして、押し入れの位置も逆、
そうすれば出される結論はただ一つ。
___髙野の視界は成立しないのだ。
「…髙野。率直に言う。お前の証言では犯人の姿を見ることはできない。 つまり___証言の前提が崩壊する。」
その後は重苦しい沈黙だった。
髙野は俯いたまま何も言わなかった。
「じゃぁさ…」
顔を上げないまま、髙野が不意に口を開いた。
「私は、何を見たんだろうね…?」
その声は少し震えているように感じた。
藤見は何かを言おうと口を開いた。
だが、不思議と声は出なかった。
自分でも何を言おうとしたのかは分からなかった。
「さて、私はそろそろ行くよ。 この後授業があるものでね。」
髙野はそれだけ言うと何事も無かったように研究室を後にした。
時計は丁度10:30を示していた。
髙野はパソコンを持ったまま講義室へと向かっていた。
だが途中で、不意に立ち止まった。
どんなに考えないようにしても頭に浮かんでいるのはあの事件。
「押し入れ…」
思わず声が出た。
懐かしい記憶が蘇る。
そしてその懐かしい記憶は同時に怖い記憶でもある。
昔から狭い場所が不思議と好きだった。
あの日も、押し入れに入って布団の上で飛び跳ねていた気がする。
そんなにずっと居ると寒いよ、と母の声が聞こえていた気がする。
本でも読むから出ておいで、と父の声が聞こえていた気がする。
そしてそれは、何の変哲もなく、とても平和な時間だった___途中までは。
大きな音で目が覚めた。
そしてそれは、音と言うよりは声の様だった。
幼心にそれを怖いと認識した様で、その押し入れの中から出たいとは思わなかった。
だが、幸か不幸か、押し入れの襖は少し開いていた。
幼子が恐怖心とほんの少しの好奇心で部屋を覗くとその瞳に映ったものは___
鮮血と、男のシルエットだった。
男がこちらを振り向いたような気がして急いで隅に隠れた。
どんなに男はこちらを見ていないと自分の心に言い聞かせても、
心臓はやけにうるさく、そして早く動いていた。
それからどのくらいが経っただろうか。
不意に押し入れの襖が開いた。
肩がびくりと反応したのをよく覚えている。
シルエットの男かと思った。
殺されるのかと思った。
だがそこに居たのは警察の制服を着た男だった。
「ここでご遺体が発見されたという通報があったんだ。 お嬢ちゃんは大丈夫かい?」
ご遺体、その言葉で自分の親が死んだことは怖い程すぐに理解できた。
そこから交番に連れていかれるまではずっと目を閉じていた。
開いたらまた、あの残状が目にチラつく気がした。
そしてあの記憶が幻覚なのだとしたら
「___本当に、私は何を見たんだろうね___」
そして今でも、何が正解で、何をしたら親が喜ぶのか分からない。
「ねぇ、父さん、母さん、私はどうすればいいのかな。」
それは少しだけ出た、本音だった。
すいません、上げるのめっちゃ遅くなりました。
だいぶ長いので読みづらかったらコメントで教えてもらえると幸いです!
あと一回2週間くらい休んだ後に書いたのでキャラがちょっと変わってたらすいません
こっちもコメントで気が向いたら教えてください。




