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28話 『元』橋姫ガールと公園へのお出かけ(序盤戦1)

久々です。

 皐月恩賜公園(さつきおんしこうえん)──。

 本町駅北口から徒歩15分ほどの位置にある、ちょっと──いや、結構デカめの公園。

 いくつかの区に跨っているらしく、入園ゲートの雰囲気というのは場所によって違っているみたいだ。

 ちなみに、恩賜公園というのはなんかめっちゃエライ人が関わっているらしい。なんでも、皇族とかが関わっていることもあるとか。




 オレは、ここに何度か訪れたことがある。

 入園はいつも本町側のゲートからだった。

 だだっ広いアスファルトの道。すき間からは草の根1本も生えてきていない状態で、模範的にキレイな状態である。

 入場ゲートの15mほどのところには、区の木に指定されているケヤキが悠然と佇んでいる。オレと璃世の背の高さを足しても、2倍も3倍も高く感じられる代物だ。幹も十分に太くて、頼もしさすらも感じさせる。

 今は夏の盛り。きっと、緑の葉っぱを纏って周囲にオアシスをもたらしているだろう。


 それだけじゃない。

 移りゆく季節や人も見ている。

 思い出が、年輪として刻まれていく。

 

 オレと璃世のことだって、きっと見てる。

 肯定もせず否定もしない、そんな佇まいで。

 冷たいわけじゃない。

 それは、とても温かいものだと思う。


 あのケヤキに、オレと璃世の2人の笑顔の記憶が刻まれたらいいな──。

 こんなことを思っていると、記憶の隅にあった大きなケヤキが現実にあるものとして瞳に映し始めた。


 ──────────


 昂る心臓の音に促され、なんと10分で辿り着いたオレたち。握られた手はそのまま。璃世に連れられている形なのもそのまま。

 心臓はもうバクバク……!下手したら、今すぐにでも破裂してしまいそうだが──『目的』を果たすまでは死んでも死にきれん。

 

 手を伝って響く璃世の拍動も、心なしか速い。

 オレのと混合している可能性だってあるが、それにしたって速い。この響きも、体をさらに熱くさせる要因のひとつとなった。


 璃世は前を向いたまま振り返るようなことはせず。

 傍にいるのに彼女の顔を見られないのは、なかなかキツイものがあったが、顔を見ていたらオレはきっと耐えられなかっただろう。

 顔を見せてないこの機会に、『シミュレーション』ができてよかった。

 昨日の深夜から考え始めた、今日のプランの流れを何度も何度も確認することができた。




 今日、オレは璃世に自分の気持ちを伝える。

 『好きだ』っていう、溢れてきて留まることを知らない気持ちを伝えてみる。

 正直、璃世がオレのことを好きかどうかは分からない。一緒に出かけるのを快諾してくれたから、少なくとも嫌われていないとは踏んでいる。

 でも、好きだと分かったから告白する、好きじゃないと分かったから告白しない──それは違うだろ。

  



 今日の流れをまた確認しておこう。

 まずは入園しないことには始まらないから、入園券を買って、入って。手間取らないように、券売機の使い方もしっかりと頭に叩き込んでおいた。

 もしも、璃世が手間取っていたら華麗にエスコート……!


 そして、ボートハウスで手漕ぎボートを借りて、2人きりの空間を楽しむ!水鳥がいるらしいので、そのあたりでも会話が弾むかもしれない。

 ……いや、弾ませなければならない。

 2人きりの空間、会話に躓いたとなると気まずーい空気が流れてしまう。そうなると、オレの告白計画が……!ある意味、ここが分水嶺なのかもしれない。


 その後はカフェによって、ちょっと休憩。

 店内での立ち振る舞いも大切だ。少なくとも、幻滅されるような行動は控えなければいけない。

 『慎重』の塩梅も難しいものだ。そうしないと、『大丈夫?』というように思われて不安を与えてしまう。

 

 『日本庭園』にも行って、この公園名物の『花の丘』も巡って──。そして最後は『みんなの原っぱ』で告白……!

 時間は夕刻。

 場所は、みんなの原っぱシンボルの大ケヤキの手前。


 告白の言葉もちゃんと決めている。


 ──好きです、璃世さん。もし良かったら、この手をとってこれからも一緒に歩んでいきませんか?


 夕日をバックに、ロマンチックに決めてやる。




 でも、それまで堪えられるかが不安だ。

 「好きだ」という気持ちは、自分でも止められない代物なのだから──。








 不意に、璃世の歩みが『ピタッ』と止まる。

 握っている手はさらなる熱さを帯び始めて、それに伴って拍動も速くなっていく。

 

 そして、手を離してオレの方に振り返る璃世。

 出発した時から顔は見ていなかったが、今の彼女の顔と言うのは『照れ』が極まったものというのが妥当なのかもしれない。


 顔は全部真っ赤。ほっぺたも、耳たぶの先までも。

 桃色の唇だって、今では紅蓮の如く赤に染まりきっていて。


 いつもとはまるで様子が違う彼女のことを、オレは見惚れるしかなかった。

 そして、璃世は勢いよく頭を下げる。


「わ、わわわ、私もっ……!颯君のことが、だ、だだ……大好きですっ!」



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