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2話 橋姫ガールと出会いの橋(前編)

 ──橋立璃世(はしだてりぜ)に出会って、そして関わったこと。


 これこそが今ある不幸の原点だ。

 そもそも、同じクラスになった時点で自らの不運を自覚していれば、『妬ましい妬ましい……』などと言って固執する人間だと分かっていれば、

 

 『あの時』に話しかけたりはしなかったのに。


 ──────────


 席替えをした日の夕方、学校の近くにある本町橋(ほんまちばし)での出来事だった。 確か、あの日はオレの男友達のひとりである西條蓮太(さいじょうれんた)と図書室で勉強したっけ。

 『分からない問題がある。(はやて)には俺に教えてあげる権利を──』などと、とてつもない上から目線で拒否権が無く、また一方的に告げられたのをよく覚えている。

 その勉強会が終わって、学校の正門で蓮太と別れて橋に向かったんだ。

 6月らしく、梅雨真っ盛り。

 辺りに大小の水溜りが出来ていた。木々が付けている緑の葉っぱは雨の雫を残していて、その雫が夕日の醸し出すオレンジ色を反射していたて、幻想的な景色を生み出していた。


 そんな景色に見惚れつつも、オレは橋の方へ向かって行った。

 飾りっ気のない黒色の傘を持って、橋の向こうに位置する本町駅(ほんまちえき)を目指して歩いて行った。


 『奴』と出会ったのは、その橋の中心付近だった。


 紺色の傘が寂しく地面に転がっている。

 持ち主からは1mほどの距離があって、拾う気配なんてない。

 傘をほったらかしにしている当の橋立は手すりに突っ伏していた。手すりにはまだ雨の雫があるはずだが、校章の入ったベージュ色のブレザーや、赤と紫のチェック柄のリボンが濡れることを気にしていない。


 刹那、目が合った。


 憂いのある黒の瞳は真っ直ぐとオレのことを捉えて離そうとしない。ダークグリーンの色をしたストレートヘアは胸の辺りまで長さあって、水滴が付いていた。

 

 鼻筋が通っている、端正な顔立ち。

 二重でぱっちりとした目に、長いまつ毛。

 ぷっくりとした、立体感のある桃色の唇。

 指や腕、足の細さも他の女の子とは桁が違う。

 身長も、オレと同じ170近くはあって……。


 見つめられれば見つめられるほど、この『美少女』っぷりを思わずにはいられない。

 ……けど、この美しい容姿だけでは隠しきれない違和感もいくつかあった。


 なぜ、傘を放置しているのか。

 誰かに盗られる可能性もある。人通りが全くないワケではないのに、放置している。


 見つめぱなしで、何も喋りかけてこない。憂いのある瞳を向けてくるばかりだ。


 服だって、濡れてしまえば明日以降困るのは目に見えている。しかし、橋立はこの『濡れる』状況を享受しているように見えた。……すべてがどうでもいいと言わんばかりに。


 この不可思議で異端な状況というのは、俺だってそう経験するものではない。

 だからこそ、この『異常さ』とか、『危なかっしさ』とかを感じたわけだ。


 そうして、オレは橋立に話しかけた。

 考えるよりも先に、口が動いていた。


 ……後になって、一度立ち止まって考えることが大切だと思い知らされた。情熱が先行すると、時に痛い目を見る。何が何でも放っておくべきだったと後悔しても、もう遅かった。


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