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16話 橋姫ガールとオレの覚悟

 6時間目が終わり、帰りのHRも終わろうとする頃。

 学級委員の文ともう一人の学級委員の男子が教壇に立って進行をしていた。


「えー、これでHRを終わります。何か他に言いたいことがある人──」

「はいっ」

「……茂木君、どうぞ」


 『どうぞ』と学級委員の文に許可されたので、席から立ち上がり、教壇の上に移動する。

 周りからはザワザワとした声が響き始めていて、少しうるさい。


「ハヤテ君、いきなり──」


 教壇に上がる直前、文から困惑の言葉も聞こえたが、関係ない。


 ああ、ここは何でも見えるな。

 璃世の席も、寺屋の呆気に取られた表情も全て。


 『バンッ!』教卓に両手をついた鈍い音が、雑音でいっぱいの教室を静かにさせた。そして、オレは高らかに宣言する。


 ──────────




 2-Dの生徒全員に告ぐッ!


 この話は男子と女子、両方にちゃんと聞いてもらいたい。


 正直に言おう。オレは人気がある。昼休みに、多くの女子に取り囲まれているのはみんなも知っているだろう。

 

 そこであるトラブルが起こってしまった。まー、いつか起こるとは思ってたよ?でも、オレはそれに対して言いたいことがあるんだ。だからこうして前に出てきたってワケだ。


 こっから言いたいこと、どんどん言ってくぞ。聞きたくない奴は耳を塞いでもいいが、オレの気持ちは止められないし、いずれはちゃんと受け入れろよな。


 オレは今、橋立璃世に夢中だ。今日欠席している橋立にな。……この感情は、『好き』と言ってもいいのかもしれない。今、誰かを選べと言われるなら、オレは間違いなく璃世を選ぶ。


 言っとくが、これはオレ個人が抱いてる感情だからな?別に璃世からアプローチしてきたってわけじゃないし、もしかしたらオレのことを『嫌い』って言うかもしれない。


 そんなオレの夢中になっている璃世だが、あるトラブルに巻き込まれたらしい。そのせいで学校を休んでる可能性があるんだと。


 そのトラブルっていうのは、端的に言えば『嫌がらせ』だな。璃世がいろいろとなじられたらしい。


 そいつはオレと璃世の距離が最近近いってことで行動を起こしたみたいだから、平たくいえば『嫉妬』が起因してるのかな。その人はオレを狙ってたみたいだから。


 その嫉妬心を持つのは別にいい。人間であるなら、持っていて当然のものだ。……でもな、それを外に出して人を傷つけた奴を、オレは許せない。

 その気持ちを我慢をしようにも、どうしても難しくて自分自身を犠牲にしてしまうような人は話は別だ。ここで言ってるのは、悪びれもせずに自分の悪事を自慢するような奴だ。そういう奴はハッキリ言って嫌いだ。


 自分の好きな人がそうやって人を傷つけてたらイヤだろ?それが、他人の自分からも見ててイヤになる行動だったらそんな行動しないでくれ。


 まだ言いたいことがある。みんな、自分がしたい行動をしろ。誰かの意思に囚われた行動だけをするなんて、そんなつまらないことはないだろ?『イヤ』だと思ったことは遠慮しないで『ノー』を突きつけてやれ。



 

 ……ここまでなんかエラそうにしてきたオレだけどな、こんなこと言っててもオレにだって悪いところはある。それは『優柔不断』だったってことだ。

 璃世との関係を曖昧なままだったが為に、今回の『嫌がらせ』が起きたともいえる。

 オレが取り囲まれている状態で、璃世の影を見せればそれは『浮気』に捉えられても仕方ないよな。この状態を保っていたからこそ、トラブルが起こった。そして、そのリスクをオレは軽視してたんだ。

 ……改めて、ごめんなさい。





 ……オレは璃世をなじった奴を名指しで断罪する気はない。今までの話で、とっくに自覚してるだろうからな。


 これと、この話は蒸し返すんじゃないぞ。これで終わりだ。まー、オレに対する批判はしてくれていいが、それでも犯人探し的なやつをするのはやめてくれ。……オレも、きっと璃世だってそんなこと望んじゃいないからな。


 オレから言うことはもう無い。こっからは学級委員の進行に任せるよ。なんか投げっぱなしな気がするが、後で謝らせてくれ。……オレは今すぐ行かなくちゃいけないんだ、璃世のところにな。


 ──────────


 言い終わった直後に沸いたざわめきの渦を背中に受けたまま、オレは自席に戻ってリュックを背負い、足早に教室から出ていった。


 そのざわめきの渦の中には、すすり泣くような声があったような気がする。誰が発しているのかは分からないが、呼応するような慰めの声も聞こえなかった。


 

 みんなの中に、何かしら響いてくれるといいが。

 2-Dの生徒や『ハヤテガールズ』、そして寺屋にも──。


 そんなことを刹那に思いながら、璃世を救うピースがあるであろう、書道部の活動場所である書道室へと向かう。



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