表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/43

12話 橋姫ガールとハヤテガールズ(前編)

 今までは6月下旬と呼ばれていたが、次第に7月上旬と呼ばれ始めるようになった頃。

 夏の日差しが容赦なく燦々と降り注ぐようになって、夏の本格的な訪れを予感させる。


 そんな日の、4時間目が終わっての昼休みのことだ。オレは、いつも通りに10人程度いる『ハヤテガールズ』の相手をしていた。

 『ハヤテガールズ』というのは、オレを取り囲む女の子集団のことを呼称したものだ。初めに言い始めたのは、隣の席に座る橋立璃世。……現在、オレが『恋』していると言われている相手だ。


 正直、璃世に恋をしているのかは自分ではあまり分からない。こういうのは、当事者が一番鈍いものなのだ。

 でも、杏樹や蓮太といったオレのことをよく知っている2人からそう言われてしまえば、逆らえない部分もある。


 璃世のオレとの関わり合いがなくなるのは、イヤ。

 璃世がほかの男と付き合うなるて、もってのほか。


 人は、この気持ちを持っていることを『恋』と呼ぶらしい。でも、オレはどうしても不安だ。結局は、自身が傷つけ傷つけられるのが怖いんだ。

 オレは恋なんて、『そんなものはしてはいけない』とばかり考えていたので、なんだかフクザツな気分だ。


 ここ数日間、璃世の様子は落ち着いているように見える。前までのように、ムリに我慢している様子がないのだ。ここは、オレの予想を良い意味で裏切った。

 あと、『気持ちが溢れそう……』と言ってオレに相談することも多くなった。その時には、一緒に深呼吸したりする。気晴らしに、校内を散歩したりもする。

 璃世自身は、何か相談する度に『ごめんね』と言って申し訳ないという気持ちを滲み出しているが、正直オレは頼られるのがうれしかった。

 璃世と一緒にいると、安心するんだ。


 しかし、璃世の抱えている問題が解決したわけじゃない。


 妹の杏樹のアドバイスの通り、『グイグイ接する』ということを実践してみた。

 具体的な悩みの内容や、その解決のためにオレに出来ることを聞いてみても、璃世は口をつぐむばかりだった。

 『悩みが解決した』という考えもあるのかもしれないが、だったら璃世は口をつぐむことはなく、相談することもないのだろうかと思う。

 まだ、ハッピーエンドには遠いのだ。


 うーん、どうしたもんか──。


「ねーえっ、ハヤテェー?ちゃんと聞いてるぅー?」

「えっ、あっごめん……」


 最近、こんなことばかりだ。

 璃世のことに集中して、周りの声に気づかないことがある。『妬ましい……』などと璃世に言われなくなってから、また『ハヤテガールズ』に集中できるかと思っていたが、現実は違った。


 ハッキリいって、今のオレは璃世に夢中だ。

 でも、こうしてオレの近くに集まってきてくれる『ハヤテガールズ』が現にいる。心に揺らぎがある状態ながら、ナアナアと今の今まで接し続けてしまっているんだ。このままじゃ、人の気持ちを弄んで結局はみんなを裏切ることになってしまう。

 かなり早急に、『ハヤテガールズ』の行く道を考えなければならないな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ