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5~6

登場人物


志貴嶌葵都しきしままと  28歳 

 主人公。


良見竹かなえ(よみたけかなえ)20歳

マトと同じ会社のバイト


志貴嶌雪都しきしまゆりと 18歳

 マトの妹。


七咲綾兎ななさきあやと  28歳

 兎屋酒場の店長

 マトの小学生時からの友人。


星谷フミヤ(ほしたにふみや) 21歳

 マトの会社の新入社員。新巻と同僚


新巻英真あらまきえいしん 21歳

マトが働く会社の新入社員。


マミコ            20歳

 兎屋酒場の店員


イクミ            21歳

 兎屋酒場の従業員


騎士川伏見きしかわふしみ 20歳

 マトと同じ会社のバイト

 モデルのお仕事もしている


刻波多マリ(ときはたまり)  25歳

 マトと同じ会社のバイト

 シングルマザー

 〜5〜

 

 

 6月


 会社 休憩室

 

 「マトさん釣りします?」

 会社の休憩室、狭いが、5、6人がタバコを吸ったり飲み物を飲んだりして休憩していた。

 「ここんとこ行ってないな。前は親父と結構行ってたけど」

 「今度俺と新巻とバイト組3人とマトさんと6人でどうっすか?」

 「どこ行くの?今何釣れるっけ?」

 「アジサバイワシとか、シーバスとかいけるんじゃないっすか」

 「星谷くん結構行くんだ」

 「俺毎週行くっす。あと、今回かなえちゃんも行きます」

 「いや、バイトの3人つったら入ってるっしょ。あえて言うなよ。」

 「へへへ。最近マトさんに押しが強いっすよねあの子。そっけないふりしてんのになんかそうかなーと思ってー」

 星谷はニヤニヤしながらコーヒーを飲み干した。

 「うるさいよ」

 「じゃあセッティングしてみんな行けそうならまた言いますね」

 「おう。」

 久しぶりだな。結婚してた時はそういえば結構行ってたなあ。アンナも結構ハマってたもんな。。

 俺、まだ忘れられないこと残ってるんだな。忘れたい。

 吹っ切れずにいる俺がいる。時間が経つことしか解決方法はないんだろうか。

 

 ――――

 

 土曜日、マトを含め、バイトの子達と社員の6人で海釣りに行くことになった。

 待ち合わせの場所で最後にピックアップする子はかなえだった。待っていたかなえのまえに車が立ち止まり、助手席のウインドウが開き新巻が顔を出した。

 「まった?かなえさん?」

 「いえ、ちょうど今来たところで」

 「そか、じゃあ乗って。隣その人でごめんね〜」

 「おいシャケ、その人とはなんだ」

 中からワゴンカーの後部ドアが開き、目の前にはマトが座っていた。

 「ここしかないんでしょうがないんじゃないですか」

 「ちょっとかなえちゃんまで。お前ら俺をいじるんじゃない。」

 ――

 車は海に向かって走り出す。途中バーベキューの買い出しをしにスーパーに立ち寄る。

 「ねえ、なんで厚揚げなんか買うのさ?バーベキューに普通入れるアイテム?」

 星谷はカートを押しながら新巻がカゴに入れた厚揚げを指差して言った。

 「俺んちは必須アイテムだよ。入れる。」

 「お前1人で食えよ」

 「新しい味を発見しろよ。夢がないやつだな」

 「厚揚げなんかに夢みれるか」

 2人の後にカートを押してついていく伏見とマリは、くだらないあらそいになんとも言えない苦笑いをしていた。

 「伏見、君は賢く生きろよ」

 「はは」

 買い物を終え、車は釣り公園に着いた。みんなで車から荷物を下ろし、テントやバーベキューの設置をした。

 一通り準備ができ、釣り竿を持ってそれぞれ場所を探して海に向かう。

 「マトさん何からするんですか?」

 「俺サビキ」

 「じゃあこれもセッティングしてバイト達に渡してもらっていいっすか?俺はエギング準備してるっす」

 星谷は持ってきた何本かの竿をマトに渡した。

 「みんなやったことないのね」

 バイトたちが興味津々でマトの釣りの仕掛けを見ていた。

 「マトっち器用ー!すごーい!」

 「いや、これ初歩のファミリーフィッシング段階だから。誰でもすぐできるよー」

 「俺釣りやったことないから楽しみぃー!」

 バイトの騎士川は目をキラキラさせながらはしゃいでいた。

 「伏見、まだ始まってないんだからはしゃぎすぎだよ」

 「刻波多さんはやったことあるのぉー?」

 「ないよ」

 「えー何でもっとテンション上げないのー?」

 「子供か」

 「ほら、できたからそれぞれ持って。」

 マトは仕掛けのついた竿をそれぞれに渡し、4人で波止の方に向かった。一通りやり方を教えそれぞれやらせてみた。

 ――

 「マトっち!なんか竿ビクビクしてるっ!」

 「あげろ!巻け!早くあげろ」

 騎士川が最初に釣れた。慣れない手つきでリールを回し魚のついた糸を手繰り寄せた。

 「これなんて魚ー?」

 「アジだよ、今、回ってきてるからみんなも早く釣りなー」

 4人は騎士川のテンションにつられて楽しい時間を過ごした。

 

 ――――

 

 昼になり、バーベキューの準備をし始めた。

 「こんなの初めてー!釣ってすぐ焼いて食べるなんて感動ぉー!」

 「お前は連れて来がいがあるやつだな」

 マトは笑ってアジを頬張る騎士川の頭を手でわしゃわしゃとした。

 「テンション上げすぎなんだよ。伏見ってばつまずいて海に落ちそうになるんだもん、ウケるし」

 「刻波多さんしーしー!言わないでー」

 みんな笑っていた。

 星谷と新巻はボウズだったらしい。

 「イカの刺身期待してたんだけど」

 マトは星谷と新巻に言った。

 「いや、午後リベンジさせてください、チヌやります!もしくはタイ!そしてイカ!」

 「頼む、豪華夕食!」

 皆、和む時間をすごした。

 ――

 騎士川とマリが他のところで釣ってみると言い、マトとかなえは2人っきりに。2人はタバコをプカリと吸いながら、のんびり。竿を時たま上に持ち上げたり下ろしたり魚を誘った。

 「コーヒー飲む?」

 マトは持ってきた小さいクーラーボックスから缶コーヒーを取り出しかなえに差し出した。

 「ありがとうございます。面白いですね、釣り。」

 かなえはコーヒーを一口飲み横に置いた。座りながら竿を上げたり下げたりしている。

 「わっ、きた!」

 「おお、やった!巻いて巻いて!」

 マトはかなえが引き上げた魚がついた糸を1匹ずつ外しクーラーボックスに入れた。

 「おうちにお土産にできたね」

 かなえはおっかなびっくりで魚を釣り上げながらも笑顔で楽しんだ。

 マトはまた地べたに座り、プカリとふかした。

 「志貴嶌さん、良かったら番号交換しませんか?」

 「あ、そっか、知らなかったよね。いいよ。」

 マトはポケットからケータイを取り出しかなえと番号交換をした。

 「また、遊びに行きましょう」

 「そだね、また遊ぼう」

 マトは少し照れて答えた。

 

 

 〜6〜

 

 その夜、マトのケータイにショートメールが来た。かなえからだった。

 (志貴嶌さん、明日夕飯どうですか?)

 マトは、そのメールを見て返事をだした。心は、久々に跳ねたが、もう一つの心はそんなに期待しちゃダメなんじゃないかと、跳ねた気持ちにふたをした。

 

 「お兄ちゃん、お風呂空いたよ。入る?」

 台所の食卓。ビールで晩酌をしていた父とマト。あては今日採れたスナップエンドウを茹でたものだ。ユリトは一つつまみ、口に入れた。

 「うん!今年も美味しくできたじゃんお父さん」

 「当たり前じゃ」

 父はニカッと笑ってサヤエンドウを一つ口に放りこみ、ビールを一口すすった。

 ――――

 「ユリトー、まだ寝ないのー?」

 風呂上がりのマト。ビール片手にほろ酔いでユリトの部屋に入って来て、布団に寝転がる。

 「勉強してんの。一応受験生なんだよ。あのさ、毎度言うけども酔っ払うと部屋来てくだ巻くのやめてよね。ここはスナックでもキャバクラでもないの。」

 「お前拙僧もなく若い女の子がキャバクラとかいうんじゃないよ。親父寝ちゃったんだよ。お前しか遊んでくれる奴いないだろー」

 「ウザいからー」

 マトはハハハと笑った。

 ユリトは文句は言うが、大好きなお兄ちゃんの甘えてくるところは全く嫌ではなかった。

 「ユリト彼氏できた?」

 マトは寝転がりながら

 「いるわけないでしょ」

 「何で?ユリト、モテるでしょ」

 「なにキモいこと言って、モテるかよ」

 「そなの?なんだ見る目ねえな世間は。ま、でも出来たらできたで俺が全力で別れさすけど」

 「なんなのもう」

 私はずいぶん可愛がられているのだ。なので、彼氏がいることは言えない、兄よ、すまぬ。

 ユリトはまた机に向かい本と向き合う。兄がいる空間は嫌いじゃなくむしろ居心地がいい。そんなユリトは、ホッコリとした笑みを浮かべながら教科書に向かう。

 「お兄ちゃんは?最近どう?」

 勉強しながら、ちらっと兄の方を見る。

 「体の調子はいいよ。」

 「そか。なら良かった。」

 「まあね」

 ルトはビールを一口飲んで窓の外を眺めていた。

 「ま、ゆっくりやりなよ、お兄ちゃんこそモテるでしょ。」

 「そね。」

 ぼんやりと見ていた窓の外、ふうとため息をついて缶ビールを飲み干した。

 全くの別人になって帰って来た兄。

 離婚以外にもショックなことがてんこ盛りに重なった。ブラック企業で、あげくリストラされたり精神的体力的にめためたになっていたあの時の兄。今、やっとのんびりができるようになったのは、またやり直しゃあいいと、大らかで、器の大きい父の言葉や、綾兎の手助けでやっと立ち直ることができた。長い時間がかかったけど、なんとか普通の生活に戻ってきた。そして、就職した今の職場にも恵まれた。まだたまに、部屋の隅に座り、ぼんやりと外を見ている時があるけれど。

そんなお兄ちゃん、会社の女の子から今ぐいぐいと来られてる模様。お兄ちゃんどうすんのかな。

 

 ――――次の日の夜

 

 「一口飲みますか?」

 「いや、俺車だし、最近厳しいし、いいよ。気にせずかなえちゃん飲みなよ」

 マトはかなえと居酒屋に来ていた。かなえはピッチあげて飲み出した、気分が良くなったのか、いつもより笑顔で饒舌によく話した。

 「じゃあ今、付き合ってる人とかいるんですか?」

 「そんなのいるわけないでしょ」

 「そうなんですねえ。誰かそばにいたらしんどいですか?」

 マトは特にはと答える。けれど、緩やかな付き合いができる人がいいなあ。と、少し力なく答えた。

 マトはかなえが少しぼんやりとした目をしてるのを見て

 「ふふ。かなえちゃん酔ってきた?」

 コクっとうなずくかなえ

 「じゃあ、志貴嶌さん。穏やかに私と付き合いませんか。」

 なんて。

 「どうして俺?」

 マトはちょっと戸惑ったような顔をして、グラスを傾ける。かなえはそのグラスを見つめていた。

 「好きになっちゃった感じです」

 告られた。久々だけど、こういうのって緊張する。毎回。

 「あの、あんな事したからとかだったら違うと思うよ。酔ってて、俺が悪いから…」

 かなえは首を横にブンブンふった。

 「バイトの面接の時、初めて志貴嶌さんを見てあの時からずっと気にはなってました。」

「俺、全然そんなの気が付かなかったな」

 少しハニカミながらツマミを一口食べるマト。

 2人は店を後にし、車の停めてある駐車場まで歩いて行った。

 大通り沿いを並んで歩きながら、店たちはほぼ閉まっていて、車が通るたびに明るくなるが、それ以外は、点々とある街灯のオレンジ色と、闇が交互に続いた。異様にそれがマトの欲望を刺激する。

 「ねえ、志貴嶌さん。付き合っちゃいましたね。」

 「付き合っちゃったねー」

 マトは少しドキドキしていた。照れながらほんのりほろ酔いのかなえ。

 「恋人になったから、キスしてください」

 マトは、その言葉と同時に隣に歩いていたかなえの腰に手を回し、強く引きつけて激しく唇を重ねた。

 「うれしい…」

 とろけたかなえの言葉にマトは

 「うん」

 俺も、という返事を、甘い声でかなえの耳元でささやいた。


ーーーーー


会社の休憩室。マトと星谷がタバコをふかしていた。

 「なんか、2人いい感じだったじゃないですかー、やっぱりそうなりましたな」

 星谷はニヤニヤしながらマトの顔を覗き込んだ。

 「なんだその顔はお前、憎たらしい奴だな。」

 「押しがやっぱ半端なかったっすもんねー。やっぱあれっすか、向こうからっすか?」

 「まあ、そうね。」

 「マトさん、かなえちゃんにちゃんと気があったんですか?もしかして流れでみたいな」

 マトは缶コーヒーを一口飲んだ。ゴクリという音が思ったより鳴った。

 「何でそう思うんだよ。ちげーよ。そんな可哀想なことするかよ。」

 「俺は、見て感じたことを言ったまでですけどぉ。」

 マトはぼんやりしながらタバコをふかし、

 「見る目ねえなお前。」

 

 優しすぎて何が来ようが断れなくて、ある意味タチが悪いんです。なんとなく流れのままに。前の奥さんとのことも言うなりで結婚して、そして別れたし。そんな兄は、悪い流れに乗ると、ある意味残酷なことをしでかすんです。

 弱虫なくせに。

誤字などおかしげな点もあります。見つけ次第訂正します。内容訂正の時も。

が、もし何かあれば、ご連絡ください。感想などもお待ちしております。


のんびりお楽しみください。


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