遠国からの難民
デュオに案内された集会所の一室。
扉のプレートに応接室と書かれたこの部屋は時折やってくる難民たちを一時的に収容する目的で使われており、他の部屋と比べて比較的華やかである。
「入るぞ」
扉を開いてアンナを先頭に入室すると、そこには家族連れとみられる五人の男女。
衣服こそは粗末な物であるが髪色と肌艶は良く、豊かな生活をしていたことがうかがえる。
「私がこの村のリーダーであるアンナ・ハトレーゼだ」
「"#$%('&%$!!」
挨拶するアンナに対して、違う言語で挨拶する家長とおもしき男。
褐色の肌に黒い髪。明らかに異国人である。
「『こんにちは、私たちを助けてください』か」
「彼らの言葉が判るのか!?」
ルーベンスの翻訳に驚くアンナとデュオ。
「仕事で世界各地を回っていたことがあっての、彼らの言語もある程度は理解できる」
そう言って難民に話しかけるルーベンス。
彼らから引き出した情報は以下の通りだった。
彼らは遠国のサーディン王国からの難民であり、亡命の最中に金鉱の街の噂を聞きつけて来たという事。
彼らは家族であり、家長のアーディル、妻のザーフィラ、長男のハーディ、娘のカマル、ザイーダ。
村の神官の一族であり、それなりの蓄えを持っている事。
体は健康的であり鉱山で十分な労働ができること。
特に娘のカマルは水魔法を使えるため水の調達に役立つということであった。
「水魔法か、確かに村の役に立ちそうだな」
一家を視界に収めながら、デュオが頷く。
「そうだな、川に水を汲みに行く必要もなくなる。彼らに伝えてくれ、『私たちはあなたたちを受け入れる』と」
アンナの言葉を彼らに伝える。
するとアーディルは立ち上がり、アンナの前で片膝を付くと両手の指を絡めて自身の頭の上に持っていく。
「『助けてくれてありがとう』だそうじゃ」