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新王 アルトロ

「アルトロ陛下、万歳!新王陛下万歳!アルガン王国に栄光あれ!」

 ルーベンスが追放されてアルジャーノ村へと運ばれた翌日、勇者であるアルトロが臣民の支持を得て王位に就いた。

 王城のバルコニーには王冠を被ったアルトロと新妻であるクラン、そして新たなポストを得たグレゴールとヴァリアが立ち、国民達の歓声を一身に受ける。

「皆の者」

 アルトロが手で国民達を制し、口を開く。

「余を王として受け入れてくれたこと、心より感謝する。

 しかし、人類と魔族の戦争は終結したばかりであり、世界各地には戦災孤児や難民、破壊された都市などの戦災の爪痕が深々と残されている。

 余は新たな時代の王として、この課題に全力を持って取り組むことを誓う。

 国民達よ、どうか余を支えてくれ!」

 一点の曇りのない眼差しで、今後の方針を声高に主張。

 国民達は歓声をもって王に応えた。

「冒険者から勇者、そして王様か…立派になったもんだね」

 陽光に勲章を煌めかせながらそう頷くヴァリア。

 その眼からは一筋の涙が流れている。

 貧民街で生まれ落ちた日雇い労働者の男が義勇軍を率いて大功を挙げ、『禅譲』を受けて一国の王となる。

 この出来事は空前絶後の偉業としてアルガン王国の歴史に永遠に刻まれるだろう。

「アルトロ万歳!陛下万歳!」

 歓声を上げ続ける民衆達。

 事前の工作で彼らは『王が自らの意思で勇者に王位を譲った』と信じ切っている。

「ひとまず、これでしばらくは安泰だな」

 アルトロの少し後ろでそう呟くグレゴール。

 彼の胸には剣を模した立派な勲章が煌めいている。

「なあ、ヴァリア。これから忙しくなるぜ?」

「覚悟の上だ。そういうアンタこそ、女にうつつを抜かしすぎるなよ?」

 歓声に紛れ込ませながら、会話する二人。

 ふと、群衆に紛れてこちらを見据えるコノハに気が付く。

 

「・・・・・・・・・」

 新王を称え続ける民衆達。

 その中でコノハはおよそ英雄の一味と思えぬ粗末な装いでただただ沈黙している。

「せっかくだから何かしゃべりなさいよ」

「・・・・・・」

 人狼族の少女であるリラの言葉に会話が苦手なコノハは話さず、代わりに不気味なデザインの鈴を規則的に鳴らす。

 どこか不安を煽る鈴の音色。

「『何を話せばいいかわからない』ねぇ…

 別に感動的な言葉とか特別なことを話す必要はないのよ。」

「そうか…」

 それだけ言って少し考えこむと、ゆっくりと口を開く。

「おめでとう、アルトロ…」

「はい、よくできました」

 重々しく口を開いたコノハにリラはそう笑いかけた。

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