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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

少女と鼠

作者: 覇野 ノ

少女は人気のない道路で遊んでいた。周りには枯れた草が広がり、少し行った所には森が広がる。だいたい2時間に1度、トラックが決められたように通る。だが今の少女にとって、そのトラックが何を運んでいるのか、どこに向かっているのか、なんてどうでもよかった。


少女の背には太陽が張り付き、それによって出来た影の中には鼠が死んでいた──正確には死にそうになっていた──。手足を微かに動かす鼠は次第に虚ろな目で地面を見つめ出し、カラスにつつかれたような胸には、ぽっかりと穴が空いている。少女は釘付けになった。生まれて初めて見る生き物の死の瞬間。少女は鼠の最期がくるのを、まだかまだかと待ち続けた。5分ほどたった頃、鼠は死んだ。先程まであった──あったように感じていた──毛の艶は無くなり、目はレーズンのようになってしまった。


少女は興奮していた。胸のドキドキが治まらず、しばらく鼠を見続けた。見続けた。見続けた。見続けた。見続けた。額に汗が滲みだし、背中に服が張り付き出した頃、少女は鼠の胸に人差し指を伸ばし始めた。すると目の前に一匹の鼠が現れた。少女から60cmほど離れた場所に、灰色のずんぐりした鼠が立っていた。更にそこから離れた所では、白い鼠が草むらへ入り込んで行った。少女が目を凝らすと、そこには大量の鼠がいた。特に草むらの中には沢山いそうだった。


少女は胸が踊った。1度道路を見渡し、トラックが来ないことを確認した。次に周りを見渡し何かないかと探し出した。少女の目に入ったのは、木の棒や石、木のつる、そして自分の手と足。


少女は興奮していた。少女は胸が踊っていた。


※ ※ ※ ※ ※


通りかかったトラックの運転手は、伐採した木々をコンテナに乗せ、ここから5分ほどの町へ運んでいる最中だった。日差しが窓を越え照りつける暑い日で、汗臭い車内で、冷えたコーラ瓶を左手に車を走らせていた。


すると一人の少女が道路に出ていた。運転手はスピードを落とし、クラクションを鳴らそうとした。しかし出来なかった。運転手は血まみれの鼠達と、無邪気な6才の少女の笑顔を見た。

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