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第7話 進展

同じ週に高等部でも一年生の講義を行った。

中等部に比べてもう若者と言った感じだ。


同じ内容で講演をするが、反応はイマイチだ。まあジョブ覚醒も殆ど済んでいるんだろうな。

知的好奇心のある子たちは熱心に聞いているが、やはりジョブ未覚醒が多い中学生とは会場の熱気が違う。

ちなみにアメリーさんはこの学年だ。一番前に陣取って目が合うと手を振って来る。うーん、ちょっとやりづらい。


講演を盛り上げるために、ちょっと方向性を変えよう。

急遽方針転換だ。


「さて、講義ばかりもつまらないと思いますので、少し趣向を変えます。もしこの中で、ジョブ未覚醒でこの場でカウンセリングを受けたい生徒さんが居れば受け付けます」


賭けに近いが、既に実績が出ているため、ある程度勝算を持って問い掛けてみる。サクラ無しの実演ケーススタディの様な即興だ。


そうすると生徒の中から「お前行けよ。ジョブ無し君」と、背中を押されて前に出された男子生徒が立ち上がった。


おいおいイジメか?

ちょっとカチんと来たが、むしろチャンスかもしれないと考え直し、その彼を演台に招く。


下を向いたまま来た彼を演台に上げて、即興で公開カウンセリングを始めた。


「まず名前と、君の家系のジョブ分布と、君が覚醒したいジョブを教えてくれるかな?」


スコット君の時と同じく基礎情報を聞いて分析を始める。


「えっと、ドルン・メスナー、メスナー準男爵家の三男です。父が会計士ジョブで財務省勤務なので、会計士を目指しています」


「お前には無理無理!」

ヤジが飛んで来るが、無視してさらに情報開示を促す。


「ご家族や近しい家系のジョブを挙げてみてくれるかな?」

「祖母は司書ジョブ、母が経理ジョブを持っているくらいです。父方は代々商会を経営していますがジョブは無くって」


ドルン君は自信の無いおどおどした感じで小さな声で答える。


さて分析を始めますか。

こういう時に俺の直感だけじゃなく、カイルの膨大なデータが物を言う。

端に控えるカイルに視線を送ると、俺の考えが伝わったのか、大きく頷いてくれた。

オーケイ。以心伝心気持ちいいな。


ホールが少しザワついているので、鎮めて話を再開する。

「皆さん、静粛にお願いします。はい。では私のカウンセリングを始めますね。残念ながら、ドルン君に会計士ジョブの適正は無さそうです」


「やっぱりな!」

ここでまた茶々が入るが、構わず続ける。


「ですが、私の見るところ、それよりもずっと凄いジョブの適正があるかもしれないという仮説が立ちます」


会場がシーンと沈まる。

「私の見立てでは、ドルン君は、診断士ジョブの適正がある様に考えられます」


「診断士!」「マジで!」「超レア!」「いや嘘だろ」「それは無い!」

一気に会場に熱が入った。


本人もポカンとしている。そりゃそうか。

「はい皆さん静かに。確かに皆さんご存じの通り、診断士ジョブは国の経済政策を動かす専門家として、とても希少なジョブで、ほとんど覚醒する事がありません」


当然覚醒すれば、騎士爵や準男爵などの一代限りの叙爵とは違い、一足飛びに男爵に叙爵だ。それほどのジョブ。


「しかし、過去のデータから、診断士は会計などの特定の才能というよりも、会計・法律・財務・経営・人事・貿易といった多岐に渡る才能に満遍なく恵まれた場合覚醒するという事が分かっています。ドルン君、今私が挙げた才能で苦手だと思う科目はありますか?」


「あ、いえ。無いです。お爺ちゃんにも、お前は筋が良いから卒業したら商会を継げと言われています。確かに商売の法律も主なものはもう覚えちゃったし、外国語も苦じゃない感じです」


まあそうだろう。既に診断士で青い霞という結果を得ている。

さっきカイルを見たのは、一緒に診断士を調べた時のデータを再確認するためだ。


「ほぼ確実に、ドルン君は診断士ジョブに覚醒します。しかし診断士は取得条件が多いので、個別に取得カリキュラムを組まないとね。後ほど個別カウンセリングでカリキュラムを練りましょう。ありがとうございました。席に戻っていいですよ」


さっき演台に上った時には下を向いてオドオドしていたドルン君が、少しだけ晴れ晴れした様子で降壇し、席に戻る。

戻ると周りの生徒にやたら話し掛けられていた。


「以上で、講義を終わります。質問は総務にて受け付けてくれるそうですので、ミーシャ・ラッセルさんまでお願いします」


ドルン君のお陰で盛り上がったな。

ふう、今週は乗り切ったぞ。





次の週そしてまた次の週と、都度内容をバージョンアップしながら講義を重ね、カウンセリングへの誘導も順調に進んだ。


ただ、ジョブ取得までの結果待ちが多い。

大体がジョブのカウンセリングを受けに来る=すんなりジョブ取得が出来ないという状況な訳で、取得条件が特殊だったり、俺の知らない取得条件だったりする訳で。

ただ、解決の糸口として入念なヒアリングをする際に学園の授業で何が得意か調べられるという点で、やはり貴族の子弟で、小さい頃からある程度万遍なく教育を受けているという事が非常にアドバンテージになっているなと感じる。


平民は教育なんて受けられないか、受けられても最低限親の仕事に関するものだけだったりする。それで何が得意かの糸口は見つけられる訳がない。


カイルとも議論のネタになる事だが、実はジョブ覚醒は身分や血筋に影響を受けると思われがちだが、教育なんじゃないかというのが、今一番大きくて手が付いていない仮説なんだよな。



ひとまず俺個人の話としては、今のところ青い霞が出てジョブ取得に失敗した生徒が出ていないのはありがたい事で。

ケース増加は時間と本人達の頑張りに期待するしかないというところだ。



そして一つ喜ぶべき事と言えば、ミーシャさんとカイルとで、書式の精査とルールが構築された事で、過去データの体系的な閲覧と、カウンセリング後のジョブ取得進捗状況の確認と、今後の予定、カウンセリング予定者の事前情報収集がスムーズに仕組み化された。


またこれまでの成果を資料にまとめ、学園長に報告を回したところ、非常に高評価を頂き、ジョブカウンセリング部門の強化という事でミーシャさんが専任となり、部屋も3部屋続きの広い研究室を与えられた。


カウンセリングルームと研究室、そして事務室の3部屋で、ミーシャさんと時々カイルが事務室で生徒対応と書類整理を行う感じだ。


今日も午後から中等部の男子生徒一名を予定している。


いつも通り研究室で事前書類に目を通す。書類の下側には所見としてカイルのデータ分析からの可能性が加筆されている。

この書類をしっかり確認してから一旦心を空にして、その後にカウンセリングルームで生徒と話し込むと結構いい感じで直感が閃くんだよなぁ。


時間になり部屋を移動して、カウンセリングスタートだ。

今回も割と難題だったが、しっかり話し込み、何回かのチャレンジの後に霞が赤から青に変わった。



そして、その瞬間。

頭の中にドカッ!と殴られた様な強烈な衝撃が走った。


俺は意識を失った。



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