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第6話 相棒

今日も5話上げて行きます

お土産か。研究資料を持って来てくれたという事かな。

そう考えながら、周りを見回すが、それらしい荷物は無さそうだ。

そんな俺に対して兄の後ろから声が掛かる。


「レオン様、ご無沙汰しております。お元気そうで何よりです。1,835日と3時間振りにお会いできて感激です」


兄の後ろに佇む俺と同じくらいの年の若者が、相変わらずの変人振りで挨拶をして来た。


「相変わらずの記憶と計算っぷりだなカイル。そっちこそ元気そうだ。で今日は兄上の御供で?もしかして資料を持って来てくれたのかい?」


資料を早く見たくて、実家の執事長の息子のカイルにそう聞くと、意外な答えが返って来る。


「いいえ。残念ながらレオン様の研究資料は全て処分してしまい、残っておりません。奥様が資料を見ながら悲嘆に暮れて日々をお過ごしになる様子に心を痛められたご主人様が処分なされましたので」


そうか。そうだよな。


「ですので、私が参りました。私の頭の中に、レオン様と私とで調べ上げ、整理分類した知識・データの全てと、それを元に構築した仮説の詳細が全て入っております。今日よりまた私がレオン様のおそばに控えさせて頂き、過去資料の閲覧及び新たな知識の蓄積にお役立て頂ければと思っております」


何と!

でも良いのか?


「兄上、カイルはこのように言ってくれていますが、アイディング家としては良いのですか?カイルの能力は圧倒的です。私としては嬉しい限りですが、家から出すのははっきり言って大きな損失かと」


「私も正直そう思うさ。特にお前という神童を失った後だけにね。これ以上の有望な人材流出は避けたいのが本音だよ。でもね、レオン、お前が出奔してからこの五年間、カイルが非常につまらなそうなのだよ。我がアイディング侯爵家のルーティーンの仕事にカイルの能力は釣り合っていないんだろうね。もっと刺激的な、レオンとジョブの解明に取り組んでいた頃の様な仕事に就きたいんじゃないかな」


兄上は俺を高く買いすぎだ。神童と言ったって、所詮ちょっと賢い子供。俺が居なくなっても大して変わらない。その点カイルの能力は目に見えて凄い。家に申し訳ない気持ちが大きい。


だが、兄上の言う通り、確かに通常業務にカイルは宝の持ち腐れだ。

本人がつまらないのも本当の所だろう。

まだ俺が居た頃も、カイルの父の執事長からの仕事はつまらなそうに処理していたっけ。



「なので、レオン。カイルは一旦レオンの所に預けるよ。いずれアイディング家に戻って来るという約束で頼むよ。これはカイルも了承している。あと、休みが取れたら家に顔を出してくれないか?父上と母上にも顔を見せてやってくれ」


俺としては、願ったり叶ったりだ。

生き字引にして、論理的な相棒カイルとのコンビ復活には明るい未来しかない。


その後、マティアスさんも交えて話を進め、家では俺の従者として、学園では俺の助手として配置する事で話を詰めた。


お忍び行の兄上は、話がまとまると風の様に去って行った。

もう少しゆっくり話もしたかったが、上級官僚ジョブを持ち、王宮に詰めている身の忙しさを思い知った。

出来る男はつらいのです。





ヘリング家の対応力は大したもので、即座にカイルの待遇と生活が整えられ、次の日からは俺と一緒に学園に出勤した。

ミーシャさんにも事前に連絡済みだったらしく、特に混乱も無く講義の準備を進めて下さいという事になった。



一応これまでの経緯と、俺の不思議な体験をカイルと情報共有した。

カイル曰く「レオン様の現象は、周辺的な痕跡情報も含めて過去に収集したデータには全く存在しない」だそうで、彼が知的興奮状態になったとき特有の髪をやたらかき上げる動作が頻発して面白かった。


カイルは普段感情を表に出さないクールガイなので、余計微笑ましいんだよな。


「レオン様、もっとデータを集めるために、カウンセリングを増やしましょう」


話が早くて助かるよ。カイルの言う通りだ。これから取組む講義の内容次第で、俺と俺のカウンセリングの存在価値が上がる事を考えれば、講義内容を詰めないとな。


そう結論付け、二人で講義内容の精査と注目アップのために一回目の

講義に出す目玉情報の用意を始める。


あ、そうそう。

俺はレオ・アイゼルだからねと言うと、レオ様ですねとカイル。

またレオ様呼びが増えてしまった。


アイゼルという苗字の件は、兄上にも伝えてあるしね。


ちなみに、昼食が四人になったのは当然の流れ。

クールイケメンのカイルが加わった事で、また男性からの目線の厳しさが上がった気がするけど、無視しておこう。





いよいよ明日から講義を始める事になった。

ジョブについての講義は範囲と内容が膨大なため、一般教養的な概論講義になるのが普通だ。中等部も高等部も学年毎に全クラス一括でにホールに集合しての講義になる。各学年とも百人は超えるので、講義というより講演に近いな。

質疑応答も行われるが、詳しくは個別カウンセリングをというルートになる。

準備は万端だ。


中等部の一年生が集まるホールに入ると、既に席はほぼ満席だ。

演台に立ち、挨拶してから講義を始める。

カイルには資料を壁に投影する魔道具操作をお願いしている。


「皆さん、初めまして。ジョブ概論の講義を担当します、レオ・アイゼルです。宜しくお願いします。今まで皆さんはジョブについて断片的には理解を深めていると思いますが、私の研究ではその断片を繋ぎ合わせ、新たな説を提唱しています。実は広く知られているジョブの取得条件や遺伝性、分類グループには隠された共通点があり、膨大なデータからその関連性を見つける事を主な研究成果としています」


最初が肝心だ。


「具体的には、全く関連性が無いと思われているジョブに共通点があったり、新たな覚醒条件を発見したりという事になります。」


「ちなみに、既に私にカウンセリングを受けて頂いた四名のうち、二名は既に覚醒に成功しており、残りの二名も覚醒に向けて条件取得中です」


そう、スコット君はまだ覚醒していないが、その後に見た二人は既に覚醒に成功し、最後の一名もやっと青い霞に辿り着いて現在覚醒に向けて奮闘している様だ。


その二名の内容が、今までの常識ではなかなかたどり着けないジョブであったため、恰好の題材となった。



説明が進むうちに、みんなの目つきが変わり、前のめりになって来るのがひしひしを伝わって来る。

やっぱり実例のケース発表はこの熱気がいいよね。


そんな事を思いながら、講義を終えて質疑応答に入ると、ビックリするくらいの手が上がった。うーんこれはここで捌くのは無理だな。


どうカウンセリングに誘導しようか一瞬迷ったが、講義の終わり頃にホールに戻って来たミーシャさんが、心得た感じで仕切ってくれる。

「質疑が多数ですので、後ほど総務で一括対応致します。アイゼル先生グループでのカウンセリングも可能ですか?」


「大丈夫ですよ。ただしジョブに関してはご家族の情報開示などセンシティブな部分をお聞きする事もありますので、グループか個人かは各自で判断して下さい」


という訳で、以下の3パターンに分けて総務に対応してもらう事になった。

パターン1:単純に質問。総務で質問票に記入してもらい、それに回答

パターン2:グループにてカウンセリング予約・対応

パターン3:個人にてカウンセリング予約・対応


これで大分整理されるはずだ。

ふとカイルを見ると、せわしなく髪をかき上げていた。よしよし。




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