9
あと少しです。どうぞ最後までよろしくお願いします。
ふとその笑い声の主をたどって見てみると、それは見覚えのある顔だった。
そうだ!あの男だ。探していたあの男が今ここにいるではないか!
涼子は俊介の肘を揺すり、指を差して言った。
「見て、見て、あれ!あの人だわ。ドトールで隣の席いた怪しい男」
「えっ!何?あのカンニングの竹山みたいなやつ?」
「うん、うん」
俊介は何か意味ありげな顔して、ニタニタしながら、涼子を見た。
「あの人、知っているよ。あれはこのマンションの管理会社の担当だよ」
「えー!そうなの?」
「なるほど、言われてみれば、お笑い芸人みたいな顔だな」と納得したように言った。
涼子は、管理会社の担当をまともに見たことがなかったのだった。
俊介はボーとしている涼子に「まぁまぁ」と笑みを浮かべながら、手を取りエレベーターのボタンを押した。
そして、エレベーターに乗ると「漏洩問題、これにて一件落着!」と叫んだ。
玄関のドアを開けると、涼子はソファに雪崩れ込むように座り込んだ。気が抜けたように何も考えつかなかった。
すっかり安心仕切っている俊介に向かって涼子が口を開いた。
「でも、竹山さん情報を悪用するような悪い人じゃないって、言い切れるかしら?」
「それはどんな人間も100%善人とは言い切れないけど、竹山に限っては、少なくともスパイの可能性はないから、俺の心配する件に関して言えば、白だと思う」
涼子は眉を潜めながら、心の中で「私の問題は解決していないじゃないか」と思った。
「それに竹山は、ある程度、住人の個人情報は入手しているはずだし、社内でもそれについてのコンプライアンスがあるわけだから、守らなければ罰せられる」
「網タイツフェチかどうかは、分からないけどね?性癖まで、わかるように、首からぶら下げて歩いている奴はいないし」
俊介はエヘヘという顔をして、いつものエロ調子に涼子を見た。
「もう!やめてよ。それが今、一番心配してることなんだから」と俊介を両手で押した。
俊介は、いたずらっ子のような顔をして笑った。
続く
ありがとうございました。