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最後まで、懲りずによろしくお願いします。

外は花粉の季節真っ只中で埃っぽく、花粉症防御のためにマスクやゴーグルを装備した人が目に入る。この中に怪しい人物が潜んでいるのではないか?と、二人とも辺りを注意深く見ていた。何の関わりもない通りすがりの人達でさえ、顔がはっきり見えないと、狙われているのはないかと疑いたくなる。

今日はこの周辺のゴミ回収日で、市指定の黄色いゴミ袋が、収集場所に山積みになって置かれていた。

ゴミ袋の山には編みが被せられているが、少しでも隙間があるといたずらなカラス達がつつき回しては袋を破り、ゴミを道路に散乱させてしまう。都会では問題になっている光景である。まだ豊な山が残っているこの地域でもカラス達は、山の実りだけでは飽きたらずに、やってくる。

涼子がそれを見て思い出したように「あっ、しまった。ゴミ出しするのをすっかり忘れた」と残念そうに項垂れた。

俊介も人の様子ばかりを気にして歩いていたせいか、注意散漫になっていた。歩道に突き出て置いてある木製のゴミ箱の角がスネに当たってしまった。

「痛てー、何だよ!この邪魔な木のゴミ箱は」スネをさすりながら言った。

二人のテンションは、益々下がり気味になっていた。

「このゴミ箱、前から邪魔だと思っていたけど、今日ぐらい憎らしいと思ったことはないよ。今度こそ市役所に訴えて、退かさせてやる」俊介はいつもより、イライラしているように見えた。涼子はそれを見て、ひたすら落ち込むばかりだった。

あぁ、参ったなぁ、俊介まですっかりいつもと雰囲気が違ってきちゃった。私が情報を軽く見過ぎて軽率な行動をしたから、俊介にまで迷惑をかけちゃった。

これから個人情報は職場でも家でも、もっと慎重に扱わなければダメだわ。そのためにコンプライアンスがあるわけなんだから。

涼子は深い後悔というため息を付かずにはいられなかった。


駅に着くと、俊介と涼子はお互い「じゃあね」と、それぞれ逆方向のホームで電車を待った。とりあえず対策は帰宅後にまた話そうということで、二人とも早めに帰宅をすることした。

俊介は電車に乗ると頭がひょっこり飛び出る程、背が高い。普段はこの背の高いのをいいことに、無防備な女性が見せるチラリズムを楽しんだりもできるのだが、今日はそんな谷間探しどころではなかった。スパイ小説の主人公にでもなったつもりで、いつもの目とは違う、自称鋭い目で怪しい奴がいなかどうか、周りを怯むことなく確認していた。

いつもは気にも留めたことがなかったが、確かに見かけたことのある奴が数人この電車に乗り合わせているように見えた。

この中に情報収集しているやつがいるのだろうか?疑う気になれば、そう見えてくる感じもするが、その辺の一般人だと思えば、何の関わり合いも、危険性もないように見える。

Winnyなどの共有ソフトを使った情報収集も、巨大なファイアーウォールにかかっては太刀打ちできそうにもない。いったいどこから侵入してくるというのだ。

危険があるとしたら自分のブレーンの中に入っている情報と技術ぐらいだ。ドラエモンの漫画のように、頭を開けて中身を引き出すこともできない。

俊介はそんな風に思い巡らせながら、通勤電車の中にいた。


続く

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