おまけ(餃子作りのやりとり)
夫婦で餃子作りをしている場面です。
元々は2章に入れていましたが、物語の進行上、特に必要ないと思ったので削除しました。
俊介が餃子に入れるニラと切ってくれると言うので、大丈夫かな?と思ったがお願いして見ることにした。俊介は一人暮らしの経験がないので、料理や炊事に関しては、はっきり言って全くセンスのないやつだった。この間もジャガイモの皮をピューラーで剥かせてみたが、芽を刳り抜かずに皮を厚く剥いてしまうので、ジャガイモは原型を留めることがないくらい小さくなっていた。食べるところより皮の方が多く出たくらいだった。
洗濯物を干してもらっても、皺を伸ばさずピンにつまんで干してしまうので仕上がりがひどく後が大変になる。シャツも靴下も切り干し大根のように小さくショボショボになって乾いてくるので、アイロンが必要になってしまう。俊介には思わず、家政婦くびと言ってやりたいくらいだった。お手伝いがしたいと言うときにはお願いするようにしている。幼児の方がましなくらいだが、何故か最近やる気を出し、手伝いをしたがってくる。俊介の仕事は期間的に忙しい時とそうでもないときががあり、今はスケジュールに余裕があるので、そうしたがっているのかもしれない。
「俊介、餃子に入れるニラはなるべく小さく細かく切るようにしてね?自分で餃子を食べたときのニラの大きさを思い出して、そのくらいの大きさにしてよ?」涼子は材料を用意しながら俊介に言った。
「ほぉ、了解!細かい方がいいのか」まな板の上に置いたニラをそういいながら、真ん中からざっくり切った。そして今度は斜めにザクッ、ザックと切り出した。俊介は玉葱のようにみじん切りにすればよいと思っているらしく、包丁を縦、横、斜めといろいろな角度から切っている様子だった。
たちまち、まな板がニラの緑に染まって、歪に切れたニラがまな板から床や調理台に飛び散っていった。
涼子はそれらを拾いながら「斜めに切らなくたって、細かくなるでしょう?同じ方向に細くきゅうりの輪切りみたいに切ればいいんだから」
「細かく切れっていうことだから、微塵ていろんな形があるから、こう切ればいいんだと思ってやったんだよ」
涼子はクスッと笑って、相変わらずやってくれるなぁと俊介を見ていた。そろそろフードプレセッサーでも買ったほうが、料理の下拵えと俊介のためにいいかな?と、思った。
挽肉と俊介の切ったニラと調味料を混ぜ合わせ、餃子の種を作る。今度は二人で餃子皮に種を入れ包み始めた。
涼子は俊介に何度も説明して、お手本を見せるが、俊介の指はぶっとく、餃子の皮にうまくギャザーを寄せられない様子で、悪戦苦闘しながら作業していた。
「なんだこれ、中からあんこが出てきちゃったよ」子供が作ったものよりも不格好に見える餃子を涼子の目の前に持ってきて見せた。俊介から見ると普通サイズの餃子も一口サイズのように小さく見える。
「やだそれ、餃子の形になってないじゃない?どう見たってラビオリとかパイみたいになってるんですけど」涼子は呆れた顔をしながら、自分が作った餃子を見せた。
「餃子は両面ひっくり返して焼かないのだから、フライパンの上にきっちり乗るような形に作ってくれないと、パリパリの皮の触感が味わえず美味しくできないわよ」
「はーい、先生!」俊介が幼稚園の子供にでも戻ったように返事をした。
涼子はこの白クマのように図体ばかり大きく、動作の鈍い不器用な旦那を飼い慣らすには、まだまだ時間がかかりそうだと思った。
白い大きな皿に歪で不格好な餃子が並んでいたが、食べてみると味の方は、それほど悪くなかった。
最後までおつき合い頂き、感謝致します。
ありがとうございました。
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