白と黒
高校からこの廃屋で暮らしている。
気がついたら悪い奴らとつるんでいた。
親はいたかもしれないけど、高校の時にはすでにいなかった。
昼間なのに薄暗い、埃が舞い上がる住み家。
行き場のない人間が居座るような家。
「アキラはさ、白」
「えぇ~、白?黒だろ?」
壁に体を預けて立っているアキラを見る。
黒髪、黒いTシャツ、ダークブルーのジーンズ。
確かに黒いのに、俺には白いイメージだった。
「なに?なんの話?」
気だるげに近づいてきたアキラが壁の代わりに俺に体を預けてきた。
「イメージカラーの話だよ」
「へぇ………」
「お前のイメージカラーは白だって、こいつがさ言うんだよ」
アキラは俺の顔を見ながら「なにそれ」とつまらなそうに言った。
「なぁ、アキラはこいつ何色だと思う?」
「ん~、ピンク。生々しいピンクちゃん」
軽く笑って俺の頭を叩いてアキラは去って行った。
「お前がピンク?お前こそ白って感じじゃねぇ?」
「はぁ?何で白なわけ?」
「だってお前ってなんつうの無害?色がない?って感じなんだもん」
色がないか。
色っていうか自分がないんだよ。
誰が側にいても、誰でもいい。
何が好きとかもない。
ただ漫然とこの世を生きてる。
銃声が聞こえる。
乾いた破裂音が止むことなく続く。
「なぁ見に行こうぜ」
誰かがいつだって命を消される町。
抗争も珍しくない。
腕を引かれて探したのはアキラの姿。
何故だか自分が打たれるんじゃないか、そんな予感がした。
悪い予感がする時はアキラの腕を掴む。
アキラの側にいたら大丈夫な気がするから。
「お前ってさ、アキラ好きな?」
「別にフツーだけど?」
「そうか?」
アキラを特別好きな感情はない。
ただ、こういう時は勘が当たるだけ。
「こっち、頭下げてろ」
先ほどまで腕を引いていたアイツは………撃たれてマネキンみたいに地面に転がっている。
黒い塊を横目で見てる。
何も感じない。
涙どころか何の感情も沸き上がらない。
走ったせいで整わない息を手の平を押し当てて殺す。
アキラが抱えるように走って頭を押さえつけるから上の様子は分からない。
音がいつ止んだのかも。
アキラの鋭い瞳がずっと彼方を睨み付けていた。
あれから何年経ったのか1人2人と人が消え、この廃屋には自分だけになった。
誰かが居座ることもなくなった。
周りに誰かがいた時には何も考えてなかったのに、1人だとずっと考えている。
何で生きてるんだろうか。
なぜ生きなきゃいけないんだろうか。
いつもたむろしていた場所にある棚を漁る。
思い出したから。
そこに適当に置かれた銃の存在を。
だけど玉がない。
銃弾はどこだ。
どこなんだよ!
何故かイライラして棚の物を手当たり次第投げ捨てた。
棚の奥にガラスの瓶があった。
白い小さな玉がぎっしり詰まっている。
BB弾だ。
エアガンじゃ死ねないじゃないか………。
そう思って違和感に気づく。
このBB弾、俺が貰ったやつだ。
いつ?
誰に?
母親だ。
「―――――が、買ってくれたわよ」
真っ赤な口紅が歪む。
血の繋がらない息子に付き合ってた男が買ってくれたのに嬉しそうな顔をしやしない女。
あれは誰だ?
真っ白な男だった。
手を伸ばした先にいた男。
割れたステンドグラスに大きな羽が影を下ろす。
「アキラ………」
黒い影だった翼を持つ男は日の光を浴びて輝くばかりの真っ白な翼を羽ばたかせた。
再び暗がりに立つ男に手を伸ばす。
「アキラ、お前だったんだな」
BB弾をくれたのは………。
糞みたいな母親がいなくなった。
悪い奴らは死ぬか消えた。
俺1人残され、俺も消えるはずだった。
それなのに俺の前にはお前が来た。
手を伸ばす。
俺は知ってる。
アキラは俺が手を伸ばすと哀しそうに笑うんだ。
そして俺の手を必ず取るんだ。
「アキラ」
俺は手を伸ばした。
暗がりからアキラが歩いてくる。
泣きそうな顔をして、俺の手を取った。




