サプライズ(病み)
「や、やめろぉぉおおおおおおおおっ!」
「あっははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ‼︎」
教室に着いた瞬間、何故か僕はすぐに屈強な男達によって拘束された。
……何だか知らないが、この時点でめちゃくちゃ嫌な予感がする。
すると、目の前に小麦色の肌に爽やかな笑みを浮かべた身長180センチオーバーの大男がシュークリームを持って現れた。
コイツこそが、今朝まではこの学校で一番仲が良いと思っていた(元)親友の烏野大河だ。
色々と察した僕は叫びながら必死に逃げようとするが、筋肉の鎧に包まれた野球部員達によってがっちりと拘束されているので、動くことすらままならない。
思わず助けを求めて周りを見ると、興味津々にこちらを見ているクラスメート達、満面の笑みを浮かべている大河、そして誰よりも先に笑い出し、今も腹を抱えて狂ったように笑い続けている謳歌がいる事が分かった。
あっ、詰んだ。
「喰らえ、新輝ぃぃいいいいいいいいっ!」
「ちょっ、待っ⁉︎」
ぐちゃあ……っ。
喋っている途中で、顔面にこれ以上無いくらい不快な感触が襲いかかって来る。
そして少し遅れて、教室からは謳歌に負けないくらいの大爆笑が聞こえてきた。
「大河―……」
「誕生日おめでとう、新輝」
大河は相変わらず、爽やかな笑顔で僕にそんな事を言ってくる。
……このまま、今すぐ職員室まで走って行って、学級問題に発展させてやろうかな?
この惨状を見せたら、少なくとも全校集会くらいは開かせられる自信があるぞ。
「新輝―っ!こっち向いてーっ!」
パシャパシャッ!
僕がどうやって、そこから大河を退学まで持っていこうか真剣にシュミレーションしていると、謳歌がはしゃぎながら芸能人の記者会見ばりに僕の写真を撮り始める。
あの眩しい笑顔が恨めしい……。
「おっ、折角だし、みんなで集まって写真撮ろうぜ」
大河がそう言うと、今回の首謀者達が悪気もなく僕の周りに集まってくる。
……え、何これ?
僕の目がおかしくなければ、クラスメートほぼ全員が集まっているんだが。
まさかとは思うが、コイツら全員で僕の誕生日を祝おうとした結果がコレなのか?
僕は改めて、このクラスに自分の味方が一人もいない事を確認するとため息を吐く。
こんな事になるくらいなら、誕生日なんて祝われない方がマシだったかも知れない。
僕はその後も何人かと写真を撮った後、最後に床に残った惨状を確認する。
「おい、これどうするんだよ」
「うん?ああ、それは大丈夫だぞ。沙希―」
「はいは〜い」
大河に呼ばれてこちらに来たのは、クラスメートで水精霊という種族の涼宮沙希だ。
「片付けは任せて〜。ほいっ」
沙希は水精霊の異能で、手元にサッカーボールくらいの水玉を出して浮遊させると、そのまま僕の顔を包み込んだ。
「がぼぼっ⁉︎」
「あっはっは!変な顔ーっ!」
謳歌が再びはしゃぎながら写真を撮り始めるが、僕はそれどころではない。
必死にもがきながら沙希を見ると、沙希はクスクスと笑いながら慣れた手つきで僕の顔に付いたクリームを洗い流し、その後に汚れた床も軽く洗い流して綺麗にすると、残った水は教室の窓からポイッと捨ててしまった。
僕はびしょ濡れになってしまった顔をぬぐい、急に異能を使った沙希に文句を言おうとする。
「うしっ、今乾かしてやるからな」
「ぶへらっ!」
しかし、そのタイミングで天狗である大河が風を操り、僕の顔や髪についた水を全て吹き飛ばしてしまったせいで、全く意図しないタイミングで大量の空気が気管に入ってしまい、僕は盛大に咽せる事になる。
……そして、その一連の流れをバッチリと見ていた謳歌は、最早声が出ないほど笑い転げていた。
「おっ、悪いな。新輝」
「いや、全然許さないけど?」
「やべっ、先生来るわ」
コイツこれからどうしてやろうかと思いながら大河を見ていると、ちょうどそのタイミングで予鈴が鳴る。
すると、大河はさっさと自分の席に戻ってしまった。
おい、マジかよ⁉︎
アイツやりたい事だけやったら、さっさと逃げやがったぞ!
今すぐにでも大河の所に行って文句を言ってやりたいが、このままでは担任の先生が教室にやって来てしまう。
僕は激しい葛藤の末、何一つ納得出来ないまま仕方なく自分の席に急いで向かうのだった。