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三度目の人生を満喫したい  作者: 八尋
第1章 転生
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3.日常の崩壊

 神々しい光と共に現れた人物は、アニメでよく見る白髪白髭の【神様】という感じのお爺さんだった。


 そんなお爺さんが優しさの滲め出る顔を綻ばせながら、


 「おやおや。お主があの婆さんが認めた少年か。婆さんから話は聞いておる。【願い石】を受け取ったそうじゃの。それでここへ来たわけか」


 と、何故か一人で解決している。


 しかし、一体ここはどこなのだろうか。


 そしてこのお爺さんは誰で、何の話をしているのだろうか。


 僕はこのお爺さんが言った「婆さん」、【願い石】という単語から必死に心当たりがないかを探る。


 お爺さんがこちらを凝視してくるが、気にせずに今の状況について考える。


 すると、自分の内部を全て見透かされたような悪寒が走り、体が震えた。


 それと同時にお爺さんが口を開いた。


 「何じゃ?婆さんから何も聞いておらんのか。あの婆さん……」


 お爺さんは頭に手を当てながら、手のかかる友人に呆れ果てたような、親友たちが僕がお手伝いを請け負う時のような態度をとる。


 「嗚呼、すまんの。あの婆さんから何も聞いていないとすると、この状況も気味が悪くて仕方ないじゃろう。ここは本来お主ら人間の来る場所ではない。まあ、ある意味夢の世界と言っても過言ではない」


 ある意味、とはどういうことだ。それにお主ら人間ということは、このお爺さんは人間ではない?


 「うむ。その疑問は尤もじゃ。では改めて、ゴホン、儂はゼーウス。所謂神と言うやつじゃ。そしてここは、儂ら神々が住まう世界、【神界】とでも言っておこうかの」


 そうゼーウスと名乗る自称神は芝居がかった態度で説明を開始する。


 「この空間は儂の領域でな。その応接間みたいなものじゃ。さっき作った」


 さっき作ったって。この広すぎる空間を?終わりが見えない程に広がっているのに……


 「まあこの程度の事なら造作もない。名のついていないような神ですら可能な芸当じゃ。それと婆さんと言うのは、お主が荷物運びを手伝い、【願い石】を与えた婆さんのことじゃ。【願い石】はお主が、ホレ、今握っとるやつじゃ」


 嗚呼、あの山奥に住んでいた優しそうなお婆さんが。


 でも、そのお婆さんとこの神様?と何の関係があるんだろう。


 僕がそう考えている間に自称神様は、頭を抱えながら「あの婆さん、しっかり説明をしておけと言っておるのに。前から何も学んどらんの」と呟いている。


 というか、ここに来てから僕は一度も喋っていない。


 なのにこの自称神様は、僕が疑問に思ったことに次々と答えている。


 これはアレかな?ライトノベルでよく見かけるやつだな。


 僕は次に【願い石】と呼ばれた石を見た。


 神様の仰っていた通り、僕の手には石が握られていた。


 色は木蝋のような黄土色っぽいく変わってしまっているが、形状はあのお婆さんから貰ったものとそっくりだ。


 でも何でこの石は色が変わったんだろう。僕がここにいるのと何か関係が?


 そんなことを思っていると、また神様がその疑問に答えてくれた。


 「そこに気づくとは鋭いの。お主が婆さんから受け取ったその【願い石】はのぉ、一度だけ願いを叶えることができる道具なのじゃ。しかし、受け取った後、初めて寝た時にその効果が発動するという欠点があってのぉ」


 それが本当だとしても、僕が何かを願った覚えはないんだけどなぁ。


 「願わなくとも、寝ている時や、寝る前に考えていたことが願いとなる。お主の場合は、ライトノベル?とかいう本の内容が願いとなったようじゃな」


 嗚呼、成程。寝る前に読んでいたライトノベルが原因か。


 あれの内容は確か転生チート系の話だったはず。


 普通に楽しんで読んでいただけだったのに、まさかこんなことになるなんて。


 「しかしお主、転生は初めてではないようじゃ。婆さんもお主には何やらつらい過去があるとか言っておったし。だがお主を見るのは初めてじゃ。【怨念転生】というやつじゃろうか。」


 また新しい単語が出てきた。怨念?いったい何のことだろう。


 「どれ、少し待っておれ。すまんが、少しの間我慢してくれ……」


 そう言うと、神様は僕の頭の近くに手を持ってきて、額に掌を向ける。


 すると、先程の悪寒よりさらに酷い寒気が全身を襲う。


 「成程。辛い経験をしていたんじゃな。お主のおかげで【怨念転生】について少しわかったかもしれん。これは研究班に報告じゃな」


 そう言うと神様は目を瞑り、何かを念じるような動きを見せる。


 邪魔をしてはいけないような気がして、神様が目を開けるまで待って質問をする。


 「ここから僕のいた場所へ戻ることはできるんですか?」


 ここに来て初めて僕が発した言葉だった。


 今までは、神様が僕の思っていることにすぐに答えてくれていたから、何も言葉にする必要はなかった。


 僕の質問に神様は困った様子を見せる。


 嫌な予感がする。もしかして……


 長い白髭を触りながら考え込み、そして答えた。


 「嗚呼、お主には悪いがここに来た者が元の場所に戻ることはできん。というか、ここに来る者自体が珍しいのでな。その方法が不明なんじゃよ」


 やっぱりかぁー。異世界転生や転移、召喚が題材のライトノベルって大抵の場合何故か帰る方法ないんだよなぁー。


 いざ自分がこの立場になると理不尽だな。


 でも泣き言を言っても仕方ないよな。


 神様がないって言ってるんだし、もし神様が嘘を言っていても僕にはどうしようもないし。


 本当にこのお爺さんが神様なのかはわからないけど、確かめる方法もないし。


 今回の人生は友達もできて、父さんや母さんも今はあまり会えないけど、昔は休日に遊んでくれていたし、結構楽しかったんだけどなぁ。


 僕がいなくなったら、あいつ等はそれなりに心配してくれそうだけど……父さん、母さんは心配してくれるかなぁ。


 あいつ等とももっと遊びたかったし……


 あの作品の続きも見たかったし……


 「ま、まぁ、あの婆さんが説明しなかったことも悪いし、お主が願っている以上に転生する時にスキルを与えよう」


 僕が少し落ち込んでいるのを見て、お爺さんは少し焦ったようにそう言ってくれた。


 まぁ、このお爺さんが優しい人?なのには違いなさそうだ。


 「わかりました。できれば、あの時と同じような目に合わないようにお願いしたいです」


 お爺さんのさっきの反応からして、僕の過去を覗いたりしたんだろう。


 なら、スキルと言うのも魅力的だけど、あんな状況にならないような家に生まれたい。


 「そちらも対応しよう。少しは落ち着いたようじゃの。では、お主のこれからについて色々と説明をするとしよう」

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